ドル円見通し 103円台中盤で確り、1月6日以降の上昇基調を維持できるか(週報1月第3週)

米長期債利回りの急上昇や米国の政権交代による混乱、変異種による感染急増等により、これまで続いてきた流れが継続できるのかどうか、試される局面に入っている印象だ。

ドル円見通し 103円台中盤で確り、1月6日以降の上昇基調を維持できるか(週報1月第3週)

ドル円見通し 103円台中盤で確り、1月6日以降の上昇基調を維持できるか

〇ドル円104円に接近して越週、米長期金利上昇、政権交代の混乱、コロナ変異種感染急増等でドル高再燃
〇1/20バイデン次期大統領就任式、騒乱再発に警戒感高まる
〇NYダウは3日続落、為替市場もリスク回避感強まりドル買い優勢、ユーロドルは1.21割れ
〇1/20-21の日銀政策決定会合、政策スタンス変更の可能性も
〇103.52割れの場合1/6安値102.59割れを目指す下落期入りへ
〇104円台回復、意地の場合は1/11高値104.39越えから105円を目指すか

【概況】

ドル円は米長期債利回り急上昇をきっかけとしたドル買いの動きで1月6日午前安値102.59円から1月11日夜高値104.39円まで上昇した。ドル高一服で1月13日昼には103.52円まで下落したが、その後は新たな安値更新を回避して103円台後半で確りしている。1月14日深夜に米長期債利回りがいったん低下したところで再び売られた場面でも13日安値割れには至らず、16日未明には104円へ迫って終了している。
1月15日はNYダウが3日続落、米長期債利回りは高止まりする中でドル高が再燃、ユーロドルが1.210ドルを割り込んで1月6日以降の安値を更新、ポンドや豪ドル等も下落してドル高感が再び強まったことでドル円も支えられた。

昨年3月のコロナショックにより金融市場全体が動揺した後はアフターコロナ復興期待を優先し主要国の実質ゼロ金利と大規模な量的緩和政策による金余りから為替市場ではユーロ、ポンド、豪ドル、新興国通貨等が買われてドル全面安の流れとなり、ドル円も多少の戻りを入れながらも戻り高値を切り下げて安値を更新する下降トレンドでの推移となり、1月6日には102円台まで下落して昨年3月24日の戻り高値以降の安値を更新したところだったが、米長期債利回りの急上昇や米国の政権交代による混乱、変異種による感染急増等による先行き不安もあり、これまで続いてきた流れが継続できるのかどうか、試される局面に入っている印象だ。

【バイデン次期大統領就任式は無難に通過できるか】

バイデン次期米大統領は1月20日に就任式を迎える。先の大統領選挙確定審議においてトランプ支持者が議事堂に乱入、複数の死者も発生する騒乱となり、20日の就任式への警戒感も高まっている。先の乱入事件では金融市場の反応は鈍かったものの、今後の政局運営が順調に進むのかどうか、米国世論の分断による不安心理の拡大が収まるのかどうかも注目される。

バイデン次期大統領は1月14日に新型コロナウイルス危機をめぐり1兆9000億ドル規模の追加経済対策案を発表した。現金給付を1人最大1400ドル、失業給付上乗せを週300ドルから週400ドルへ増額、連邦最低賃金を時給7.25ドルから15ドルに引き上げ、ワクチン普及等の対策で4000億ドル、中小企業・地域向け支援で4400億ドル、州・地方政府向け支援に3500億ドル、さらにインフラ整備等での第二弾を2月に策定するとした。
ジョージア州の上院議員決選投票で民主党が勝利したことで上下院のねじれは解消したが、上院の勢力図は拮抗した状況にあり与野党対立が深まれば追加経済対策法案可決に時間を要することになるかもしれない。またワクチンの普及よりも変異種による感染急増が勝れば経済活動規制の強化等も避けられなくなり難しい運営を迫られる。そこにトランプ支持者による全米での抗議行動等が重なると米国そのものへの先行き不安も募りかねない。

【ユーロドルの下落、昨年来のドル安基調に変化】

バイデン政権発足からの財政出動拡大・国債大量発行見込みから米長期債利回りは急上昇した。米10年債利回りは1月4日の0.9%から01月12日に1.18%へ上昇し、その後は上昇一服となっているが15日は1.09%で1%台を維持している。米長期債利回りの急上昇が金利のつかないゴールドを急落させ、為替市場でも昨年3月から年明けまで続いてきたドル全面安にブレーキがかかっている印象もある。

1月15日のNYダウは前日比177.26ドル安で3日続落、ナスダック総合指数も114.14ポイント安と下げた。バイデン次期政権による経済対策については発表後はイベント通過感でさらに株高を推進する動きにはならず、15日発表の米小売統計もさえなかったことで株安となり、為替市場もリスク回避感がぶり返してドル買い優勢となり、ユーロ、ポンド、豪ドル等が下げた。ユーロドルは1.210ドルを割り込む大幅下落だったが、NYダウの続落に加えてドイツやフランス等のロックダウン延長等がユーロ売りを助長している。この動きが昨年3月以降のユーロドル上昇トレンドの中における短期調整的な動きにとどまるのか、より深い調整へ旋回してゆくのか、ドル円としても注目しておきたい。

【日銀に動きあるか?】

1月20−21日に日銀金融政策決定会合があるが、コロナ不況と金融政策の行き詰まりの中で来年度へ向けて金融政策スタンスを変更してくる可能性もあるところとして注目される。1月15日の時事通信社報道では長期金利操作の運用見直し案が日銀内に浮上しており、現行のマイナス0.2%からプラス0.2%までに抑えてきた金利の変動幅を拡大することが検討されるのではないかという。
日銀は長期金利操作(YCC)により0%程度で推移するとの目標は堅持した上で上下の変動幅を拡大して柔軟に対応できるようにする意向ともされる。長期金利の変動を抑えすぎると大量の国債発行に対する市場取引の低下等で金融機関への影響も出てくる。また上場投資信託(ETF)や国債の買い入れ手法の見直しも検討されるようだ。日銀の金融政策変更姿勢がどの程度のものになるのかにもよるが、為替市場への影響は限定的と思われるが、3月の金融政策決定会合へ向けた変化の姿勢を示す可能性もあるところとして注目しておきたい。

【当面のポイント、下降トレンドの範囲か、脱却の可能性を示すか試す】

【当面のポイント、下降トレンドの範囲か、脱却の可能性を示すか試す】

ドル円は昨年3月9日にコロナショック第一波による暴落で101.17円まで急落した直後に米連銀等による大規模な金融緩和により3月24日高値111.71円までV字反騰となったが、その後は右肩下がりの下降トレンドで推移し、途中には3円前後の戻りを何度か入れつつも安値を切り下げる展開が続いてきた。安値更新から戻して再び安値を更新する騰落リズムは概ね2か月ないしは3か月の周期での底打ちサイクルを形成してきた。
1月6日安値は11月6日安値から丁度2か月目でこのサイクルの底を付けて戻しに入った。11月11日の戻り高値105.67円を超えない範囲までの戻りに終われば、戻り高値は切り下がりに終わり、次の下落期入りから1月6日安値を割り込む一段安へ進んでこれまでの下降トレンドを維持することになるが、1月11日高値104.39円を超えて104円台後半へ進むようなら、下降トレンドからの脱却を試す可能性も浮上する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)1月11日高値104.39円と1月13日昼安値103.52円までのレンジ内で週後半を推移してきたため、この高安レンジを上下いずれへ抜けるのかによりその後の流れも見えてくると思われる。ユーロドルの下落や米長期債利回りの急上昇等の変化もある点に注意する。
(2)1月13日安値を割り込む場合、1月11日高値で年初の戻りは一巡したとみて1月6日安値102.59円割れを目指す下落期入りと考える。103円前後、102.50円前後は買い戻しも入りやすい水準とみるが、103.50円以下での推移が続く場合は安値更新を繰り返してゆく展開とみる。リスク回避的なドル買いよりもリスク回避的な円買いが強まる場合、ドル高一巡でドル安再開に入る場合はこのケースとみる。

(3)104円台回復・維持へ進む場合は1月11日高値超えを目指す流れとみて、1月11日高値超えからは104円台後半から105円を目指すとみる。104.50円、104.75円前後は売りも出やすい水準とみるが、11日高値超えからは1月6日からの反騰レベルが大きくなるとの市場心理も働き始めるので105円超えへ向かう可能性も徐々に出てくると考える。ドル全面高が続く場合はこのケースとみる。(了)<17日17:15執筆>

【当面の主な予定】

1/18(月)
休場 米国(キング牧師生誕日)
11:00 (中) 10-12月期 GDP 前期比 (7−9月 2.7%、予想 3.2%)
11:00 (中) 10-12月期 GDP 前年同期比 (7−9月 4.9%、予想 6.1%)
11:00 (中) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 5.0%、予想 5.5%)
11:00 (中) 12月 鉱工業生産 前年同月比 (11月 7.0%、予想 6.9%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 0.0%)
13:30 (日) 11月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -3.4%)
13:30 (日) 11月 設備稼働率 前月比 (10月 6.0%)
22:30 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演

1/19(火)
米上院財政委員会、イエレン氏の財務長官指名承認公聴会
米上院外交委員会、ブリンケン氏の国務長官指名承認公聴会
EU非公式財務相理事会
国際エネルギー機関(IEA)月報

16:00 (独) 12月 消費者物価指数・改定値 前月比 (速報 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 12月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 -0.3%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調済 (10月 266億ユーロ)
18:00 (欧) 11月 経常収支・季調前 (10月 341億ユーロ)
19:00 (独) 1月 ZEW景況感・期待指数 (12月 55.0、予想 59.4)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前月比 (10月 0.5%)
19:00 (欧) 11月 建設支出 前年同月比 (10月 -1.4%)
27:00 (英) ホールデン英中銀理事、講演
30:00 (米) 11月 対米証券投資・短期債除く (10月 519億ドル)
30:00 (米) 11月 対米証券投資・全体 (10月 -104億ドル)

1/20(水)
バイデン氏が米大統領に就任
中国全国人民代表大会(全人代、常務委員会)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合 1日目
08:30 (豪) 1月 ウエストパック消費者信頼感指数 (12月 112.0)
16:00 (英) 12月 消費者物価指数 前月比 (11月 -0.1%、予想 0.2%)
16:00 (英) 12月 消費者物価指数 前年同月比 (11月 0.3%、予想 0.5%)
16:00 (英) 12月 消費者物価コア指数 前年同月比 (11月 1.1%、予想 1.3%)
16:00 (英) 12月 生産者物価コア指数 前年同月比 (11月 0.9%)
16:00 (独) 12月 生産者物価指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 -0.3%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 12月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
24:00 (米) 1月 NAHB住宅市場指数 (12月 86、予想 85)
26:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、イベント参加

1/21(木)
EU首脳会議
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 3.50%、予想 3.50%)
08:50 (日) 12月 通関貿易統計・季調前 (11月 3668億円、予想 9530億円)
08:50 (日) 12月 通関貿易統計・季調済 (11月 5702億円、予想 7554億円)
09:30 (豪) 12月 新規雇用者数 (11月 9.00万人、予想 5.00万人)
09:30 (豪) 12月 失業率 (11月 6.8%、予想 6.7%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見

20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 17.00%、予想 17.00%)
21:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
22:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 96.5万件、予想 86.8万件)
22:30 (米) 週間失業保険継続受給者数 (前週 527.1万人)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数・年率換算件数 (11月 154.7万件、予想 156.0万件)
22:30 (米) 12月 住宅着工件数 前月比 (11月 1.2%、予想 0.8%)
22:30 (米) 12月 建設許可件数・年率換算件数 (11月 163.9万件、予想 160.0万件)
22:30 (米) 12月 建設許可件数 前月比 (11月 6.2%、予想 -2.1%)
22:30 (米) 1月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (12月 11.1、予想 12.0)
24:00 (欧) 1月 消費者信頼感速報値 (12月 -13.9、予想 -15.0)

1/22(金)
06:45 (NZ) 10-12月期 消費者物価 前期比 (7−9月 0.7%、予想 0.2%)
06:45 (NZ) 10-12月期 消費者物価 前年同期比 (7−9月 1.4%、予想 1.1%)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価 前年同月比 (11月 -0.9%、予想 -1.3%)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価・生鮮食料品除く 前年同月比 (11月 -0.9%、予想 -1.1%)
08:30 (日) 12月 全国消費者物価・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (11月 -0.3%、予想 -0.4%)
09:01 (英) 1月 GFK消費者信頼感 (12月 -26、予想 -30)
09:30 (豪) 12月 小売売上高 前月比 (11月 7.1%、予想 -1.5%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前月比 (11月 -3.8%、予想 1.0%)
16:00 (英) 12月 小売売上高 前年同月比 (11月 2.4%、予想 3.9%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 -2.6%、予想 1.0%)
16:00 (英) 12月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (11月 5.6%、予想 7.4%)
17:30 (独) 1月 製造業PMI速報値 (12月 58.3、予想 57.2)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 47.0、予想 45.0)

18:00 (欧) 1月 製造業PMI速報値 (12月 55.2、予想 54.5)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 46.4、予想 44.8)
18:30 (英) 1月 製造業PMI速報値 (12月 57.5、予想 53.0)
18:30 (英) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 49.4、予想 45.0)
23:45 (米) 1月 製造業PMI速報値 (12月 57.1、予想 56.5)
23:45 (米) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 54.8、予想 53.5)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (11月 669万件、予想 655万件)
24:00 (米) 12月 中古住宅販売件数 前月比 (11月 -2.5%、予想 -2.1%)

注:ポイント要約は編集部

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