ドル円見通し 米長期債利回り高止まり、世界連鎖株安一服だがドル高基調は継続
〇ドル円、3/2早朝106.88まで高値を切り上げる、ドル高基調の継続で107円へ徐々に迫る展開
〇NYダウ・ナスダックともに上昇、世界連鎖株安一服だが為替市場でのリスク選好感さほど回復せず
〇通貨当局者の発言、主要中銀動向に市場の目が向く
〇106.50以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは、上昇余地ありとみる
〇106.50割れを弱気転換注意とし、106.30割れからは106円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は3月2日早朝に106.88円まで高値を切り上げた。2月17日高値106.21円から2月23日安値104.91円まで下げたところから持ち直しに入り、2月26日午前には106.42円へ上昇、いったん106円を割り込んだものの早々に切り返して先週末の2月26日深夜には106.69円まで高値を伸ばしていたが、週明けもドル高基調の継続で107円へ徐々に迫る展開となっている。
2月25日から26日にかけてNYダウが1,000ドルを超える急落となり米長期債利回りが一時1.6%を超える中で為替市場では急激なリスク回避的ドル買い戻しに動いてユーロやポンド、豪ドル、新興国通貨が一斉に急落してドル高感が強まった。ドル円も全般的なドル高と同調して1月6日以降の高値を更新した。週明けはNYダウが大幅反騰して世界連鎖株安に歯止めがかかったが為替市場でのリスク選好感はさほど回復せずにドル高基調が継続している。
【NYダウ反騰するもユーロドルは安値を更新、主要中銀動向に市場の目が向く】
3月1日は米長期債利回りの上昇が落ち着き米経済指標が強かったことからNYダウが前日比603.14ドル高と反騰しした。ナスダック総合指数は396.48ポイント高(3.01%高)と急伸した。米製薬ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンが緊急使用許可されたことやバイデン政権による1.9兆ドル規模の追加経済対策法案が前週末に下院で可決されたこと、ISMの2月製造業景況指数が上昇したこと等が株高要因となった。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した2月の製造業景況指数は60.8で市場予想の58.8を上回り1月の58.7から上昇、3年ぶりの高水準となった。マークイットの2月の米製造業PMI改定値も58.6となり速報の58.5から上方修正された。また1月の米建設支出は前月比1.7%増となり市場予想の0.8%増及び12月の1.1%増を上回った。
3月1日の日中から欧米主要株価指数先物が反騰入りしたことで日経平均も反騰、先週末までの世界連鎖株安への不安がひとまず解消し、週末に大幅下落していた主要通貨も下げ渋りから持ち直しの動きを見せかけたが、ユーロやポンドの反応は鈍く、ユーロドルは深夜に先週来の安値を更新した。
米10年債利回りは2月25日に1.61%へ急上昇してから反落したが、1.40%前後の水準で下げ渋っており昨年8月来の最高値水準を維持している。
米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は3月1日のWSJ紙インタビューで「投資家は将来の利上げや債券購入ペース変更の時期を先読みするのではなくFRBの明確な政策ガイダンスや経済情勢の動向に焦点を当てるべき」とし、「物価が春に上昇する可能性があるもののインフレ期待は妥当とされるレンジを超えて高まっておらず依然としてFRBの目標を若干下回っている」と述べた。市場が米長期債利回りの急上昇を気にし過ぎているとして冷静さを喚起した印象だ。
一方でECBはラガルド総裁が景気後退に苦しむ企業と家計を支援するために尚早な借り入れコストの上昇を防止すると述べ、仏中銀総裁は「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を活用して好ましい金融環境を保つため利下げも排除されないと明確にすべきだ」と述べて長期債利回り上昇抑制への姿勢を示した。
豪中銀は国債買い入れオペを通常の倍となる40億豪ドルに増額して5-7年債を購入すると発表、発表後に豪10年債利回り等が低下した。豪中銀は先週も予定外に3年債の買い入れを行って長期債利回り上昇を抑えようとしている。
こうした動きは主要国中銀が米長期債利回り上昇に対抗するために量的緩和を拡大させてゆくのではないかとの印象を市場に与えており、NYダウが大幅反騰した割にはドル安へなびかなかったことの要因になっていると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月17日午前高値と17日深夜高値をダブルトップとして下落期に入っていたが、2月24日深夜へ106円台に到達するところまで反騰したために25日朝時点では2月23日午前安値を起点とした強気サイクル入りとした。2月26日午前に2月17日高値をいったん超えてから106円割れへ反落し、そこからさらに一段高江しているため、26日昼安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしたと思われる。高値形成期は3月3日午前から5日午前にかけての間と想定されるのでまだ一段高余地ありとし、弱気転換は26日昼安値割れからとする。
60分足の一目均衡表では2月23日午前安値からの反発で遅行スパンが好転し、24日午前には先行スパンも上抜いたが、その後も両スパン揃っての好転が続いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンからの転落を回避するうちは一時的に遅行スパンが悪化してもその後の好転からは上昇再開とし、先行スパン転落からはいったん下げに入るとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数はジリ高基調での推移のために60ポイントを挟んでの横ばい推移が続いている。横這い推移は過熱感には至っていないためきっかけをつかめば上昇が加速しやすいところとみる。50ポイント割れから続落の場合はいったん調整安に入ると注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.50円を下値支持線、107.00円を上値抵抗線とする。
(2)106.50円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとみる。107円到達では売りも出やすいとみるが107円超えから続伸に入れば107円台中盤(107.30円から107.70円)を目指す流れとみる。
(3)106.50円割れを弱気転換注意とし、106.30円割れからはいったん調整安に入るとみて106円前後への下落を想定するが、106円前後は買い戻されやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/2(火)
09:30 (豪) 10-12月期 経常収支 (7-9月 100億豪ドル、予想 131億豪ドル)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 10.9%、予想 -3.0%)
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA 豪中銀)、政策金利 (現行 0.10%)
16:00 (独) 1月 小売売上高指数 前月比 (12月 -9.6%、予想 -0.3%)
16:00 (独) 1月 小売売上高指数 前年同月比 (12月 1.5%、予想 1.3%)
17:55 (独) 2月 失業者数 前月比 (1月 -4.10万人、予想 -1.30万人)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 6.0%、予想 6.0%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (1月 0.9%、予想 0.9%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.1%)
22:30 (加) 10-12月期 GDP 前期比年率 (7-9月 40.5%、予想」 7.5%)
27:00 (米) ブレイナードFRB理事、外交問題評議会参加
28:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
3/3(水)
06:45 (NZ) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 4.9%)
07:00 (豪) 2月 マークイット サービス業PMI改定値 (速報 54.1、予想 54.1)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前期比 (7-9月 3.3%、予想 2.4%)
09:30 (豪) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7-9月 -3.8%、予想 -2.0%)
09:30 (豪) 10-12月期 設備投資 前年同期比 (7-9月 -0.1%)
10:30 (日) 片岡日銀審議委員、群馬県金融経済懇談会挨拶
10:45 (中) 2月 財新サービス業PMI (1月 52.0、予想 51.5)
14:30 (日) 片岡日銀審議委員、記者会見
17:55 (独) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 45.9)
18:00 (欧) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 44.7)
18:30 (英) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 49.7)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 0.8%)
19:00 (欧) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 -1.1%)
22:15 (米) 2月 ADP・非農業部門就業者数 前月比 (1月 17.4万人、予想 17.0万人)
23:45 (米) 2月 サービス業PMI改定値 (速報 58.9)
24:00 (米) 2月 ISM非製造業景況指数 (1月 58.7、予想 58.6)
24:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (英) テンレイロ英中銀委員、マイナス金利ついて講演
27:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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