ドル円見通し 3月9日高値から戻り高値を切り下げる調整局面
〇ドル円、3/11午後に108.81まで戻したが3/10午後高値108.91に届かず、その後軟調な推移
〇3/9高値109.23から高値を切り下げる展開
〇為替市場ではリスク選好感が回復、ユーロ・ポンドや新興国通貨買いも復調している印象
〇米長期債利回り上昇一服、再上昇へ向かう際は為替市場全般が再びドル高に進む可能性も
〇ECB、政策金利据え置き決定、長期金利上昇を抑制する姿勢見せる
〇3/10午後高値108.91を上抜けないうちは、一段安余地ありとみる
〇3/10午後高値108.91超えからは上昇再開とみて、3/9午前高値109.23円試しとする
【概況】
ドル円は3月10日深夜に108.32円まで下落したところから11日午後に108.81円まで戻したが、10日午後高値108.91円には届かずその後は10日深夜安値割れには至っていないものの軟調な推移となっている。
2月23日安値104.91円を起点としてほぼ一本調子で上昇してきたが、その背景は米長期債利回り上昇によるドル買い圧力だったが、3月9日午前高値で109.23円を付けた後は米長期債利回り上昇が一服、ユーロドルが上昇に転じる中でドル円の上昇も一服感となり9日深夜に108.40円まで下落、10日深夜へ安値を更新した後も戻り高値が切り下がる展開となっている。
1月6日安値からの上昇も3月9日高値まで6.37円高となり、110円到達には時期尚早として利益確定売りが急がれる展開も加わって3月9日は上ヒゲのついた陰線となり、3月10日はローソク足の実体が薄いほぼ上ヒゲ陰線、11日も陽線ながらローソク足の実体の薄いほぼ上ヒゲ足にとどまり上値の重い状況にある。
【米長期債利回り上昇一服で主要通貨の買い戻し続く】
3月11日のNYダウは連日にわたって取引時間中の史上最高値を更新、S&P500指数も2月16日高値を超えて取引時間中の史上最高値更新となった。3月10日の米消費者物価コア指数の上昇率が市場予想を下回ったことで過度のインフレ進行懸念が後退したこと、3月5日からの米長期債利回りの低下、週間新規失業保険申請件数が予想を下回る改善となったこと、米議会下院が10日に可決した1兆9000億ドル規模の追加経済対策法案についてバイデン大統領は11日に署名して12日にも法案は成立する見通しとなったこと等が買い材料とされたが、米長期債利回りが1.5%割れから再び上昇したことに圧迫されて終盤は利益確定売りが急がれて上げ幅を削り、NYダウは前日比188.57ドル高(0.58%高)、ナスダック総合指数は前日比329.84 ポイント高(2.52%高)で終了した。
為替市場では主要通貨の買い戻しが続いている。ユーロドルは3月9日午前安値からの持ち直しを継続して11日も戻り高値を切り上げた。ポンド/ドルは3月5日夜安値から下げ渋りに入り9日からジリ高歩調に入ったが11日も高値を切り上げている。豪ドルや南アランド、メキシコペソなども連騰しており米国株式市場の堅調さでリスク選好感が回復して新興国通貨買いも復調している印象だ。
米10年債利回りは3月5日に1.62%へ上昇して2月25日の1.61%を超えてからは低下に転じ、3月11日夕には1.48%まで下げた。1.50%割れを解消するように1.54%へいったん戻した後、1.52%台で終了した。2月25日の急伸時も1.38%までいったん低下したものの1.40%前後で高止まりとなり、そこから3月5日へ一段高しているため、今回も1.50%前後を中心として高止まりとなる場合は前回同様に再上昇へ向かう可能性もあり、その際は為替市場全般が再びドル高へ舵を切る可能性もあると注意したい。
米労働省が発表した新規失業保険申請件数は3月6日までの週間で前週比4万2000件減少の71万2000件となり3週ぶりに改善して市場予想の72万5000件を下回った。失業保険受給者総数は2月27日までの週間で414万4000人となり前週から19万3000人減少して市場予想の422万人を下回った。
【ECBは長期金利上昇を抑制する姿勢】
欧州中央銀行(ECB)は3月11日の定例理事会で政策金利を現状維持としたが、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による国債などの資産購入ペースを4-6月期には大幅に加速させて上昇基調のユーロ圏長期金利を抑制する姿勢を示した。ラガルド総裁は声明発表後の会見で長期金利の上昇は「幅広い資金調達環境にリスクをもたらす」と警戒感を示した。ECBは昨年12月にコロナ対策の資産購入枠を1兆8500億ユーロに拡大、実施期間も2022年3月末まで延長している。今後も積極的な資産買い入れにより長期金利上昇を抑制する姿勢と思われる。
ECBによる最新の経済見通しでは、2021年通年のユーロ圏GDP予想を4.0%として12月時点の3.99%から若干上方修正したが、2022年は4.1%として12月時点の4.2%から下方修正した。消費者物価上昇率は2021年を1.5%としたが2022年は1.2%、2023年を1.4%として当面はECBの政策目標の2%弱には届かない見通しとした。
来週は3月16-17日に米FOMC、3月17-18日に英MPC(金融政策決定会合)、3月18-19日に日銀金融政策決定会合と続く。米連銀が現在の長期債利回り上昇については景気回復期待を反映したもので許容範囲との見方を示してきている一方、他の中銀は長期金利上昇が景気回復の足を引っ張りかねないとして抑制したい姿勢を見せている。そうした中銀感のスタンスの差が年初からのドル高感を強めてきた背景でもある。
今晩は米生産者物価上昇率の発表もある。生産者物価上昇が消費者物価上昇見通しを押し上げ、インフレ感が強まれば米長期債利回りもそれらを反映して再び上昇しかねないところにあると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月3日午前安値から5日目となる3月10日早朝安値でいったん底を付けて戻したものの底割れしたため、11日朝時点では10日午後の戻り高値をピークとして下落期に入った可能性があるとし、10日午後高値を上抜けないうちは13日朝から17日朝にかけての間への下落余地ありとした。11日午後の上昇でも10日午後高値を超えられずにその後も軟調推移のため、まだ安値試しを続けやすい状況にあるとみる。強気転換は10日午後高値超えからとし、その場合は3月9日午前高値を基準として12日の日中から16日午前にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では3月10日夜の下落で先行スパンから転落してからは転落状況が続いている。10日深夜安値からは下げ渋りでもあるため遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンを上抜き返せないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は10日午後高値を上抜くところからとし、その際は先行スパン突破も重なるので上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月11日夕刻への上昇時に60ポイントをいったん超えたが失速し、その後は40ポイント台から50ポイント強での推移にとどまっている。10日午後高値を超えてくれば上昇再開感も出てくるとみて70ポイントを目指す上昇を想定するが、10日午後高値を超えないうちは一段安余地ありとし40ポイント割れからは下げ足が早まる可能性があると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.00円を下値支持線、10日午後高値108.91円を上値抵抗線とする。
(2)10日午後高値を上抜けないうちは一段安余地ありとみる。108円前後は押し目買いされやすいとみるが、108円割れから続落に入る場合は107.75円前後へ下値目途を引き下げる。また108.40円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)10日午後高値超えからは上昇再開とみて3月9日午前高値109.23円試しとし、さらに超える場合は109円台中後半を目指す上昇期に入るとみる。また10日午後高値を超えた後も108.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/12(金)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 1.2%、予想 -4.9%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 0.2%、予想 -0.6%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -3.3%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 0.3%、予想 -0.8%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -143.15億ポンド、予想 -125.01億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -62.02億ポンド、予想 -45.63億ポンド)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.3%、予想 1.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -0.8%、予想 -2.1%)
22:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 1.3%、予想 0.5%)
22:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 1.7%、予想 2.7%)
22:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 1.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.0%、予想 2.6%)
24:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (2月 76.8、予想 78.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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