【今年のドル/円の相場見通し】基本は「中立」予想、米中間選挙が波乱要因

5年連続で「今年のドル/円の相場見通し」をレポートさせていただく。

【今年のドル/円の相場見通し】基本は「中立」予想、米中間選挙が波乱要因

基本は「中立」予想、米中間選挙が波乱要因

5年連続で「今年のドル/円の相場見通し」をレポートさせていただく。例年の如く今年もまずは「結論(メインシナリオ)」を指摘したうえで、「何故そうした結論になったのか」という理由について報じてみたい。では、今年の年間見通しの「結論」から。

基本は「中立」予想、米中間選挙が波乱要因

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@テクニカル

「一年間に為替相場がどの程度動くのか」−−を数値化した「年間変動率」という考え方がある。それによると、ドル/円は年間を通して15.5%ほど動くことが「平均」であるようだ。
つまり、仮に1ドル=100円で寄り付いたとして、一方向に動くとすれば年内に115円半ば、あるいは84円半ばに達しても不思議ではないことになる。

しかし、改めて指摘するまでもなく、通常はそこまで一方向のみに動くことはない。
筆者の使用しているデータで今年の取引が開始された115.15円を起点とし、自身の相場観である「中立もしくは若干のドル弱気」を参考に、年間変動率の15.5%を上(ドル高)方向に7%、下(ドル安)方向に8-9%動く−−と仮定して計算すると、今年の予想レンジはザックリ「105-123円」となる。

ただ、周知のように、ドル/円は昨年まで5年連続の小動き。年間変動率は2017年から2019年まで3年続けて10%以下であったし、昨年はそれと比べれば大きく動いたものの、それでも変動率は12.5%にとどまり、「平均」にやはり及ばなかった。
したがって、前段において「過去の年間変動率15.5%」をもとに算出した「18円幅」という年間レンジ予想は、やや広すぎるといえるかもしれない。そこで、レンジの上下をそれぞれ縮小させた15円レンジ、「106-121円」を今年の年間予想レンジとして指摘しておく。

なお、今秋に実施される「米中間選挙」とあわせ、一部市場筋からは「米中間選挙実施年は為替の変動が小さくなる傾向にある」−−といった見方も聞かれるが、調べてみたところ必ずしもそうとは言えそうにない。確かに前回2018年はドル/円変動幅9.91円、変動率8.80%とかなりの小変動だったが、1990年や1998年のような年間変動幅はともに35円以上、変動率も25%以上を記録している年もある。
後述するように、「米中間選挙」は非常に大事な材料ながら、ドル/円の年間変動幅縮小などといった面での相関性は小さいのではなかろうか。

A材料

為替を中心に今年の金融市場に影響を与えそうな材料を考えた場合、現段階で大きく4つあると考えている。
すなわち「日米欧英などによる金融政策」、「新型コロナの感染拡大継続懸念」、「米中あるいは日米欧vs中露の対立深化」−−の3つと「世界的に重要な選挙が相次ぐ」ことだ。

最初に挙げた「金融政策」は米国を中心とした内容であり、年内の利上げ動静は引き続き注視されている。ただ1月26日の米FOMC結果発表で「3月利上げ実施」はほぼ確定したうえ、利上げ回数も取り敢えず「3回」までは、ほぼコンセンサスかつ織り込み済み。今後は「3回」より多い「4回もしくは5回の利上げ」といったさらに強気に傾斜することになるのか、国内経済状況など米国のファンダメンタルズ要因にも注意しておきたい。

また「新型コロナ」に関しては、足もと世界中で大流行しているオミクロン株の感染力が極めて高いことが気掛かりのうえ、これまでの動きを見ていると新株発生に至る変異のスピードもなかなかに速い。たとえ、現在のオミクロン株を抑え込んだとしても、新たな変異株が発生。世界中で再び大流行をたどる危険が起こらないとも限らず、引き続きリスク要因となりかねないだろう。
場合によっては、今年も新型コロナ絡みの話題に振り回される一年となる危険性もないではない。

さらに、「米中あるいは日米欧vs中露の対立深化」は、すでに世界様々なところで危ない状況がうかがえ始めている。
一例を挙げると「ウクライナ」や「北朝鮮」に対しては顕著にうかがえるだけでなく、「日米欧vs中国」に関しては、いわゆる領土問題だけでなく「ウイグルや香港、台湾をめぐる人権問題」など多岐にわたり、今後も鍔迫り合いが続くことになりそう。幸いなことに、「大規模な武力衝突」といった事態は取り敢えず避けられているものの、今年こそはいよいよ予断を許さない状況へと陥る公算がこれまで以上に高まっていることだけは間違いない。

ちなみに、視点を為替市場へと転じれば、昨年のユーロ相場とくにユーロ/円は歴史に残るほどの小動きだった。実際、ユーロが正式に誕生した1999年以降で、昨年は最小変動幅そして変動率を記録している。
それからすると、「北朝鮮」や「中国」情勢はともかく、ユーロ相場のかく乱要因となりかねない「ウクライナ」情勢の先行きということは相場のかく乱要因という点からも大いに注意を払いたい。昨年の反動ともいえる年間を通した大相場をたどる一因となりかねないだろう。

一方、最後に挙げた「世界の重要な選挙」はと言うと、日本の参院選が遅くとも夏までに実施されるほか、米国と韓国、イタリアやフランスなどで年内に重要な選挙が予定されている。先で取り上げた「米中などの対立深化」とは違った意味で、各国選挙を踏まえた政治要因が為替など金融市場の波乱要因として注意しておきたいところだ。

ちなみに、「世界の重要な選挙」のなかでも、もっとも関心を集めそうなものは11月に実施される見込みの「米中間選挙」。4年に一度の大統領選から、2年後に行われる国・地方の統一選挙全般を指す。
そのなか、金融市場でとくに注視されているものが連邦議会選だ。上院(任期6年、定数100)の約3分の1に当たる34議席と下院(任期2年、定数435)の全議席が争われる見込み。本稿執筆段階でバイデン米大統領の所属する民主党は上院で同党系無所属2議席を含む50議席、下院で221議席を有しており、両院とも主導権を握っているものの、そうした優位性が中間選挙後も維持されるのかが最大のポイントとなろう。

しかし過去を遡ると、中間選挙は与党に厳しい結果となることが多く、実際いまから4年前、トランプ前政権の導入した「大型減税」の恩恵なく与党・共和党は下院で過半数を失っている。
もちろん実際の中間選挙まで、まだ半年以上の時間を有しているとはいえ、複数の米世論調査でバイデン政権の支持率急低下が報じられていることは気掛かりだ。選挙結果によっては、米政権と議会の「捻じれ現象」を起こしかねず、年後半から来年以降に掛けて米政治情勢が不安定な状況となる危険性もなくはない。金融市場においても大きな波乱を呼びかねない危険性を秘めている。

そして、最後にもうひとつ。前段で筆者は今年のドル/円相場について、『ドルの中立』ないしは『ドルのやや弱気』−−の見通しと指摘したが、過去に遡ってみたところ1990年以降前回まで8回中6回の「中間選挙実施年」が「ドル安・円高」方向へと振れていたことは、心強い支援要因だ。
いま現在の日本は、かつてのような「米国の貿易敵国」という立ち位置ではない。しかし、それでも米国における重要な国政選挙実施年には折に付け、為替市場においても政治的な「円高圧力」が強まるということを繰り返してきた。今年もヒョッとすると、予断を許さない気もしている。

Bその他

今年の干支を考えると、十干が「壬(みずのえ)」で十二支は「寅(とら)」。つまり、「壬寅」になる。

陰陽五行説によると、「壬」は十干の9番目にあたり、「次の生命を育む準備の時期を表している」という。また、その意味するところは「静寂」や「停滞」とされ、それからすると今年の金融相場は全般的に「辛抱」を強いられる一年になるかもしれない。
それに対して、十二支である「寅」は始まりから3番目にあたるもので、「誕生」や「始まり」を表すとされている。意味合いとすれば前述した「壬」に近いニュアンスだが、もう少し積極的かつ明るい内容になりそう。たとえば「成長」や「豊穣」といった内容も含まれるという。

いずれにしても、そんな今年の「壬寅」という干支から考えられることは、2022年は「冬から春に向けての転換期」にあたることになるのかもしれない。依然として新型コロナの感染拡大が続いていることもあり、金融市場ももうしばらくは「停滞」あるいは「辛抱」といった状況をたどる可能性を否定できないものの、それは次なる動意に向けた雌伏の時間帯。
そして、年末に向けてはアクティブな動意を示すなど、次なる大きな流れに向けた明るい展望が開けることになるのではなかろうか。年後半という尻上がりの動意も期待しておきたいところだ。

さらに、過去の「寅年」を振り返ってみると、前回2010年には「ギリシャを中心とした欧州債務危機」、前々回1998年は「リーマンショック」、1986年は「チェルノブイリ原発事故」、1974年「ウォーターゲート事件でニクソン米大統領辞任」−−などの重大事象が起こっていたことも参考までに頭の片隅にとどめておいて損はない気もしている。

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