ドル円見通し 株高継続によるリスク選好的ドル安感強まる(20/12/16)

ドル円は、15日夜ドル安感が強まる中で104円を割り込んでから下げ足が早まり、16日朝には103.57円まで下落して14日夜安値に迫っている。

ドル円見通し 株高継続によるリスク選好的ドル安感強まる(20/12/16)

株高継続によるリスク選好的ドル安感強まる

〇ドル円、16日朝に103.57まで下落、14日夜安値に迫る
〇NYダウ前日比337.76ドル高と反騰、ナスダック総合指数は155.02ポイント高
〇12月ニューヨーク州製造業景況指数4.9、11月の6.3から低下し市場予想の6.9も下回る
〇株高と同調したドル安進行感がFOMC後に一層強まれば3月暴落時の安値101.17を目指す可能性も
〇14日夜安値103.51割れからは11月6日安値103.17を目指す
〇104円超えからは15日午後高値104.14試し、高値更新からは10日夕高値104.57試しへ向かう

【概況】

ドル円は12月14日深夜に103.51円まで下落して11月19日未明安値103.65円以降の103.60円台を下値支持線とした持ち合いからいったん転落したが、早々に104円台まで切り返したために土俵で言えば徳俵に足が残った状況となっていたが15日夜はドル安感が強まる中で104円を割り込んでから下げ足が早まり、16日朝には103.57円まで下落して14日夜安値に迫っている。
12月15日はユーロドルが夜にいったん反落したりポンド/ドルが夕刻に1.33ドルを割り込む等ドル高場面もあったが、深夜以降はユーロやポンドが反発、豪ドルも昼にかけての下落から切り返してこの間の最高値に迫るなどドル安感が強まった。特に新興国通貨では南アランドやメキシコペソの対ドルでの上昇が目立ったが、ドル円もそれらと同調して下落に転じた印象だ。

【FOMC控えつつ、株高進行で為替市場のリスク選好的ドル安感は継続】

12月15日のNYダウは前日比337.76ドル高と反騰、ナスダック総合指数は155.02ポイント高と上昇して12月9日の取引時間中の史上最高値には届かなかったものの終値ベースでは5日ぶりに最高値を更新した。
米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が12月14日から米国で始まり、米モデルナのワクチンの承認も近いとされていることでの先行き好転期待、米与野党間の経済対策協議進展期待、12月15-16日の米FOMCでは金融緩和継続及び拡大の姿勢が示されるとの期待が株高を継続させているが、株高によるリスク選好感が3月のコロナショック第一波時の暴落から出直ってきた為替市場における投機通貨高基調を継続させている。足元の不況継続感も深刻ではあるがマーケットとしてはそれを折り込みつつワクチン普及期待とバイデン政権稼働からの景気対策期待を優先する展開といえる。また英国とEUのFTA協議が難航しているものの協議破綻には至っていないために最終的には合意に至るのではないかとの思惑でポンドも下支えられていることもドル安を助長している。

【米経済指標】

12月15日の米経済指標はまちまち。米ニューヨーク連銀が発表した12月のニューヨーク州製造業景況指数は4.9となり、11月の6.3から低下して市場予想の6.9も下回った。3か月連続の低下であり感染拡大の影響が見られるが、6か月先の見通しは36.3となり11月の33.9から上昇しており、ワクチン普及での回復期待を見せている。米連銀が発表した11月の鉱工業生産指数は前月比0.4%上昇して市場予想の0.3%上昇を上回ったが、10月の0.9%上昇からは鈍化し、前年同月比では5.5%低下で感染拡大前の水準を大きく下回った状況にとどまっている。一方で設備稼働率は73.3%となり10月から0.3%改善して市場予想の72.9%を上回った。
米労働省が発表した11月の輸入物価指数は前月比0.1%上昇して2か月振りに上昇となったが、市場予想の0.3%を下回った。

【ドル円は19日以降の103.60円台を支持線とした持ち合い下放れを再確認するか】

ドル円は11月19日未明安値で103.65円を付けた後、12月3日深夜安値106.67円で底割れを回避する一方、戻り高値は11月24日夜の104.75円と12月2日夜高値が同値にとどまり、12月10日夕刻高値は104.57円にとどまって持ち合い状態となっていた。12月14日夜に103.51円まで下げたところでいったん持ち合いから下放れしかけたものの早々に切り返したことで下放れからの下落加速には進まなかったのだが、戻りは短命で昨晩からの下げで底割れに余裕がなくなってきている。二度目の安値更新となれば持ち合い下放れの再確認となり、11月6日安値103.17円試し、さらに102円台、101円台を段階的に試して行く円高ドル安基調へ進みやすくなるのではないかと懸念される。
リスク選好的な株高と同調したドル安の進行感がFOMC後に一層強まるようだと3月暴落時の安値101.17円を目指す可能性も出てくるのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、14日夜安値で底を付けていったん戻しに入ったが、15日夜の反落により新たな底割れに余裕が乏しくなっているので15日午後高値でピークを付けて下落期に入った印象だ。14日夜安値とのダブル底形成に留まる可能性もあるが、底割れの場合は17日夜から21日夜にかけての間への下落を想定する。強気転換には104円台回復まで反騰する必要があると思われる。

60分足の一目均衡表では15日の反発時には先行スパンへ潜り込んだが突破できずに再び転落しており、遅行スパンも悪化に入っているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパンそろって好転するところからとする。
60分足の相対力指数は15日夜の下落で30ポイント台へ低下し、その後も50ポイント以下での推移となっているため20ポイント台序盤への一段安余地ありとし、強気回復には50ポイント超えから続伸するような反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月6日安値103.17円を下値支持線、103.80円から104.00円にかけてのゾーンを上値抵抗帯とする。
(2)103.80円以下での推移中は下向きとし、14日夜安値103.51円割れからは11月6日安値103.17円を目指すとみる。103.20円以下は反発注意とするが、103.80円以下での推移が続くうちは16日も安値試しへ向かいやすいとみる。またFOMC後に円高が加速する場合は102円台後半へ下値目途を引き下げる。
(3)103.80円から104円手前は戻り売りにつかまりやすいと見るが、104円超えからは15日午後高値104.14円試しとし、高値更新からは10日夕高値104.57円試しへ向かうとみる。下落基調から一転して反騰する場合は上げ足も早まることもあるので、FOMC後に反騰の場合はこのケースを想定する。

【当面の主な予定】

12/16(水)
休場 南ア
16:00 (英) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 0.0%、予想 0.1%)
16:00 (英) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 0.7%、予想 0.6%)
16:00 (英) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.4%)
16:00 (英) 11月 小売物価指数 前月比 (10月 0.0%、予想 0.2%)
16:00 (英) 11月 小売物価指数 前年同月比 (10月 1.3%、予想 1.3%)
16:00 (英) 11月 生産者物価コア指数 前年同月比 (10月 0.5%)
17:15 (仏) 12月 製造業PMI速報値 (11月 49.6、予想 50.1)
17:15 (仏) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 38.8、予想 40.0)
17:30 (独) 12月 製造業PMI速報値 (11月 57.8、予想 56.4)
17:30 (独) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 46.0、予想 44.0)

18:00 (欧) 12月 製造業PMI速報値 (11月 53.8、予想 53.0)
18:00 (欧) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 41.7、予想 41.9)
18:30 (英) 12月 製造業PMI速報値 (11月 55.6、予想 55.9)
18:30 (英) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 47.6、予想 50.5)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前月比 (9月 -2.9%)
19:00 (欧) 10月 建設支出 前年同月比 (9月 -2.5%)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調済 (9月 240億ユーロ)
19:00 (欧) 10月 貿易収支・季調前 (9月 248億ユーロ)

22:30 (米) 11月 小売売上高 前月比 (10月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 0.2%、予想 0.1%)
23:45 (米) 12月 製造業PMI速報値 (11月 56.7、予想 55.7)
23:45 (米) 12月 サービス業PMI速報値 (11月 58.4、予想 55.9)
24:00 (米) 10月 企業在庫 前月比 (9月 0.7%、予想 0.7%)
24:00 (米) 12月 NAHB住宅市場指数 (11月 90、予想 88)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、金利発表 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
28:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

12/17(木)
米食品医薬品局(FDA)会合(モデルナのワクチン審議)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合 初日
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 -12.2%、予想 12.8%)
06:45 (NZ) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 -12.4%、予想 -1.7%)
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 17.88万人、予想 4.00万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 7.0%、予想 7.0%)
17:30 (ス) スイス国立銀行 政策金利 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 -0.3%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.2%)

21:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 8950億ポンド、予想 8950億ポンド)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨

22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 85.3万件、予想 80.0万件
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 575.7万人)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数・年率換算件数 (10月 153.0万件、予想 153.0万件)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 前月比 (10月 4.9%、予想 0.0%)
22:30 (米) 11月 建設許可件数・年率換算件数 (10月 154.5万件、予想 155.0万件)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 前月比 (10月 0.0%、予想 0.4%)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 26.3、予想 18.8)
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.25%、予想 4.25%)

注:ポイント要約は編集部

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