トルコリラ円見通し 連日の史上最安値更新(20/9/23)

トルコリラ円(BID)は9月21日夜に13.63円の安値を付けて史上最安値を更新、さらに22日夕刻には13.61円、23日早朝には13.60円と最安値更新を続けている。

トルコリラ円見通し 連日の史上最安値更新(20/9/23)

連日の史上最安値更新

〇トルコリラ円、21日夜13.63、22日夕刻13.61、23日早朝13.60と最安値更新続ける
〇9/24トルコ中銀の金融政策決定会合が迫る中、為替市場は利上げ催促的なトルコリラ売りに
〇対ドル、23日の安値更新中を含め5日連続での史上最安値更新、3週連続の下落
〇対ユーロ、22日に9.00を付けて史上最安値更新、4週連続の下落
〇13.73以下で推移中は一段安余地あり、23日早朝安値13.60割れからは13.50前後への下落想定
〇13.73超えからは13.80台序盤への上昇を想定、13.80以上は反落注意

【概況】

トルコリラ円(BID)は9月21日夜に13.63円の安値を付けて史上最安値を更新、さらに22日夕刻には13.61円、23日早朝には13.60円と最安値更新を続けている。
日足では9月11日から22日まで8営業日連続の下落であり、9月14日に8月10日安値を割り込んで史上最安値更新に入ってから7日連続での最安値更新となった。
日足の連続陰線は9月11日から21日までの7日連続でストップし、22日は安値を更新して前日比でもマイナスながら小陽線となったが勢いに欠ける姿となっている。

連日の史上最安値更新の背景はトルコの外貨準備不足と実質マイナス金利状態の長期化、世界的な感染拡大継続による観光収入の激減、東地中海ガス田を巡るギリシャやフランスとの対立による地政学的リスクの拡大等であるが、より直接的には9月11日に米格付け大手のムーディーズがトルコの格付けを「B1」から「B2」に格下げし、格付け見通しを「ネガティブ」のままとしたことによる。格下げの理由は「国際収支の危機が財政的余力を損なう可能性」「信用リスクが増す中で有効な手だてを講じることができておらずその姿勢もみられない」こととされたが、9月24日にトルコ中銀の金融政策決定会合が迫る中で為替市場も利上げ催促的なトルコリラ売りへ向かっている。

【円高圧力は一服、ドル円は7月31日安値を割り込んで103円台まで下落してからやや戻す】

ドル円は9月21日夕刻に103.998円まで下落して7月31日安値104.182円も割り込んだ。103円台はコロナショックによる3月暴落直後の3月12日以来6か月振りである。7月31日への下落時も7月23日から7月30日まで6日間連続の日足陰線で下落したところから大きく反騰しており、104円割れとなった21日夕安値からは戻しているので、さらにきっかけをつかめば7月31日安値からの反騰時のように今回も反騰入りする可能性もあると思われる。しかし、ドル円の下落は9月3日からのNYダウ大幅下落と同調した動きであり、ドル円が反騰するためには株高再開、為替市場でのリスク選好感の回復が必須と思われる。

NYダウは3月のコロナショック前の史上最高値に迫るところまで上昇したところでさらに一段高へ進む推進力に欠ける中で9月17日未明のFOMCも浮上のきっかけにならず、感染拡大や米国の追加経済対策がまとまらないこと、米中対立、英国とEUの離脱協定やFTAを巡る対立の深刻化等、売り材料に反応しやすい状況に陥っている。NYダウの9月序盤からの下落角度、規模は2月後半から3月への暴落時にも近い動きであり、ドル円も9月21日安値からの反発が続かずに安値をさらに更新するようだと、3月9日安値101.174円を目指す円高へ進み、トルコリラ円への売り圧力もさらに増す可能性がある。

【トルコリラは対ドルで連日の最安値更新】

対ドルでのトルコリラは9月21日に7.6358リラへ史上最安値を更新し、22日も7.6665リラまで安値を更新、23日午前も安値更新が続いている。9月10日に7.51リラで最安値を更新してから9月16日まで新たな安値更新へ進めずにいたものの9月17日から4日連続、23日の安値更新中を含めれば5日連続での史上最安値更新となっている。また終値ベースでは9月16日から5日連続の最安値更新である。
週間ベースでは8月30日の週に1.37%安、9月6日の週に0.53%安、9月13日の週に1.12%安となり、先週までで3週連続の下落だが、今週も既に1.5%安となっている。

懸念されるのは、2018年8月のトルコ通貨危機時の様に、週間の高値から安値まで凡そ1.80リラ規模の急落となる週足大陰線を出現させるようなクライマックス的な下落が発生しかねないという点だ。今のところはそこまでの加速性が見られないものの、2018年8月の危機的な暴落時も8月第1週までは今の状況に近いような下落速度で進んでから一挙にクライマックス的な下落に向かっている。
対ユーロでのトルコリラは9月22日に9.00リラを付けて史上最安値を更新した。9月21日週間ベースでは8月23日の週に0.87%安、8月30日の週に0.81%安、9月6日の週に0.59%安、9月13日の週に1.05%安と4週連続の下落となり、今週も既に0.32%安となっている。

【9月24日のトルコ中銀金融政策に注目】

9月24日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。2019年7月にエルドアン大統領は当時のチェティン中銀総裁を更迭して現在のウイサル総裁に挿げ替えた。大統領は物価と金利の一桁を目指すとして、利下げに反対姿勢の総裁から大統領の政策を忠実に実行する現総裁とした。
ウイサル総裁は2019年7月就任早々に政策金利(週間レポレート)を24.0%から19.75%へ引き下げ、以来9会合連続で利下げを行い2020年5月には8.25%とした。しかしトルコの消費者物価上昇率は2019年11月に10%を超えてから一桁には落ちずに推移してきたために政策金利が物価上昇率を下回る実質マイナス金利となり、これ以上の利下げが難しい状況が続いてきた。8月の消費者物価上昇率は前年比11.77%と高水準にとどまっており、実質マイナス金利状態の長期化問題がトルコリラ売りを加速させ、海外投資家のトルコリラ放れとトルコ国内での弱い自国通貨からドルやユーロ等のハードカレンシーへの換金が収まらなくなってきている。中銀及び政権のこれらの問題に対する無策を指摘して9月11日にムーディーズが格下げする事態に陥ったといえる。

9月24日の金融政策会合では政策金利は再び据え置かれるのではないかと予想されている。予想通りの据え置きなら利上げ催促でのリラ売りが一段と進む可能性もある。また政策金利を据え置きつつオーバーナイトの実質調達金利を大幅に引き上げてリラ供給を絞るようなことで市場を混乱させる可能性もある。利上げ決断ならサプライズとしてリラ反騰のきっかけにもなりえる。いずれにせよ波乱必至と思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月10日夜高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしてきたが、17日早朝への下落と反発により17日朝時点では9月17日朝安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて9月17日朝安値を直近のサイクルボトムとし、17日夜に一段安したために18日午前時点では底割れによる弱気サイクル入りとして22日朝から24日朝にかけての間への下落を想定した。また17日夜安値からの下落基調が続く場合は直近のサイクルボトムを17日夜安値へ改め、17日夜安値割れから新たな弱気サイクル入りとなる可能性もあるとした。
9月18日夜、21日夜、22日から23日早朝へと続落しているため、17日夜安値を直近のサイクルボトムとし、今回のボトム形成期を22日夜から24日夜にかけての間と想定する。強気転換は22日早朝の戻り高値13.73円を超えるところからとするが、すでに前回ボトムから3日を経過しているので22日早朝高値を上抜くところからはいったん強気サイクル入りとして23日夕刻から25日夕刻にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では9月11日夜の下落から遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落したが、先行スパンからの転落は続いているものの下落角度が鈍ったために遅行スパンは実線と交錯している。先行スパンを突破できないうちは一段安懸念が残るものの、下げ一服からの反騰入りの可能性もあるところとみて遅行スパン好転中は高値試し優先とし、最安値更新からは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は21日夜からの安値更新に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるため、40ポイント以上での推移中は上昇余地ありとみるが、60ポイント台では戻り売りも出やすいとみる。40ポイント割れからは下げ再開として20ポイント台前半への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月23日朝安値13.60円を下値支持線、22日早朝高値13.73円を上値抵抗線とする。
(2)13.73円以下での推移中は一段安余地ありとし、23日早朝安値割れからは13.50円前後への下落を想定する。13.50円以下は反騰注意とするが、13.70円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.73円超えからは13.80円台序盤への上昇を想定するが、13.80円以上は反落注意とし、その後に13.70円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

9月24日
 16:00 9月製造業景況感 (8月 106.2)
 16:00 9月設備稼働率 (8月 73.3)
 20:00 トルコ中銀 政策金利発表 (現行 8.25%)
 20:30 週次外貨準備高 9/18時点
9月25日
 17:00 8月観光客数 前年比 (7月 -85.9%)   
9月29日
 16:00 9月経済信頼感指数 (8月 85.9)
9月30日
 16:00 8月貿易収支 (7月 -26.9億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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