米国大統領選挙について(8)(2020年10月1日)

9月29日に行われた討論会(ディベート)は、史上最悪のディベートとメディアは評価している。

米国大統領選挙について(8)(2020年10月1日)

テレビ討論会

9月29日に行われた討論会(ディベート)は、史上最悪のディベートとメディアは評価している。
筆者はもともとこのディベートなるものに、ほとんど重きを置いていなかったが、今回のディベートを見てこのディベーターたちがどの程度の人間かというのがはっきりするメリットを見出したと言える。
特にトランプはひどい。
9月18日に亡くなった、最高裁判事ギンズバーグがトランプのことをフェイカー(偽物)と呼んで物議をかもしたことがあるが、まさに偽物そのものであることを見事に今回露呈した。
もともと彼が大統領に当選したときに、筆者はトランプのことをごろつきと称して顰蹙を買ったものだが、そのごろつきが63百万票も獲得する不思議にあきれ返ったものである。
ごろつきで、嘘つきでブリー(いじめっ子)の彼はその正体をいかんなく示してくれた。

ディベートではなく醜い怒鳴り合いで90分この醜さに耐えるのは大変な苦痛であった。
特にトランプは、バイデンの議論の最中に割り込んで、ほとんどバイデンにまともにしゃべらせないことで圧倒しようとしたのだが、バイデンはその中でも割と冷静に反論して存在感をしめした。

90分のほとんどをトランプがしゃべっているのだが、そのほとんどは、自慢あるいは悪口で、政策論議はゼロである。
流石にいつもはトランプを擁護する、共和党のサロゲート(テレビでトランプを代弁する評論家)連中もこのディベートでのトランプのパーフォマンスには呆れて、トランプはToo Hotだったと批判している。
三流人材同士の勝負であったが、トランプが四流に転落したということだろう。
この男が民主主義を奉じる米国の大統領であることは大いなる喜劇であるが、それは国民にとっては悲劇である。

8月終盤の共和党全国大会以降、一向に改善しないこの選挙の流れにいら立ち本性を現したのだろう。いずれにせよ、このディベートなるものにはほとんど意味がない。こんなものを3回もやる必要は全くない。時間の無駄である。

最終1ヶ月の焦点

最高裁判事のルース・べーダー・ギンズバーグ(RBG)が87歳で亡くなった。
リベラルのイコンであった彼女の死去で、空席となった9人目の判事をトランプが指名して、最高裁の保守派を補強する動きが選挙民の関心を呼んで大きく支持率が変動するとは思えない。
このトランプおよび上院共和党による従来の規範を無視した、判事指名強行は、9人の裁判官を保守6人、リベラル3人と保守有利の状態に持っていこうとするものである。
この事態に際し、一部メディアが過剰反応しているが、その6対3の最高裁が、今回の選挙の結果に介入することはありえないし、従来の規範を逸脱した結果を最高裁が判定することもあり得ない。そんなことをすれば最高裁の自殺行為になるからだ。最高裁判事は究極の理性、知性の持ち主であり、政治への介入が裁判所の権威を傷つけることは知っている。
彼らにとっては、政治の右左よりも裁判所の存在が大事なのである。

それが2020年に入って明らかにリベラルにシフトしつつある最高裁の裁定の背景にある。最高裁長官ロバーツは、本来保守派であるが、2020年多くの判決でリベラル派と歩調を一にする判定を下している。あまりにも党派的な動きは最高裁にとって危険だという判断だろう。
この規範を無視した保守派判事の任命は、逆に言えば、保守派の危機感の表れともいえる。
人口動態統計で見ても、将来白人の相対的な力が落ちることになり、米国政治は趨勢的にリベラルに向かうことは確かである。その滔々たる大河の動きを少しでも牽制するために、最高裁を保守派で固めたいというのがホワイトハウス、上院の意向である。
既に国民が獲得した、既得権をイデオロギーだけで覆すと事はできない。
騒ぎ過ぎはやめよう。

さはさりながら、今回のケースでも示されるように、最高裁判事の任命にかかわる上院を支配することの重要性は論をまたない。
この上院は、一般論でいえば、民主党は苦手である。
各州が二人ずつ上院議員を出して来るので、圧倒的に人口の少ない州の代表も、カリフォルニア州のように70百万人もいる州も同じ数の代表である。小さい州は圧倒的に地方の共和党支配のレッド・ステーツが多い。ということで圧倒的に単純な人口比で見る支持率と、上院議員の選出率は大きく食い違い、大きな国の流れが上院には反映されないようにできている。
従って、上院を民主党が制するためには、大統領選、下院選で民主党が圧勝するときに初めてチャンスが出てくる。

現在53対47の共和党有利を今回の選挙で民主党が制することができるかどうか。
一部には、ディベートでのトランプのパーフォマンスで、チャンスができたという見方もあるが、ディベートがそれほど大きな影響を与えることはまずない。あってもすぐ元に戻ることが多い。
トランプの醜態がすぐ上院の当落につながることはないだろう。もし民主党が上院を制することができれば、それはトランプのせい(敵失)ではなく、民主党自体の得点力ということになるのだろう。

さらにトランプは選挙結果で、彼の敗北が決定しても、平和裏の権力の移行を拒否する可能性を示唆している。ありもしない郵便投票による大規模の選挙不正をその理由としている。
そのトランプ発言に過剰反応した一部のメディアの報道があるが、トランプは何でもただ口にするだけで、あとで知らん顔をすることはいくらでもある。
選挙結果を拒否するような重大な事態を惹起することは、トランプのような小物にできるはずはない。
単なる脅しである。米国メディアの過剰反応にさらに過剰に反応している一部日本のメディアの恐怖シナリオはいわゆるマガジン・リップ(雑誌を売るために過激な見出しを使うこと)である。

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