トルコリラ円見通し 米大統領感染やナゴルノ紛争を見ながらも13.50円台でしっかり(20/10/5)

トルコリラ円は、3日早朝には13.50円を割り込んだが2日午後安値割れには至らず、5日朝は13.50円台中盤へ若干戻しているところだ。

トルコリラ円見通し 米大統領感染やナゴルノ紛争を見ながらも13.50円台でしっかり(20/10/5)

米大統領感染問題やナゴルノ紛争を見ながらも13.50円台でしっかり

〇トルコリラ円、5日朝は13.50台中盤へ戻す
〇ナゴルノ紛争、周辺諸国を巻き込む大規模な軍事的政治的な混乱には至らず
〇本日発表の消費者物価上昇率、政策金利上回れば実質マイナス金利状態継続でリラ売り要因に
〇対ドルでのトルコリラ、ドル高リラ安から5日は7.72台へ戻し大きな動きにならず
〇13.60以下での推移中は一段安余地あり、13.47割れからは13.40、13.35前後への下落を想定
〇13.65超えからは上昇再開とし1日午後高値13.80試しを想定

【概況】

トルコリラ円は9月21日夜のトルコ中銀による予想外の大幅利上げ発表により13.60円台序盤の水準から13.93円まで急伸し、25日午後には14.01円まで高値を切り上げたが、27日から勃発したナゴルノ紛争報道により28日朝には13.28円まで急落して対円での史上最安値を更新した。その後は30日夜にかけて情勢推移を見守る動きで13.50円を中心に前後凡そ1円幅での持ち合いで推移し、紛争報道による初期的な売りがひとまず収まったとして30日深夜には13.60円を超えて持ち合い上放れに入り、10月1日午後には13.80円まで戻り高値を切り上げてきた。しかし紛争の長期化と全面戦争化への懸念が強まり2日朝には13.50円を割り込むところまで失速してきた。

10月2日は13.60円台序盤へやや戻し気味の推移だったが、午後に米大統領夫妻がコロナ感染と報道されたことをきっかけにドル円が105円割れへと急落したために13.63円から13.47円まで下落した。しかしドル円が一時的な急落後に持ち直しに入り、ドル/トルコリラも大きくは動かなかったことで下げ渋りに入った。3日早朝には13.50円を割り込んだが2日午後安値割れには至らず、5日朝は13.50円台中盤へ若干戻しているところだ。
アゼルバイジャンとアルメニアによるナゴルノ紛争は全面戦争化の様相も見られ、トルコによる直接的間接的な支援に対する国際的な批判も強まっているが、周辺諸国を巻き込む大規模な軍事的政治的な混乱には至らず、ロシアも積極的な参戦姿勢を示していないことから、相場材料としては様子見に入っている。

米大統領のコロナ感染については軽症で早期退院からホワイトハウスへ復帰するようなら却って大統領選挙に有利となるが、重症化・入院長期化となれば再選も難しくなり金融市場全般の混乱をもたらしかねない。その際に世界連鎖的な株安が発生するなら為替市場でのリスク回避的な動きも強まって新興国通貨売り圧力が増してトルコリラも売られかねず、またクロス円全般が円高へ走る可能性も考えられるため、トルコリラ円としても関心を外せない状況だ。
10月5日はトルコの9月消費者物価、生産者物価の発表もある。トルコ中銀による予想外の大幅利上げにより政策金利は10.25%へ引き上げられたが、消費者物価上昇率が政策金利を上回るなら実質マイナス金利状態の継続となってリラ売り要因となりかねないと注意する。

【ドル円は2日午後の急落幅をほぼ解消】

ドル円は2日午後に104.93円まで急落したが、その後は米大統領軽症の可能性から持ち直し、5日午前には105.50円を超えて2日午後の急落幅を概ね解消してきている。
9月24日以降は105.50円を挟んでの小幅なレンジ内の持ち合いを継続しつつ、高値を切り上げた後の安値も切り上げてきたのだが、9月30日高値105.80円で上昇がひとまず一巡となり、2日午後の急落で105.50円を中心とした持ち合いからはいったん転落した。さらに続落となれば9月21日に104円を割り込んだところからの反発基調も一巡して下落継続感が強まるところだったが、10月2日の日足は陰線ながらも長い下ヒゲとなったため、2日午後下落分を解消してもとの持ち合いレンジに復帰し、さらに2日午後安値を押し目として上昇基調を継続する可能性も出てきた。しかし米大統領の容体次第では2日午後の急落レベルを超える円高となりかねない危うさを抱えている。トルコリラ円としては対ドルでのトルコリラの動きがやや鈍っている中でドル円の動きが重要となってきていると注意したい。

【トルコリラは対ドルでの下落一服】

対ドルでのトルコリラは中銀利上げによる上昇で25日午後に7.50リラまで戻していたところからナゴルノ紛争ぼっ発報道により急落に転じて9月29日深夜には7.85リラまで史上最安値を更新した。その後は紛争ぼっ発報道による初期的な売りを消化して揺れ返しの下落となり、10月1日午後には7.61リラまで持ち直していた。しかし中銀利上げによる上昇時の高値には届かず1日夜以降は7.70リラ台での推移にとどまっている。

米大統領のコロナ感染報道では若干ドル高リラ安反応が見られ、3日早朝には7.78リラまでドル高リラ安がやや進んだものの週明けの5日は7.72リラ台へ戻しており、大きな動きにはなっていない。米大統領が軽症から早期退院となればナゴルノ紛争を見ながらではあるがドル高リラ安の一服感がやや勝る展開に入りやすいと思われるが、米大統領容体悪化なら新興国通貨でのドル買い戻しでリラ売り再燃となりかねないところだ。9月29日夜安値を割り込んで史上最安値更新へ入ればリラ安がさらに加速し、中銀利上げによる25日高値7.50リラを超えればリラ高ドル安へ流れやすくなるが、それまでは方向性が定まらない状況と思われる。

【ナゴルノ紛争は9日目に入る】

9月27日に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアによる軍事衝突=ナゴルノ紛争は戦闘が激化しつつ9日目に入った。
アゼルバイジャン外務省によれば10月4日には同国第2の都市ギャンジャにアルメニア側から攻撃があったという。またアゼルバイジャンはイスラエル製の無人自爆ドローンを使ってアルメニアへの攻撃を行っているという報道もある。
アゼルバイジャンとは兄弟民族として全面支援姿勢にあるトルコのエルドアン大統領は10月2日の演説で「アゼルバイジャン軍が前線で成功を収めている」「アルメニアが係争地から撤退するまで闘争は続く」と述べた。
米仏ロは停戦を呼び掛け、アルメニアは停戦への考慮姿勢を示しているがアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ地帯をアルメニアの実効支配から解放するまで応じない姿勢を示している。

旧ソ連崩壊後、ロシアから離脱したエリアでは紛争が絶えなかった時期もある。ナゴルノ紛争はNATO加盟国のトルコが全面支援の姿勢を隠さない状況にある中で、アルメニアとは防衛協定もあるロシアが明確な軍事支援なり部隊派遣を行っていないため、局地的紛争の範囲にとどまっている。トルコが支援するアゼルバイジャンが優勢に戦局を進めるうちはリスク回避的なリラ安反応も限定的かもしれない。しかしこの紛争以外でもトルコはフランスとの対立が深刻化するなど、中東の混乱要因となっていることが問題だ。
EUは10月1日と2日の首脳会議において、東地中海のガス田権益を巡るギリシャ・キプロスとトルコとの対立についてはキプロス沖で資源開発を強行するトルコを「国際法違反」と批判し、対話による解決がなされなければ制裁措置も辞さないとの方針で一致したと報じられた。東地中海問題でEUが制裁に入るようだとトルコの反発も強まりつつリスク回避的リラ売りを助長しかねないと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月30日夜の上昇で強気転換目安とした13.60円を超えたために1日朝時点では29日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとし、トップ形成期を30日午後から10月2日午後にかけての間として13.50円割れからは弱気サイクル入りとしていたが、1日午後の戻り高値からの反落により2日午前時点では1日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして2日夜から6日深夜にかけての間への下落を想定した。
2日午後に下落した後は下げ渋っているのでまだ下落余地が残るが、13.60円以上での推移が続く場合は強気転換注意として1日午後高値試しを想定する。

60分足の一目均衡表では2日午後の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。その後の下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯中だが、先行スパン転落状態が続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、両スパンそろって好転するところからは1日午後高値試しへの上昇を想定する。

60分足の相対力指数は60ポイント手前を抵抗、40ポイント割れは買い戻されての持ち合い状態にあるので、上昇再開には60ポイントを超える必要があると思われる。次の40ポイント割れからは一段安へ進む可能性もあるところと注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月2日午後安値13.47円を下値支持線、13.60円を上値抵抗線とする。
(2)13.60円以下での推移中は一段安余地ありとし、13.47円割れからは13.40円、さらに13.35円前後への下落を想定する。13.30円台後半ではいったん買い戻しも入りやすいとみるが13.60円以下での推移なら6日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.60円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、13.65円超えからは上昇再開として1日午後高値試しを想定する。13.70円以上は反落注意だが、13.65円を超えた後も13.60円以上での推移なら6日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月5日
 16:00 9月消費者物価上昇率 前月比 (8月 0.86%、予想 1.5%)
 16:00 9月消費者物価上昇率 前年比 (8月 11.77%、予想 12.3%)
 16:00 9月生産者物価上昇率 前月比 (8月 2.35%、予想 1.60%)
 16:00 9月生産者物価上昇率 前年比 (8月 11.53%、予想 13.20%)
10月8日
 20:30 週次外貨準備高 10/2時点 (9/25時点 424.2億ドル) 
10月12日
 16:00 7月失業率 (6月 13.4%、予想 15.0%)
 16:00 8月経常収支 (7月 -18.17億ドル、予想 15.00億ドル)
10月13日
 16:00 8月鉱工業生産 前年比 (7月 4.4%)
 16:00 8月小売売上高 前月比 (7月 9.5%)
 16:00 8月小売売上高 前年比 (7月 11.9%)

注:ポイント要約は編集部

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