トルコリラ円見通し 消費者物価高止まりで実質マイナス金利状態続く
〇トルコリラ円、10/5夕刻に13.67まで戻したが10/5夜13.54まで下落、その後13.60を挟んだ膠着状態
〇消費者物価上昇率が政策金利超え、実質的なマイナス金利状態が継続
〇生産者物価上昇率の上昇基調が懸念材料
〇13.55以上での推移中は上昇余地あり、13.65超えからは13.67試しとみる
〇13.55割れからは下向きとし、13.49割れからは13.40前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は10月2日の米大統領感染報道による円高を背景に13.47円まで下落したが、ドル円が急落一巡後には持ち直しに入ったことでトルコリラ円も下げ渋りとなり、10月5日には米大統領退院見込みとの報道で続伸して2日午後の下落を解消したことで5日夕刻には13.67円まで戻した。しかしその後もドル円の反騰基調は継続したが、ナゴルノ紛争による地政学的リスクの継続と、夕刻に発表されたトルコの消費者物価上昇率が高止まりとなる中、生産者物価上昇率が予想以上の伸びとなったことで戻り売りとなり5日夜には13.54円まで下落した。その後は13.60円を挟んだ膠着状態での推移となっている。
【トルコの消費者物価は高止まり、生産者物価の上昇が加速】
トルコ統計局が発表した9月のトルコ消費者物価は前月比0.97%となり8月の0.86%から上昇したが市場予想の1.3%は下回った。前年比は11.75%となり8月の11.77%からはわずかに低下して市場予想の12.15%を下回った。
9月の生産者物価は前月比2.65%となり8月の2.35%から上昇、市場予想の1.6%を上回った。前年比は14.3%となり8月の11.5%から上昇、市場予想の13.2%を上回った。
トルコ中銀はトルコリラが対ドルでの史上最安値を大幅に更新してきた中で4会合ぶりに政策金利の週間レポレートを引き上げた。市場予想が据え置きだったことに加えて利上げ幅が2%と大きかったことでサプライズ反応となりトルコリラは対ドル、対円でいったん上昇したが、その後はナゴルノ紛争ぼっ発による地政学的リスク急上昇により利上げ前の水準を割り込む急落が発生した。
9月のトルコ消費者物価上昇率が前年比で11.75%で高止まりしたことは市場予想の範囲ではあるものの政策金利の10.25%を超えており、実質的なマイナス金利状態がまだ継続していることを示す。また消費者物価上昇率は高止まりしているものの、生産者物価上昇率が消費者物価上昇率を上回り上昇基調が顕著になっていることが大きな懸念となる。2016年後半から生産者物価が急上昇し、後を追いかけて消費者物価も上昇した経緯があるが、現在の生産者物価上昇は当時を彷彿とさせる。
【ドル円の反騰が下支えだが、米大統領退院後の続報も気になるところ】
10月2日午後のトルコリラ円下落は米トランプ大統領がコロナ陽性と報じられたことでのリスク回避的円高によるものだったが、米大統領は日本時間6日7時半に退院した。退院情報が流れた5日は株高、為替市場ではリスク選好感回復によりユーロ高、ポンド高等が進む一方、株高債券安により米長期債利回りが上昇したためにドル円はドルストレートでのドル安に抗して円安反応を継続させた。10月6日午前には2日に急落する前の高値である9月30日高値にせまっているが、9月後半からは105円台中後半では上値の重い状況が続いてきたこと、米大統領の早すぎる退院に対する懸念が残ることもあるため、9月30日高値を超えて円安を加速させるのか再び上値抵抗感から軟調推移となるのか、試されるところになる。ドル円が高値更新から続伸に入ればトルコリラ円には押し上げ要因になるが、ドル円が一段高入りできないようだと逆にトルコリラ円の上値を抑える要因となってくる。
対ドルでのトルコリラはナゴルノ紛争ぼっ発からの下落により9月29日に7.85リラまで史上最安値を更新した。その後は紛争報道初期の売り一巡によりいったん持ち直したが、1日夕刻に7.61リラまで戻した後は7.70リラへ失速して7.75リラを挟んだ持ち合い推移につかまっている。ナゴルノ紛争は激化拡大の一途であり、トルコによる公然たるアゼルバイジャン支援姿勢により国際的な批判も強まっているのは今後のリラ売り再燃要因となりかねないところだが、ひとまず今後の展開を見定めようという動きで対ドルでの動きは落ち着いている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月29日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとしていたが、1日午後の戻り高値でサイクルトップを付けて弱気サイクル入りした。ボトム形成期は2日夜から6日深夜にかけての間と想定したが、5日夕刻への上昇で13.67円まで戻したため、2日午後安値と3日早朝安値をダブルボトムとして戻しに入っている印象だ。このため3日早朝安値を割り込まないうちは6日午後から8日午後にかけての間への上昇余地ありとするが、3日早朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして8日早朝から12日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では5日夜以降の横ばい推移により先行スパンのなかでの推移となっている。先行スパンを上抜くところからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンから転落するところからは下げ再開と仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は5日夕刻の上昇では70ポイントに届かずその後は50ポイントでの横ばいが続いている。45ポイント以上での推移中は60ポイント超えからの高値更新余地ありとするが、45ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月3日早朝安値13.49円を下値支持線、5日夕高値13.67円を上値抵抗線とする。
(2)13.55円以上での推移中は上昇余地ありとし、13.65円超えからは5日夕高値試しとし、高値更新からは13.80円手前を目指す上昇を想定する。13.75円以上は反落注意とするが、13.60円以上での推移なら7日も高値試しへ向かう可能性があると考える。
(3)13.55円割れからは下向きとし、3日早朝安値割れからは13.40円前後への下落を想定する。13.40円以下は反騰注意とするが、13.55円以下での推移なら7日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
10月8日
20:30 週次外貨準備高 10/2時点 (9/25時点 424.2億ドル)
10月12日
16:00 7月失業率 (6月 13.4%、予想 15.0%)
16:00 8月経常収支 (7月 -18.17億ドル、予想 15.00億ドル)
10月13日
16:00 8月鉱工業生産 前年比 (7月 4.4%)
16:00 8月小売売上高 前月比 (7月 9.5%)
16:00 8月小売売上高 前年比 (7月 11.9%)
注:ポイント要約は編集部
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