【概況】
6月25日安値106.75円からの揺れ返し的な上昇が8月1日高値109.31円まで続いたが、1日深夜のトランプ大統領による対中国制裁関税第4弾発動宣言から情勢は一変して円高ドル安へ旋回し、8月6日に105.52円へ下落して6月25日安値を割り込んだ。さらに8月12日には105.04円まで安値を切り下げて105円割れを試したがぎりぎりのところで踏み止まり、13日夜には米国による対中関税発動の一部延期報道をきっかけにリスク回避感が緩んで106.95円まで戻した。だがこの戻りは続かずに14日夜には株安と米10年債利回りが2年債利回りを下回る逆イールドが2007年以来12年振りに発生したことでダウが800ドルを超える下落となってドル円も106円を割り込むところまで失速した。
14日夜以降は106円を挟んだ揉み合いで方向感が定まっていない。15日午後には一時的に106.76円まで戻す場面もあったが材料的な裏付けなく早々に失速した。14日夜の米経済指標等はまちまちで方向感には欠いた。ユーロが下げたためにドル指数が続伸してドル円を下支えしたものの、米長期金利低下傾向は続き、ダウの戻りも小ぶりだったために上値も限定的だった。
米中対立問題については8月15日に中国財政省が米国の対中制裁関税第4弾に対して「対抗措置を取らざるを得ない」とする声明を発表した。トランプ米大統領は中国の習近平国家主席と「近く電話で話をする予定になっている」 、貿易戦争は「比較的短期間に終わると思っている」等と話したが、電話協議については香港デモに関してのツイートでも触れているため香港問題が主題とみられ、通商合意は9月の両国の閣僚級協議進展如何であり、大統領発言は時々融和姿勢を示しながらも強硬姿勢を貫いてきたため、今回の早期解決期待発言に対する市場の反応は乏しい。
8月15日夜の米経済指標では小売等は市場予想を上回ってやや強めとなりドル高に寄与した。
米商務省が発表した7月の小売売上高は前月比0.7%増で6月の0.3%増及び市場予想の0.3%増を上回った。米労働省が発表した週間新規失業保険申請は22万件で前週比9000件増加、市場予想の21万4000件を上回った。
NY連銀が発表した8月の製造業景況指数は4.8で前月の4.3から小幅改善し、市場予想の3.0を上回ったが、6カ月先の見通しは25.7で前月の30.8から低下した。米フィラデルフィア連銀が発表した8月の製造業景況指数は16.8で前月の21.8から低下したが市場予想の10.0は上回った。
米連銀が発表した7月の鉱工業生産は前月比0.2%低下して3カ月ぶりのマイナスとなり、6月の0.2%及び市場予想の0.1%を下回った。
【株安不安と長期債利回り低下が続く】
8月14日に前日比800.49ドル安の大幅下落となったNYダウは下げ一服で99.97ドル高とやや戻したが、ザラバでは25339.60ドルの安値をつけて7月16日以降の安値を更新している。また、前日の日足大陰線に若干食い込んだものの3分の1にも届かず、所謂「入り首線」レベルに止まったため、先安感が継続しやすい姿と思われる。
長期金利の指標である米10債利回りは前日比0.05%低下の1.53%で2年債利回りの1.50%を上回ったため両者の逆イールドは1日で解消したが、30年債利回りは1.98%へ低下して過去最低を更新した。世界景気の先行き不透明感と世界的な金融緩和再開感が長期債利回りを一段と低下させており、米連銀等への追加利下げを催促している。各国の利下げが相次いでいるが、15日もメキシコ中銀が0.25%の利下げを決定した。
同国の利下げは2014年6月以来となる。
米連銀は8月23日に毎年恒例のワイオミング州ジャクソンホールでシンポジウムを開催する。パウエル議長は現地時間23日午前8時(日本時間午後11時)に講演する。市場は9月FOMCでの追加利下げを確実視し始めている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月6日朝安値から4日半となる8月12日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて上昇したが、14日夜の下落で106円を割り込んだために15日朝時点では13日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定して次のボトム形成期となる15日夜から19日夜にかけての間への下落を想定した。15日午後の一時的反発では13日夜高値に届かずに失速しているため、まだ一段安余地ありとし、105.65円割れからは下げ再開として12日安値試し、さらに底割れへ向かう可能性ありと考える。ただし、15日午後高値超えからはいったん強気サイクル入りと仮定して16日夜から20日夜にかけての間への上昇と107円台序盤試しを想定する。
60分足の一目均衡表では14日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後は106円を挟んだ揉み合いのために方向感に乏しい。方向づけは14日深夜安値と15日午後高値を上下いずれへ抜けるのかで判断し、14日深夜安値割れからは下げ再開として遅行スパン悪化中の安値試し優先とするが、15日午後高値超えからはいったん強気サイクル入りとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は106円を挟んだ揉み合いのため指数も50ポイントを挟んだ揉み合いで方向感に欠ける。60ポイント超えから続伸なら上昇再開とみて高値試し優先とするが、40ポイント割れからは下げ再開として30ポイント割れを目指すとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、8月14日深夜安値105.66円を下値支持線、106.25円を上値抵抗線とする。
(2)106.25円以下での推移中は一段安警戒とし、105.66円割れからは12日夜安値105.04円試しを想定する。105円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、105円割れをスルーして続落の場合は2018年3月26日安値104.63円試しへ下値目処を引き下げる。また105.65円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)106.25円を一時的に超えても維持できずに105.66円割れするところから下げ再開とするが、106.25円超えから続伸の場合は強気転換注意として15日午後高値106.76円試しとする。106.70円台では戻り売りも出やすいとみて、戻り高値切り下がりの範囲で106円を割り込むところからは下げ再開とするが、15日午後高値を超える場合は107円台序盤への上昇を想定する。また106.50円以上で終了なら週明けも高値を試しやすいとみる。
【当面の主な予定】
8/16(金)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 202億ユーロ、予想 185億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 230億ユーロ)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算件数 (6月 125.3万件、予想 125.7万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 -0.9%、予想 0.3%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算件数 (6月 122.0万件、予想 127.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -6.1%、予想 3.1%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (7月 98.4、予想 97.2)
オーダー/ポジション状況
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