過剰流動性相場の逆流に警戒
〇今週のドル円、週明け早々に108.84まで上昇後、週末にかけ107.48まで下落、107.90で越週
〇世界的コロナ感染拡大、米中対立激化懸念、バイデン世間のキャピタルゲイン増税等が重石
〇ユーロドル週明け1.1942まで下落後、週末にかけ一時1.2100まで上昇
〇米長期金利上昇、株価軟調に伴うリスク回避のドル買い、EUのワクチン大量確保の報道等がサポート
〇ドル円テクニカルの地合い弱く、ファンダメンタルズもドル円下落の材料増える
〇米長期金利、株式動向、日米金融政策イベント、米キャピタル増税詳細等注視
〇来週の予想レンジ(USDJPY):106.50ー109.00、(EURUSD):1.1950−1.2200
今週のレビュー(4/19−4/23)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初108.78で寄り付いた後、早々に週間高値108.84まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線に続伸を阻まれると、@新型コロナウイルスの感染急拡大(世界の週間新規感染者数が過去最多を記録)や、A米中対立激化懸念(日米首脳会談の共同声明で「台湾」について明記→中国政府は内政干渉として米国及び日本を強く批判)、B米早期テーパリング観測の後退に伴うドル売り圧力、C高水準に蓄積された円ショートのアンワインド、D市場参加者に注目されていた3/23安値108.40を下抜けたことに伴うストップSELL(ダウ理論に於ける中長期上昇トレンドの終了→投資心理悪化)、Eバイデン米大統領によるキャピタルゲイン課税の提案(所得が100万米ドルを超える富裕層に対するキャピタルゲイン課税を39.6%へ引き上げることを提案)、F上記Eを背景としたリスク回避ムードの再燃(株式市場の下落→リスク回避のドル買い・円買い)が重石となり、週末にかけて、約1ヶ月半ぶり安値となる107.48まで急落しました。
引けにかけて、小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間4/24午前5時30分現在)では、107.90近辺で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1984で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感が重石となり、週明け早々に週間安値1.1942まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、B米長期金利低下に伴うドル売り圧力や、CECB理事会を前にしたポジション調整(ECB理事会で金融緩和姿勢が幾分後退するとの思惑。フランス中銀ビルロワドガロー総裁が4/14に「PEPPを2022年3月までに終了させることができる」と発言したことが背景)、D心理的節目1.2000を突破したことに伴う短期筋のストップBUY、E欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、F欧米株の上昇を背景としたリスク選好のドル売り圧力(バイデン米大統領のキャピタルゲイン課税提案を受けて一時的に下げた株式市場が週末に持ち直したこと)、GEUが米ファイザー製ワクチンを最大18億回分(世界最大規模)確保したとのヘッドライン、Hドイツ議会による新型コロナ対策補正予算の可決(600億ユーロ)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.2100まで上昇しました。
引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間4/24午前5時30分現在)では、1.2096近辺で推移しております。尚、注目されたECB理事会では、I政策金利の据え置き(0.00%→0.00%)および、Jパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の現状維持(1.85兆EUR→1.85兆EUR)が決定された他、IラガルドECB総裁からも「PEPPの段階的な縮小議論は時期尚早」との発言が見られましたが、相場への影響(テーパリング観測後退→ユーロ売りでの反応)は一時的なものに留まりました。
来週の見通し(4/26−4/30)
<ドル円相場>
ドル円は3/31に記録した高値110.97をトップに反落に転じると、今週末にかけて一時107.48まで急落しました(3/4以来、約1ヶ月半ぶり安値圏)。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、一目均衡表三役好転の終了や、ダウ理論に於ける上昇トレンドの終焉(3/23安値108.40を下抜けたことで、本年1/6に記録した安値102.58を起点に始まった中長期ドル高円安トレンドが終了)など、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となりつつあります。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米早期テーパリング観測の後退を背景とした米長期金利の低下圧力や、A投資家ポジションの逆流リスク(年初より続いたドル独歩高の是正)、B新型コロナウイルスの感染再拡大リスク(本邦でも緊急事態宣言発令の見通し)、C過去最大規模に膨らむ米国の双子の赤字、D米政府によるキャピタルゲイン課税の思惑(株式相場をはじめリスクアセットに下押し圧力→リスク回避のクロス円売り→ドル円連れ安の波及経路)など、ドル円相場の下落を意識させる材料が増えつつあります。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、続落リスクが警戒されます。米長期金利や株式市場の動向、米経済指標の結果(4/27の米4月コンファレンスボード消費者信頼感指数、4/29の米第1四半期GDP速報値、4/30の米3月PCEデフレータなど)、日米金融政策イベント(4/26ー4/27の日銀金融施策決定会合、4/27ー4/28の米FOMC)、米債入札結果(米2年債入札、米5年債入札、米7年債入札)、バイデン米大統領によるキャピタルゲイン課税の詳細発表(日本時間4/29午前の議会演説)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(米長期金利低下に伴うドル売りと、過剰流動性相場逆流に伴うリスク回避の円買いが重石)。
尚、日銀金融政策決定会合では「経済・物価の情勢(展望レポート)」が公表されるタイミングとなりますが、サプライズは無いと考えられます(但し、今回新たに示される2023年度の物価見通しについては要注目)。また、FOMCについても、テーパリング議論は示されない可能性が高いことから、無風に終わると予想されます(テーパリング議論はドットチャートが示される6月FOMCや、8月ジャクソンホールに持ち越される公算大)。
来週の予想レンジ(USDJPY):106.50ー109.00
<ユーロドル相場>
ユーロドルは3/31に記録した安値1.1703をボトムに反発に転じると、週末にかけて、一時1.2099まで急伸しました(3/3以来、約1ヶ月半ぶり高値圏)。この間、一目均衡表転換線や基準線、200日移動平均線や90日移動平均線、心理的節目1.2000を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@米長期金利低下に伴うドル売り圧力や、AECBによる根強いテーパリング観測(ラガルド総裁はECB理事会後の記者会見でテーパリング議論は時期尚早と一蹴しましたが、今週はカナダ中銀がテーパリングを決定するなど、主要国によるテーパリング開始ラッシュが警戒される状況)、Bドイツに於ける欧州復興基金の承認手続き再開期待、C新型コロナワクチンの確保期待(ファイザー製ワクチンを世界最大規模購入→欧州経済の先行き不透明感の後退)、Dドイツ議会による新型コロナ対策補正予算の可決など、ユーロ買い・ドル売りを意識させる材料が増えつつあります。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、続伸リスクが警戒されます。欧米の長期金利や欧米株の動向、欧米経済指標の結果(4/26のドイツ4月ifo景況感指数、4/29のドイツ4月消費者物価指数、4/27ー4/28の米FOMCなど)、欧州当局者発言(4/28のポルトガル中銀センテノ総裁およびシュナーベルECB専務理事、4/29のオーストリア中銀ホルツマン総裁など)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(但し、米政府によるキャピタルゲイン課税を巡る思惑を背景に再度株式市場が崩れる場合は、ユーロドルが下落で反応する可能性もあり念のため警戒)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1950−1.2200
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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