(1) ファンダメンタルズ分析
@ 米・NZのGDP
図@は米とNZのGDP比較ですが、ほぼNZ>米国になっていることが解ります。これを図Aの移動平均使いますと更に明確になります。
NZ経済は住宅市場が若干バブル気味で、住宅関連が下降気味に推移しています。また世界デフレが払拭できずに、NZの主要輸出品である食料・衣料関連の価格が下がり、最近の経済指標は最近不冴えになっています。一方で米国は期待感先走りになっているとはいえ、雇用や時給が改善しており、少なくとも現状よりは先行き上向きが予想されています。
図BはIMFの見通しですが、NZの2017年GDPは2016年同様の2.8%成長見込みになっていますが、2018年は2.6%まで下がる予想となっています。一方で米国は2017年2.3%で、2018年は2.5%ですから、来年は肩を並べそうな見通しです。今年、両国の成長力格差を維持できるだけの勢いがNZになくなると、年後半からはこの辺りが材料視されそうです。
ご参考までに豪州とNZを比較してみると、ほぼ同じような展開になっています。概ねNZ>豪州になっています。尚、豪州の2016年第3四半期はクイーンズランドの大洪水の影響を受けて下がっている特殊要因が足を引っ張っています。
図DはNZ中銀作成の住宅価格のインフレ見通しです。まだ2017年(緑の縦線より右が2017年)は赤のシナリオで高値安定を続け、年央から住宅インフレが下がる見通しになっています。2017年前半は低金利と移民流入が続き、内需が強い状態を反映していると予想しています。(出所:NZ中銀)
図Eは市中銀行の90日(3ヶ月)金利が中央予想値(青)では横ばいを示していますが、強い内需と移民流入で金利は強含みを見ており、これによりインフレが沈静化し、中銀目標のインフレ2%に収まると予想しています。(出所:NZ中銀)
図Fで、NZ中銀は2015年央から一貫して利下げを実施していますが、これは豪州と同じデフレマインドを断ち切りたい形で実施しました。豪州との大きな違いはメインの輸出品目が農産物になっており、豪州の鉱山関連の商品指数が底打ちしたのとは違い、まだ世界的に農産物価格の回復が見られない状況になっています。移民流入で内需堅調の中で、まだ先行きの利下げが豪州よりも燻っています。それでも米国との差は歴然で、2017年中の金利差逆転はなさそうです。
また1月26日に発表された2016年第4四半期消費者物価指数(図G)が年率1.3%となり、2年振りに中銀のインフレ目標値に入ってきています。市中金利(図E)の上昇見通しも勘案するとNZ追加緩和予想は年初に減ってくると思われます。
(2) テクニカル分析
@ NZドル/米ドルの月足チャート(2017年1月27日現在)
2007年から始まった赤いラインのフォーメーション(AとB)から、長期はNZドル高トレンドが依然として維持されています。仮にこれを切っても2001年から続く青のサポートライン(C:現在0.5850米ドル付近)で下値を守っています。
現在は大きな幅のNZ上昇トレンド内で下値調整をしている期間で、ラインEの抵抗線に沿って上昇を止められています。これを確りと上抜いていくと、長期のトレンドラインに回帰し、とりあえずD方向への動きに繋げる形になります。
A NZドル/米ドルの週足チャート(2017年1月27日現在)
上図は週足チャートです。ラインFを上抜いてから、中期ではNZドル安からNZドル高に変わり、現在はラインGのサポートに沿って右肩上がりになっています。この上昇を遮るラインHが0.7300付近にあり、ここを確りと越えてくると、ラインIの横サポート(0.75)付近までの上値余地ができてきます。更にこの水準越えでラインJの0.78付近が見えてきます。
逆にラインGの0.6750を下回って終わると2015年8月のダブルボトム0.6250付近までの下押しになります。この場合はラインHの高値0.75が非常に強い抵抗線になります。
B NZドル/米ドル週足チャートと38週線
上図はNZドル/米ドル週足に38週線を加味したものです。豪ドル/米ドルと同様にある程度トレンドラインに沿って動いていますが、ここ1〜2か月は38週線中心に上下しており、神経質な展開となっています。現在の38週線は0.7097米ドルに付近に位置しており、まだ上昇トレンドを維持しています。従いまして、週足ベースのラインIの0.75方向に行ける形になっていますが、0.71を下回る期間が長くなれば、トレンドライン自体が下向きに変わってきます。それまでは0.71がサポートとしてNZドル高を支えています。
以上より今年の年初はNZドル強い形で、当面の抵抗線0.7300〜20米ドル越えを試す流れにいます。越えた場合には0.75米ドル付近までの上値余地が広がりそうです。仮に当面0.73米ドルの抵抗線を越えられずに、一度NZドル安の調整に入っても0.70〜0.71米ドルサポートが強くなっています。
万一、このレベルを下回った場合に0.6750米ドルで止まるかとなります。ここを切った場合はNZドル安に変わります。
2017年見通し
2017年のNZドル・米ドルの年初は、追加緩和思惑でNZドルの上値が抑え込まれる可能性を残していますが、まだ住宅関連インフレ余韻もあり、時間経過と共に緩和思惑が払拭されていくとファンダメンタルズ格差や金利差でNZドル買いが出易い環境になりそうです。
更に年央以降は、食品関連の国際市況の回復ないとNZドルの上値も次第に限定されそうです。
年間のレンジとしては0.69米ドル〜0.78米ドルを予想します。
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