ドル円見通し 5月3日高値を超えたが一段高へ進み切れず仕切り直し中(21/5/14)

買い材料出尽くしによる急落商状には陥らずに109円前後にあった10日以降の抵抗を突破しての一段高状態は維持している。

ドル円見通し 5月3日高値を超えたが一段高へ進み切れず仕切り直し中(21/5/14)

ドル円見通し 5月3日高値を超えたが一段高へ進み切れず仕切り直し中

〇ドル円、5/13午前109.78まで上昇その後は伸びずに5/14未明には109.39円まで下落
〇5/3高値109.69をわずかに上回った後さらなる高値追及とはならなかったものの、一段高状態は維持
〇4月米PPIは上昇、市場はテーパリング議論を速める可能性を示唆するものと受け止める
〇NYダウは前日比433.79ドル高、ナスダックは93.31ポイント高、米長期債利回りは連騰一服
〇高値更新へ進めないうちは一段安余地ありとし、109.25割れからは109.00前後への下落を想定する
〇109.78超えからは一段高入りとみて、110円超えを目指すとみる

【概況】

ドル円は5月12日夜の米消費者物価上昇率発表から急伸、13日午前高値で109.78円まで上昇、5月3日夕高値109.69円をわずかに上回ったが、その後は伸びずに109.50円を割り込むところは買われて持ち合いの様相となって夜の米経済指標発表へ向かった。
5月13日夜に発表された週間失業保険申請件数が予想を下回る改善となる一方、米生産者物価(PPI)は前月比では3月から鈍化したものの前年同月比では予想を上回る上昇率となったが、12日夜の米消費者物価の上ブレに大きく反応した後だけに新たなインパクトは無しとして米長期債利回りが低下に転じてNYダウが大幅反発したことでドル高感が弛み、ドル円は14日未明には109.39円まで下落した。
5月3日高値をわずかに超えたものの高値更新から高値追及へ進むにはまだ推進力不足としてやや足踏みに入った印象だが、買い材料出尽くしによる急落商状には陥らずに109円前後にあった10日以降の抵抗を突破しての一段高状態は維持している。

【テーパリング議論の前倒し問題は続く、米長期債利回りは連騰一服】

米労働省が発表した週間新規失業保険申請件数は5月8日までの週間で前週比3万4000件減の47万3000件だった。市場予想の49万件を下回って昨年3月のコロナショック以降では最低の申請件数となった。失業保険受給者総数は5月1日までの週間で4万5000人減の365万5000人となり市場予想の365万人とほぼ一致した。5月7日の米雇用統計は予想を裏切る冴えない数字だったものの、景気と雇用の回復は着実に進んでいる印象だ。
米労働省が発表した4月の米生産者物価指数(PPI)は全体の前月比が0.6%上昇で3月の1.0%上昇からは伸びが鈍化したが市場予想の0.3%上昇を上回った。前年同月比は6.2%上昇となり3月の4.2%上昇から伸びが加速して市場予想の5.8%上昇を上回った。コア指数の前月比は0.7%上昇で3月と変わらず、前年同月比は4.1%上昇となり3月の3.1%上昇から伸びが加速して市場予想の3.8%を上回った。

雇用の改善と生産者物価上昇は強弱相殺となり、前夜の消費者物価に対して大きく反応したばかりだったために13日夜の統計に対する市場の反応は限定的だった。しかし、4月の米消費者物価コア指数の前年同月比が3.1%上昇だったのに対して4月の生産者物価コア指数は4.1%上昇で消費者物価を大きく上回っていることは、今後に消費者物価が生産者物価を追いかけることを踏まえれば5月のインフレ率についても上ブレが問題が続くということになるだろう。

米連銀はインフレ上昇については景気の急回復に伴う需給ギャップを反映したもので一時的なものにとどまるとして政策目標の2%を超えるインフレ率が長期的に続かないとみて量的緩和の継続姿勢を強調してテーパリング議論は時期尚早というスタンスを示してきたが、4月の物価上昇の上ブレはテーパリング議論を速める可能性を示唆するものと市場は受け止めている。
米連銀のウォラー理事は13日の講演で、「一時的な物価目標の上振れに過剰反応しない」「しばらくは金融緩和策を維持する見込みだ」「金融政策変更を検討する前に経済の実績を見る必要がある」「今は忍耐強くなる時」と述べて量的緩和縮小等は時期尚早との見方を示した。リッチモンド連銀のバーキン総裁も長期的なインフレ高進の可能性については否定的な発言をしている。一方で米セントルイス連銀のブラード総裁は「景気回復が勢い付き労働市場の需給が想定よりも引き締まっている可能性がある」「見通せる先のインフレ率は2%を超える公算が大きい」との認識を示して物価上昇の上ブレについての注意感を示した。

米10年債利回りは13日に一時1.707%へ上昇して4月6日以来の高水準となったが終盤落ち着いて前日比0.03%低下の1.67%で終わった。NYダウは前日比433.79ドル高、ナスダック総合指数は93.31ポイント高と上昇した。米10年債利回りは5月7日の米雇用統計がさえなかったところで一時1.50%を割り込んだが急激に回復して今週も連日の上昇となっていたがひとまず上昇一服となった。NYダウも大幅上昇で世界連鎖株安のブレーキを掛けた。この流れが週末の米国市場で継続できるかどうか重要となってくる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日夜と11日夜の両安値をダブル底として反騰入りしたが、13日午前高値で目先のピークを付けて調整期に入った印象だ。このため高値更新へ進めないうちは14日の日中から18日夜にかけての間への下落余地ありとするが、13日午前高値超えからは新たな上昇期入りとして18日から20日にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では5月13日夜への下落で遅行スパンが悪化しているが先行スパンを上回った状況は維持している。先行スパンを上回るうちは遅行スパン好転から上昇再開とみるが、先行スパンへ潜り込むところからは下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5月13日夜の下落で50ポイントを割り込んでいる。65ポイント超えへ戻せば上昇再開感が強まるとみるが、そこまで戻せないうちは30ポイント台への下落余地が残るとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.25円を下値支持線、5月13日午前高値109.78円を上値抵抗線とする。
(2)高値更新へ進めないうちは一段安余地ありとし、109.25円割れからは109.00円前後への下落を想定する。109円以下は反騰注意としてその後の109.25円超えからは上昇再開の可能性があるとみるが、109.25円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.78円超えからは5月3日高値とのダブルトップラインを破っての一段高入りとみて110円超えを目指すとみる。110.25円以上は反落注意とするが、109.78円を超えた後も109.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かうとみる。110円到達の場合は週明けの上値目途を110円台中盤(110.30円から110.70円)へ引き上げる。

【当面の主な予定】

5/14(金)
休場 トルコ、マレーシア、インド、インドネシア、パキスタン
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 9.5%、予想 9.4%)
21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 1.2%、予想 0.6%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 2.1%、予想 0.8%)
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 9.8%、予想 1.0%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 8.4%、予想 0.7%)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 1.4%、予想 1.0%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 74.4%、予想 75.0%)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.5%、予想 0.3%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報 (4月 88.3、予想 90.4)
26:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加


注:ポイント要約は編集部

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