2022年の豪ドル対米ドルの見通し(22/1/21)

2021年は前年に続き相次ぐ新型コロナウィルスの拡散により、世界経済は常にウィルスとの闘いになりました。

2022年の豪ドル対米ドルの見通し(22/1/21)

2022年の豪ドル対米ドルの見通し

2021年は前年に続き相次ぐ新型コロナウィルスの拡散により、世界経済は常にウィルスとの闘いになりました。先進国中心に財政拡大やゼロ金利政策、加えて中銀による国債購入拡大により、市中への資金ばら撒きもあり、消費拡大・世界的株高傾向から経済は大きく回復し、それに伴うインフレ懸念が増しました。以下、豪米のファンダメンタルズから見ていきたいと思います。

(1)ファンダメンタルズ分析

(1)ファンダメンタルズ分析

上図@は豪州中銀の予想(2020年11月時)とFRBの予想(2020年12月時)を合わせたもので、Aは1年後の両国中銀の2021年時点の予想数値です。赤の横線は2020年時の豪州中銀予想高値である5%に引いています。さて、青の矢印を見ると、2021年の予想は米国が4.2%に対して5.5%の伸び、一方の豪州は5%予想に対して3.0%に留まりそうです。豪州は冬場に入り、10月上旬までロックダウンの影響もあり、成長に陰りが出たのに対し、米国は国民への2回に亘るコロナ支援金や失業給付金引き上げを含めた巨額の財政拡大もあり、消費の拡大が景気を後押しし、GDPが大きく伸びました。結果、2020年の中銀予想は逆転し、米国>豪州になりました。

黒の矢印である2022年見通しは、米豪の経済規模を無視すると、単純伸び率としては豪州(5.5%)>米国(4%)になっていますが、2021年の伸び率が低かった豪州ですので、2020年の基準値を同じ100にして計算すると、僅かながらも米国>豪州になります。相場がフローを取るか、ストックを取るかで変わりますが、利上げ気運は米国優位が解ります。

次に豪州と米国の各中銀のCPI見通しを見ると、下図Bになります。

(1)ファンダメンタルズ分析 2枚目の画像

今年も先行きのインフレ懸念は米国>豪州で、上記の成長度合いとインフレからみて利上げ先行は米国であることが肯けます。実際にFOMC議事録では2022年に米国は3回利上げの予想に対し、豪州中銀は実質CPIがインフレ目標である2〜3%内に持続的になるまで利上げしないと明言しており、2022年末、2023年末共にCPIは2.25%予想ですので、豪州中銀の「持続的」を満たすには2023年になりそうです。

両国の政策金利ですが、下図Cを見ると、2021年末までは全く金利差はありませんでした。市中の実勢金利ではじわりと豪米間に金利差が広がっており、昨年の豪ドル安米ドル高の1材料になっています。
2022年に入ると、豪米間で政策金利にも大きな差異が生じる見通しになっています。現状段階で、米国(オレンジ色の矢印)は年末に向け1%になる市場の予想に対し、一方の豪州は昨年12月時点でのエコノミスト予想では最初の利上げが2023年に入ってからとなっています。少なくとも2022年末には1%程度の金利差見込みになります。

(1)ファンダメンタルズ分析 3枚目の画像

その他、2022年中の政治日程では、豪州は2022年5月までに総選挙を行うことになっています。現在のモリソン首相はオミクロン対策で苦慮しており、かなり高かった支持率が下がっています。一方の米国は11月初旬に中間選挙が予定されています。バイデン大統領もデルタ株でのワクチン接種義務化などが嫌気されて支持率がかなり落ちています。副大統領のカマラ・ハリス氏も非常に不人気で、昨年11月のUSAトゥデイとサフォーク大学の実施した調査で28%と低率に喘いでいます。豪米共に現状では与党の支持下落が目につきます。

以上より、1月現在のファンダメンタルズから見ると、米国の優勢が続き、特に金融政策の差は歴然となっているので、年前半は米ドルが豪ドルよりも優位になりそうです。年央時点で見通しが裏付けられると、市場はフローに目が移る可能性もあり、2023年に向けた豪州の経済拡大期待やそれによる利上げ気運が生まれてくることが予想されます。そうなると豪ドル買いへの動きも予想されます。但し、今年の波乱要因もCovid-19の影響度合いになります。

(2)テクニカル分析

@豪ドル/米ドル月足チャート(2022年1月19日現在)

@豪ドル/米ドル月足チャート(2022年1月19日現在)

上図は月足チャートです。昨年は豪ドル高値がGの抵抗線(=0.8010)で止められ、その後は米経済早期回復期待に豪ドルが売られました。大きな流れはサポートラインA(=0.7910)を下抜けてから豪ドル安継続を確認し、抵抗線に変わったこのAを越えて終わることが出来ずにいます。そして高値からの抵抗線B(=0.8080)がユーロ安を支えています。中期でユーロ高を回復するにはこのA、G、Bを越える必要があります。
一方、2013年4月高値からの抵抗線C(=0.6060)を2020年に越えたことで、昨年の初めは豪ドル安下での戻り高値を試す流れにあり、Gまで戻しました。現在はGを付けた後の豪ドル安への回帰となっているので、まだ暫く下値目途を探る展開です。最初は横サポートのD(=0.6840)、これを維持出来ない場合は次のE(=0.6300)、更にF(=0.6000)が目安になります。

このチャートを大きく見ると、Bを抵抗線にD(0.6840〜0.8080)、E(0.6300〜0.8080)、F(0.6000〜0.8080)の各レンジでのディセンディングトライアングルを形成していることになります。尚、抵抗線Bは年間で約220ピップス程度下がってきます。年末では0.7860付近の抵抗線になります。

A週足チャート(2022年1月20日終値現在)

A週足チャート(2022年1月20日終値現在)

週足では昨年2月下旬高値からの抵抗線A(=0.7500)と、そこから平行に下したB(=0.6940)及びC(=0.6810)で豪ドル安トレンドラインを形成しています。そして〇印は過去2年半で0.7000の大台代わりを示しています。この間7回以上の分岐点になりました。昨年も12月上旬に0.6993の底値を見ており、ここ7週間は豪ドル高に小反発しています。相場はBとCを狙うにしても、この0.7000が重要なサポート・ポイントになっています。

B移動平均線(週足:2022年1月20日現在)

B移動平均線(週足:2022年1月20日現在)

上図は週足チャートの期間を長くし、フィボナッチ数値の38と62を移動平均線にしたものです。38週線は0.7388、62週線は0.7489にあります。昨年12月初旬にデッドクロス(DC)しました。〇印がゴールデンクロス(GC)とデッドクロスを示していますが、2013年以降はGCもDCも約2〜2.5年でクロスするケースが多かったのですが、今回のDCは1年強しかもちませんでした。そしてDCは始まったばかりです。最低でも今年一杯はクロスし返す可能性が低くなっています。従い、62週線の0.7500付近が強い抵抗線になりそうです。
また、月足の38ヶ月線は0.7121、62ヶ月線は0.7295にあり、昨年12月の実体部分はこの間で推移し、1月も下旬までまだこのレンジ内にいます。そして2021年初からの月足抵抗線は0.7600にあります。当面は実体で38ヶ月線を切って終わる(月足で0.71未満)と、豪ドルは一段安トライが始まりそうです。

2022年見通し

2021年の値幅は1,014(レンジ0.6993〜0.8007)ピップスでした。2015年〜2019年までは650〜1250ピップス(平均930ピップス)のレンジ、2020年は2,100ピップスも動きましたが、昨年予想もこれを例外としました。今年もレンジは1,000ピップスを予想します。
昨年の予想レンジは0.7300〜0.8400の1,100ピップスでした。値幅としては想定内でしたが、そのレンジは約300ピップス下方になりました。Covid-19により豪米間のファンダメンタルズ格差が年央から大きく広がり、豪ドルの下値模索となりました。

2022年の年前半もファンダメンタルズと月足・週足から見ると、豪ドル下値模索の先行とみています。上限は月足の抵抗線Bが年末に0.7860まで下がるので、ここから1000ピップスの値幅を勘案すると0.6860になります。ここは月足横サポートのD(0.6840)に相当します。
以上より今年のレンジは0.6800〜0.7800とし、年前半豪ドル安、後半フローに目が向けば豪ドル高を想定します。
年央になっても、豪ドルの景気回復見込みや利上げ気運が予想以下の場合には、月足のE(0.6300)方向が視野に入りますが、この場合は週足62週線の0.7500を上限にして0.6500〜0.7500の1,000ピップスレンジとします。後者の可能性は低いと見ています。
(2022年1月21日11:00、1豪ドル=0.7189〜90米ドル)   

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