ナゴルノ紛争勃発による初期的なリラ売り一巡で持ち直す
〇トルコリラ円、9/30深夜の上昇で13.60超え、1日未明に13.69まで戻り高値を切り上げる
〇対ドルでは29日深夜に史上最安値更新するも上げ渋り1日朝に7.67リラまで持ち直す
〇トルコの8月貿易収支は62億8000万ドルの赤字となり2018年5月以来最大に
〇13.50以上で推移中は上昇余地ありとし、高値更新からは13.70台後半への上昇を想定
〇13.50割れから下げ再開と仮定し13.40前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は9月30日深夜の上昇で13.60円を超えて1日未明には13.69円まで戻り高値を切り上げてきた。その後は新たな高値更新へ進めずにいるが13.60円前後を下値支持線としてしっかりしている。
9月27日に勃発したナゴルノ紛争(アゼルバイジャンとアルメニアの大規模軍事衝突)により28日朝に史上最安値更新へ急落した。9月24日にトルコ中銀が予想外の大幅利上げを決断したことで24日夜には13.60円前後の水準から13.93円へ急騰し、25日夕刻には14.01円まで一段高していたのだが、紛争ぼっ発報道により中銀利上げによる上昇分を一挙に吐き出して急落商状に見舞われた。
28日朝安値で13.28円まで下落、ベンダーによっては13.44円まで急落となり、第一報に対する急落反応が一巡していったん13.72円まで戻したものの28日夜に13.43円へ下落、以降は13.40円を割り込まないものの13.50円には届かない範囲での持ち合いで様子見の展開となっていた。
紛争は30日まで4日間続いており落ち着く気配はないが、紛争や軍事衝突報道における初期的な売りが一巡した状況で市場としてはやや落ち着き始めてやや過剰に売られたところを買い戻されている印象だ。
【対ドルのでトルコリラは29日深夜の最安値からは反発】
対ドルでのトルコリラは中銀利上げによる上昇で25日午後に7.50リラまで戻したが、紛争ぼっ発報道から急落となり29日深夜には7.85リラまで史上最安値を更新した。しかしその後は上げ渋りとなり、報道当初のリラ売り一巡から戻しに入り、1日朝には7.67リラまで持ち直している。紛争報道からの急落幅に対して凡そ半値を戻したところにあり、水準としてはトルコ中銀が利上げする前の水準へ回帰したという印象だ。
アゼルバイジャンは兄弟民族としてトルコと友好関係にあり、パイプライン建設等による経済協力を進めてきた。アルメニアに対してはオスマントルコ帝国時代のアルメニア人大虐殺事件により険悪な状況が続いてきた。今回の紛争ぼっ発に際しても、衝突前の段階からトルコがトルコ支持勢力のシリア人部隊や武器等をアゼルバイジャンに投入していたとの報道もあり、エルドアン大統領によるアゼルバイジャン支援姿勢はかなり強固のようだ。
一方でロシアはアルメニアへの影響力を持ち、アゼルバイジャンとの停戦を要請しているといわれているが、リビア内戦を巡ってはトルコと対立関係にあることから、アゼルバイジャン・トルコ連合とアルメニア・ロシア連合による衝突継続という図式へ進む可能性も懸念される。
今のところアゼルバイジャンとアルメニア双方と国境を接するイランは冷静な対応にとどまっている。ここでイランが動けば欧米のイランへの圧力が増すことになるためだろう。またイスラエルがアゼルバイジャンに武器輸出を行ってきたという報道もある。中東シリア情勢、リビア情勢等も絡んで混沌とした状況に陥る可能性も懸念される。暫くは推移を見守り、地政学的リスクやトルコ・ロシアの対立深刻化へ向かうのかどうかに注目したい。
【トルコの8月貿易赤字は拡大、輸出低迷】
トルコの8月貿易収支は62億8000万ドルの赤字となった。赤字額は2018年5月以来最大となった。2018年当時は大幅な貿易赤字が経常収支赤字を拡大させ通貨危機的なトルコリラ安を発生させたが、コロナ不況により7月の28億2000万ドルから赤字額が倍増した状況だ。
8月の輸出の伸び率は前年比マイナス9.1%と悪化した一方で輸入は15.3%増と拡大した。輸出の伸びはコロナショックにおり3月にマイナス20.8%、4月にマイナス41.5%、5月にマイナス30.8%となった後は6月のマイナス6.4%、7月のマイナス0.8%と落ち着いていたが8月は急増した印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月24日の中銀利上げによる反騰とその後の一段安により、24日夜安値を直近のサイクルボトム、25日夕高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとしてボトム形成期を29日夜から10月1日夜にかけての間と想定した。
9月28日夜以降は13.50円を挟んだボックス型の持ち合いでやや小康状態だったが、30日夜の上昇で13.60円を超えてきたため、持ち合い中の安値である29日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は30日午後から10月2日午後にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、13.50円以上での推移中は高値更新余地ありとし、13.50円割れからは弱気サイクル入りと仮定して2日夜から6日深夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では30日深夜の上昇で先行スパンを上抜いた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は30日深夜への上昇では70ポイントに届いていないが50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとし、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.50円を下値支持線、1日未明高値13.69円を上値抵抗線とする。
(2)13.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、高値更新からは13.70円台後半への上昇を想定する。13.70円以上は反落注意とするが、13.60円以上での推移なら2日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)13.50円割れからは下げ再開と仮定して13.40円前後への下落を想定する。13.40円前後はもう一度買われやすい水準とみるが、13.40円割れから続落に入る場合は13.30円試しへ下値目途を引き下げる。
【当面の主な経済指標等の予定】
10月1日
16:00 9月イスタンブール製造業PMI (8月 54.3、予想 54.7)
20:00 トルコ中銀 MPC議事要旨公開
20:30 週次外貨準備高 9/25時点 (9/18 452.81億ドル)
10月5日
16:00 9月消費者物価上昇率 前月比 (8月 0.86%、予想 0.70%)
16:00 9月消費者物価上昇率 前年比 (8月 11.77%、予想 11.40%)
16:00 9月生産者物価上昇率 前月比 (8月 2.35%、予想 1.00%)
16:00 9月生産者物価上昇率 前年比 (8月 11.53%、予想 12.50%)
10月8日
20:30 週次外貨準備高 10/2時点
10月12日
16:00 7月失業率 (6月 13.4%、予想 15.0%)
注:ポイント要約は編集部
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