来週の為替相場見通し:『イベント通過で来週は再び米長期金利が市場の焦点』(3/20朝)

ドル円は今週前半にかけて、約9ヵ月ぶり高値となる109.37まで上昇しました(その後一時108.61まで反落するも週末海外時間にかけて再び上昇)。

来週の為替相場見通し:『イベント通過で来週は再び米長期金利が市場の焦点』(3/20朝)

イベント通過で来週は再び米長期金利が市場の焦点

〇今週のドル円、米長期金利高止まり、中国指標好調、株価堅調で週明け109.37まで上昇
〇その後は、FOMC後のテーパリング期待後退、日銀ETF買い入れ下限撤廃の株安で108円台に反落
〇FOMCでのドットチャートは23年までゼロ金利維持方針示し、パウエル議長会見もハト派的
〇日銀はイールドカーブコントロールの許容変動幅拡大、ETF原則6兆円買い入れ目途文言撤廃
〇ユーロドルFOMC後1.1990まで上昇後、ECB総裁のハト派発言、欧州域の感染拡大で1.19割れ
〇ドル円テクニカル、ファンダメンタルズともドル買い示唆
〇ドル円上昇がメインシナリオ、来週の予想レンジ(USDJPY):107.75ー110.25

今週のレビュー(3/15−3/19)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.07で寄り付いた後、@米政府による追加経済対策期待(米景気回復期待といったポジティブな側面と、インフレ懸念及び財源確保のための国債増発懸念といったネガティブな側面あり)や、A上記@に伴う米長期金利の高止まり、B中国の主要経済指標(小売売上高や鉱工業生産)の力強い結果、C株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り)が支援材料となり、週明け海外時間に、昨年6/8以来、約9ヶ月ぶり高値となる109.37まで上昇しました。

しかし、米FOMCや日銀金融政策決定会合を前に、様子見ムードが強まると、D米経済指標の冴えない結果(米2月小売売上高や米2月鉱工業生産、米新規失業保険申請件数)や、E米早期テーパリング観測の後退(ドットチャートの中央値ベースで2023年末までの政策金利据え置きが示唆)、F日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れに係る原則年6兆円目途の表記の削除(下限撤廃→日経平均株価急落→リスク回避の円買い)が重石となり、週末にかけて、週間安値108.61まで反落しました。もっとも、売り一巡後は持ち直し、G米FRBによるSLR(補完的レバレッジ比率)特例措置の終了報道(一部では特例措置が延長されるとの期待があったが、予定通り3月末で終了→米長期金利上昇)も支援材料となる中、結局108.90近辺での越週となっております。

尚、今週発表された米FOMCでは、@政策金利の据え置き(全会一致)、A量的緩和の継続(全会一致)、B経済見通しの一部上方修正(2021年:4.2%→6.5%、2022年:3.2%→3.3%、2023年:2.4%→2.2%)、Cドットチャートにおける2023年までのゼロ金利継続方針(FOMC参加者18名中11名が2023年末までの政策金利・据え置きを予想)、DパウエルFRB議長によるハト派的な発言(インフレの一時的な上昇は利上げを正当化しない)が示されました。市場では上記CDがハト派的と捉えられ、「早期テーパリング観測後退→米長期金利低下」の経路で当初はドル円下落で反応しましたが、すぐに持ち直す展開となっております(FRBの意図に反して、市場は早期テーパリング観測を織り込む展開)。

また、日銀金融政策決定会合(点検)については、@政策金利の据え置き(賛成8、反対1)、Aイールドカーブコントロールの長期金利変動幅拡大(従来±0.20%→本件後±0.25%)、B上場投資信託(ETF)の原則6兆円の買い入れ目途の文言削除、C連続指値オペ制度の導入、D貸出促進付利制度の創設が示されました。市場では上記Bが材料視され、当初は日経平均株価急落→リスク回避の円買いの経路でドル円を押し下げましたが、反応は一時的なものに留まっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1952で寄り付いた後、@ドイツ3月ZEW景況感指数(結果76.6、予想74.0、前回71.2)の力強い結果や、A米FOMCでの早期テーパリング観測の後退(ドットチャートの中央値ベースで2023年末までの政策金利据え置き示唆。パウエルFRB議長も記者会見でテーパリングに関する議論は時期尚早と一蹴)、B上記Aを背景とした米長期金利低下→ドル売りの流れが支援材料となり、週後半にかけて、高値1.1990まで上昇しました。しかし、心理的節目1.2000をバックに伸び悩むと、C欧州圏における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念や、DラガルドECB総裁による「市場の状況に応じて柔軟に資産買い入れを実施する」との発言、E米長期金利の再上昇(ドル高再燃)、Fスパーン独保健相による「感染増加を受けて来週の制限緩和はできない可能性あり」との発言、G米FRBによるSLR(補完的レバレッジ比率)特例措置の終了報道が重石となり、週末にかけて、週間安値1.1874(3/10以来の安値圏)まで反落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、結局1.1905近辺での越週となっております。

来週の見通し(3/22−3/26)

<ドル円相場>
ドル円は今週前半にかけて、約9ヵ月ぶり高値となる109.37まで上昇しました(その後一時108.61まで反落するも週末海外時間にかけて再び上昇)。強い買いシグナルを示唆する三役好転も継続する中、テクニカル的に見て地合いは強いと判断できます(オシレータ系インジケータに過熱感が見られるものの、ポジション調整時の押しは極めて浅く、下値の堅さを再確認する形に)。ファンダメンタルズ的に見ても、@米長期金利高騰に伴うドル高圧力(FRB当局者の意図に反して市場でくすぶる根強いテーパリング観測。米格付け大手フィッチ・レーティングスも「FRBは今年後半にテーパリング方針を定め、来年早々より開始するだろう」と発表)や、A米FRBによるSLR(補完的レバレッジ比率)特例措置の終了決定、B米追加経済対策に伴う米経済の回復期待(+インフレ懸念)など、ドル円相場の上昇を意識させる材料が増えつつあります。

以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、上昇リスクが警戒されます。米長期金利や株式市場の動き、米経済指標の結果(3/22の米2月中古住宅販売件数、3/23の米2月新築住宅販売件数、3/24の米2月耐久財受注、3/25の米第4四半期GDP確定値、3/26の米PCEデフレータ)、米要人発言(パウエルFRB議長やクォールズFRB副議長をはじめ、来週は複数の当局者発言あり)、米国債入札結果(2年、5年、7年債入札)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(米長期金利上昇→ドル高の流れが継続。心理的節目110.00突破を試すシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(USDJPY):107.75ー110.25

注:ポイント要約は編集部

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週後半にかけて上値を伸ばし、一時1.1990まで上昇しました。しかし、心理的節目1.2000バックに続伸が阻まれると(戻り売りに押されると)、週末にかけて値を崩し、結局1.1900近辺まで反落する冴えない動きとなりました(安値1.1874)。1.2000トライを巡っては、直近2週間で計4度失敗しており(3/11高値1.1990、3/12高値1.1990、3/17高値1.1986、3/18高値1.1990)、上値の重さを強く印象付けるチャート形状となっております(強い売りシグナルを示唆する三役逆転も点灯中)。目先は市場参加者が注目する200日移動平均線(1.1853)を試すシナリオが想定されます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米長期金利高騰に伴うドル高圧力(FRB当局者の意図に反して市場でくすぶる根強いテーパリング観測)や、A欧州当局者による追加緩和観測(ECBは3/11の理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入ペースを4ー6月期に大きく加速させる方針を明記)、B欧州ファンダメンタルズの先行き不透明感(欧州圏での新型コロナ第3波懸念が拡大→ロックダウン再強化懸念)など、ユーロドル相場の下落を意識させる材料が増えつつあります。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます。米長期金利の動向や新型コロナウイルス第3波を巡るヘッドライン、ユーロ圏経済指標の結果(3/24に予定されているユーロ圏3月PMI速報値、3/25のユーロ圏3月消費者信頼感指数、3/26のドイツ3月Ifo景況指数に注目。新型コロナ第3波が警戒される中、欧州経済指標は下振れる恐れあり)、欧州当局者の要人発言(オランダ中銀クノット総裁、ドイツ連銀バイトマン総裁、シュナーベルECB専務理事、スペイン中銀デコス総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ラガルドECB総裁等)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(米長期金利の上昇と、欧州経済の下振れ懸念がユーロドルの重石)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1750−1.2000

イベント通過で来週は再び米長期金利が市場の焦点

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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