『リスク回避のドル買いvsリスク回避の円買い』
〇ドル円週初株価上昇に一時103.55まで下落、その後株価急落で一時104.94まで上昇
〇ユーロドルは週央にかけ1.2057まで下落するも下げ渋り1.2132近辺で越週
〇ドル円90日線等突破し地合いの強さ印象付けるチャートに変化、心理的節目105円を試す動き
〇ファンダメンタルズは米当局のハト派姿勢、コロナ感染拡大、株式市場不安定化等ドル円下落材料多い
〇来週の予想レンジ(USDJPY):103.00ー105.50、(EURUSD):1.2000−1.2250
今週のレビュー(1/25−1/29)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初103.79で寄り付いた後、@米1月ダラス連銀製造業活動指数(結果7.0、予想12.0)の冴えない結果や、A好調な米2年債入札結果を受けた米長期金利の急低下、B欧米株の上昇を背景としたリスク選好のドル売り圧力、C米FOMCを控えたポジション調整が重石となり、翌1/26に、週間安値103.55まで下落しました。しかし、一目均衡表基準線に続落を阻まれると、D米ゲームストップ株の乱高下に端を発した世界的な株価急落や、E上記Dを背景とした投資家心理の急速な悪化(恐怖指数VIXの高騰→リスク回避のドル買い)、Fこれまでレジスタンスとして意識されていた90日移動平均線及び一目均衡表雲上限の突破(テクニカル的な買いシグナル点灯→短期筋のショートカバー)が支援材料となり、週末にかけて、昨年11/16以来、約2ヶ月半ぶり高値となる104.94まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局104.72近辺での越週となっております。
尚、1/26ー1/27の日程で開催された米FOMC(米連邦公開市場委員会)では、予想通り、政策金利の据え置きと、資産買い入れ水準の現状維持が全会一致で決められました。また、パウエルFRB議長は記者会見で「テーパリングの議論は時期尚早」と市場で燻るテーパリング観測を一蹴しました。声明文、記者会見共に市場予想通りの結果となったことから、マーケットの反応は限定的となっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.2168で寄り付いた後、早々に週間高値1.2184まで上昇しました。しかし、心理的節目1.22丁度をバックに伸び悩むと、@ドイツ1月IFO景況感指数(結果90.1、予想91.4)の冴えない結果や、A欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大(米製薬大手メルク社が新型コロナワクチン2種類の開発を打ち切ると発表→ロックダウンの長期化懸念)、B一部通信社による「ECBはFRBとの政策の違いが為替レートに与える影響を調査」とのヘッドライン、Cイタリアを巡る政局不透明感の高まり(コンテ首相は辞表を提出。解散総選挙に繋がる懸念が未だ拭えず)、
Dドイツ2月GFK消費者信頼感指数(結果▲15.6、予想▲7.9)の冴えない結果、Eオランダ中銀クノット総裁による「ECBは必要とあればユーロ高に対抗する手段がある」との発言、F一部メディアによる「ECB当局者らは、市場がECBによる利下げの可能性を過小評価していると認識」との報道、G欧米株の下落を背景としたリスク回避のドル買いが重石となり、週央にかけて、安値1.2057まで急落しました。もっとも、1/18に記録した直近安値1.2054をバックに下げ渋ると、週後半にかけて持ち直し、結局1.2132近辺での越週となっております。
来週の見通し(2/1−2/5)
<ドル円相場>
ドル円は週末にかけて上値を伸ばし、一時約2ヵ月半ぶり高値となる104.94まで急伸しました。この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや90日移動平均線を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの強さを印象付けるチャート形状となっております(目先は心理的節目105円を突破できるか否かに注目。突破できた場合は、最後の関門となる200日移動平均線105.61を試すシナリオを想定。一方、突破できず反落に転じた場合は、見切り売りを誘発する形で再度104.00割れもあり得る)。
但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@パウエル議長やイエレン米財務長官がハト派的なスタンスに徹していること(テーパリング観測を否定し、金融緩和政策の長期化を強調)や、A新型コロナウイルスの感染拡大(含むワクチンの供給懸念)を背景に世界経済の一段の悪化が見込まれること(ロックダウン延長を決定する国々が増加)、B米ゲームストップ株に端を発した株式市場の不安定化、C上記ABを背景としたリスクオフ再開への警戒感(株式市場や商品市況の急落→リスク回避のドル買い→クロス円下落→ドル円連れ安の波及経路。リスク回避局面では、当初はドル買い主導でドル円を押し上げるも、一巡後はクロス円の下落を通じて時間差でドル安・円高に繋がる傾向あり)など、ドル円相場の下落を想起させる懸念材料が増えつつあります。
以上の通り、ドル円相場は、テクニカル的な強さを見せつつも、ファンダメンタルズ主導で反落する展開が警戒されます。米ゲームストップ株を巡る騒動(空売りヘッジファンドvs個人投資家集団ウォールストリートベッツ)は来週以降も尾を引くと見られ、株式市場には引き続き下落圧力が加わり易い地合いが続くと考えられます(リスク回避ムード継続→リスクアセットに売り圧力)。また、新型コロナウイルスの感染拡大が継続する中、来週2/5に予定されている米1月雇用統計にも注目が集まります。冴えない結果となった場合には、米経済の悲観的な見方を嫌気したドル売りと、リスク回避の円買いが重なることで、ドル円を想像以上に押し下げるリスクも想定されます(今週はリスク回避のドル買いがリスク回避の円買いに勝りましたが、来週はその逆流に警戒)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):103.00ー105.50
<ユーロドル相場>
ユーロドルは、週央にかけて安値1.2057まで下げ幅を広げるも、週末にかけて持ち直す展開となりました(前週に続き、心理的節目1.20トライに失敗)。とはいえ、上方(1.22付近)には、一目均衡表基準線やボリンジャーミッドバンドが控えている他、更にその上側には(1.2210−1.2230)は強力な抵抗帯(1/11以降上値を抑えられているチャートポイント)が並んでおり、余程強いユーロ買い材料が出てこない限り、ここからの続伸は容易では無いと考えられます(テクニカル的に見て上値余地は限定的→1.21台後半は戻り売りが強まり易い)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州圏における新型コロナウイルスの感染拡大や、Aそれに伴うロックダウンの長期化リスク(ポルトガルやデンマークも新型コロナウイルスの感染拡大を抑制する目的の制限措置の延期を決定)、B欧州当局者による徹底したユーロ高牽制姿勢、CECBによる根強い追加緩和観測、D株式市場の不安定化(リスク回避のドル買い、リスク回避の円買いは共にユーロの重石)など、ユーロドルの下落を想起させる材料は引き続き沢山残っております。
以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、下落リスクが警戒されます。2/3に発表されるユーロ圏の1月消費者物価指数、同生産者物価指数が市場予想を下回る場合には、欧州当局者によるユーロ高牽制や、ECBによる追加緩和観測を通じて、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるリスクも想定されます(欧州当局者は低インフレの主な要因としてユーロ高を指摘)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(目先は1.20台半ばのサポートを試す展開。1/27安値1.2057、1/18安値1.2054を下抜けられれば、心理的節目1.20割れも射程圏内。一方、上方向は1.2200がレジスタンス)。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.2000−1.2250
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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