両候補の為替政策
大統領選をめぐるアノマリーの誤り
米国大統領選レポート第3回となります。
今回は前回予定していた両候補の為替政策についてとなります。ちょうど日本時間の昨日に第1回TV討論会も行われ、直近の両候補の考えを確認することもできました。
まず、米国大統領選のたびに言われる、大統領選における為替の動きに関するアノマリーは間違いが多いことは認識しておいてください。2つほど例をあげると、(1)共和党は市場主義を重視する(為替の動きはマーケットに任せる)ためドル高に動きやすく、いっぽうで民主党は保護主義の傾向があるため、ドル安に動きやすいというもの。(2)大統領選の翌年(就任の年)は新大統領に対する期待からドルが買われやすいというものです。
歴代大統領在任期間と所属政党
最初に確認のため、80年代から現在までの大統領と所属する党をご覧ください。米国大統領は、選挙翌年の1月に就任しますので、就任から次期大統領就任までを在任期間として一番左に、次が大統領、右が所属政党です。
1981-85 レーガン 共和党
1985-89 レーガン 共和党
1989-93 ブッシュ 共和党
1993-97 クリントン 民主党
1997-01 クリントン 民主党
2001-05 ブッシュjr 共和党
2005-09 ブッシュjr 共和党
2009-13 オバマ 民主党
2013-17 オバマ 民主党
2017-21 ?
次に、この期間の円相場の動きを月足で見てみましょう。
米大統領とドル円月足
共和党大統領の期間はアノマリーとは逆にドル安傾向
黄色で示したのが共和党大統領の期間、白色が民主党大統領の期間です。こうして見ると民主党大統領の期間は目立った方向性は無いものの、共和党大統領の期間はアノマリーとは逆にドル安の傾向があることは一目瞭然です。
また大統領選翌年の1年間を水色で着色しましたが、こちらも少なくともドル高に動いているとは言えず、上げる年、下げる年、変らない年、それぞれが同じような割合になっているとしか言えません。
どちらがなるにしても円高傾向は不可避か
今回の大統領選に関しては、本日の日経朝刊1面にもある通り、両候補とも反グローバルでTPPには反対、そして為替政策に関してはトランプ氏が昨日も中国を名指しで批判しているように、両候補とも通貨安誘導には明確に反対するとともに、その度合いはトランプ氏のほうが明らかに強いということが出来るでしょう。
つまり、円相場に関してもクリントン氏が大統領になる場合には、緩やかに円高に動く可能性があり、トランプ氏が大統領になる場合には急激に円高に動く可能性があると考えることが可能です。
昨日の討論会前の円高の動きは、トランプ氏が善戦したらということに対する懸念による円買い、その後クリントン氏が優勢だったことから買い戻しが入ったものの、ドル上値も限定的と上記に沿った値動きであったと言えそうです。
為替政策は財務長官次第
しかし、過去の米国大統領の発言を振り返ると、為替政策について明確に方向性を示すような発言はほとんどありません。それは、米国でも為替政策は財務省の管轄であり、基本的に財務長官が為替に関しての発言を行うためです。これは日本における首相と財務相との関係を考えるとわかりやすいと思います。
過去の例をあげるならば、クリントン大統領の時に財務長官となったルービン財務長官(1995〜99年在任)の「強いドルは米国の国益」という発言は、またかというほど何度も聞かれた発言です。実際に円相場は1995年の79円台から1998年には147円台までドル高が進行しました。
つまり、今回の結論としてどちらの候補が大統領になっても円高傾向になる可能性は高いものの、もっとも重要なポイントは誰が財務長官に就任するのかという点にあるということになります。
オーダー/ポジション状況
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