ドル円、一時急伸するも、米長期金利の急低下を背景に上値の重い展開。リスクは依然下向きか(8/16朝)

15日の海外市場でドル円は乱高下。

ドル円、一時急伸するも、米長期金利の急低下を背景に上値の重い展開。リスクは依然下向きか(8/16朝)

海外時間の為替概況

15日の海外市場でドル円は乱高下。欧米株(先物)の上昇を背景に、アジア時間引けにかけて、一時106.78(高値)まで急伸するも、心理的節目107円をバックに戻り売りが強まると、@中国商務省による「米国は新たな10%の追加関税によって米中首脳による合意を破った」「対抗措置を取らざるを得ない」との発言が米中貿易摩擦の再燃を連想する形で「円買い」に繋がったことや、A米長期金利の急低下を背景に「ドル売り」圧力が強まったことなどが重石となり、欧州時間序盤にかけては、一転して105.71(安値)まで急反落する荒々しい値動きとなりました。

もっとも、NY時間に発表された米7月小売売上高(結果0.7%、予想0.3%)や、米8月NY連銀製造業景況指数(結果4.8、予想3.0)、米8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数(結果16.8、予想10.0)が軒並み市場予想を上回る好結果を示すと反発に転じ、一時106.35付近まで上昇する場面も見られました。引けにかけては、米10年債利回りが2016年8月以来となる1.475%まで低下する中、結局106.10付近まで押し戻されてのクローズとなっております。

一方、ユーロドル相場は急落。ユーロ円の上昇に連れる形で欧州時間に一時1.1159まで上値を伸ばすも、同水準で伸び悩むと、@米小売売上高など一連の米経済指標が市場予想を上回ったことに伴う「ドル買い」や、Aフィンランド中銀レーン総裁による「9月に一連の景気刺激策を発表する」との発言を受けた「ユーロ売り」が重石となり、NY時間序盤にかけて、8/2以来、約2週間ぶり安値となる1.1092まで下げ幅を広げました。引けにかけて反発するも戻りは鈍く、結局1.1105付近でのクローズとなっております。

ドル円のテクニカル分析

ドル円は乱高下しつつも方向感を見出し辛い時間帯が続いております(107円をバックにした戻り売りと、105円台半ばをバックにした押し目買いに挟まれる展開)。但し、@ダブルトップからの下放れ(添付チャートの青線)や、A強い売りシグナルを表す「一目均衡表・三役逆転」など、テクニカル的な弱さを考慮すれば、ドル円のリスクは引き続き「下方向」と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@世界的な貿易戦争が世界的な通貨安戦争(利下げドミノ)に波及するリスクや(※昨日はメキシコ中銀もサプライズ利下げ)、A米中貿易摩擦を巡る先行き不透明感の高まり、B米国で見られる2年債と10年債の逆イールドを巡るリセッション懸念(※昨日は逆イールドがひとまず解消)、Cイランやトルコ、朝鮮半島を巡る地政学的リスクの高まり、D英国を巡る合意なき離脱リスクの危険性、E世界経済の不安定化、F香港を巡る緊張の継続、Gドイツ経済のマイナス成長、Hイタリアやアルゼンチンを巡る政局不透明感の高まりなど、ネガティブ材料は山積みです。また、I追加緩和の手札に乏しい日銀と、9月の大幅追加利下げ(50bp)を織り込みつつある米国との金融政策格差は明らかであり、ドル円にはテクニカル面、ファンダメンタルズ面双方の影響から下落圧力が加わり易い状況が続くと考えられます。

本日は、米7月住宅着工件数や、米7月建設許可件数、米8月ミシガン大消費者信頼感指数の速報値に注目が集まります。市場予想を下回る冴えない結果となれば、「米9月FOMCでの大幅利下げ観測高進→米長期金利低下→ドル売り」の経路でドル円に下押し圧力を加える可能性があり注意が必要です。米中貿易摩擦に絡むヘッドラインや、トランプ米大統領のツイート、米経済指標の結果を睨みつつも、「ドル安・円高」基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。(予想レンジ:105.50ー106.50)

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