トルコリラ円見通し 対ドルで最安値をさらに更新、対円及び対ユーロでも最安値に迫る
〇トルコリラ円、9/7昼に14.29まで戻したものの14.30台回復には至らず、9/8早朝には14.21まで軟化
〇対ドルでは9/7にさらに最安値更新、対ユーロは9/7に8.809で終値ベースの最安値更新
〇東地中海でのガス田開発を巡りギリシャ・EUと対立、地政学的リスク増大としてリラ売り材料となる
〇14.30以下での推移中は一段安警戒、14.19割れからは14.10前後への下落を想定
〇14.30超えから続伸の場合は14.36試しへ向かうとみるが、14.35以上は反落警戒
【概況】
トルコリラ円は8月19日朝安値14.21円から8月21日高値14.65円まで戻した後は概ね14.30円を下値支持線とした持ち合いで推移してきたが、9月3日朝の一時的下落で14.25円の安値を付けて14.30円台での持ち合いから転落し、9月4日夜に一時的な上昇で14.36円まで戻したものの早々に失速して9月5日早朝には14.19円まで下落して8月19日朝安値を割り込んだ。
9月7日は米国市場休場等により小動きにとどまり、7日昼に14.29円まで戻したものの14.30円台回復には至らずに8日早朝には14.21円まで軟化してきている。
トルコリラ円は8月10日につけた史上最安値14.07円割れには至っていないものの、対ドルでは9月7日も史上最安値を更新しており、対ユーロでも最安値に近い水準にあり対ドル及び対ユーロ、対円での先安感が強まっている。
【トルコリラは9月7日に対ドルでの史上最安値をさらに更新】
トルコリラは対ドルにおいて9月3日夜に7.45リラを付けて8月26日につけた7.42リラの史上最安値を更新し、9月4日も7.465リラまで最安値を更新したが、週明けの7日も7.467リラへと安値をさらに更新している。終値ベースでも7.45リラ台で最安値更新となっている。6月中旬から7月後半までにかけての間はトルコ通貨当局による規制や介入を背景に6.85リラを中心とした小動きにとどまっていたが、外貨準備高不足による介入力衰退とリラ暴落不安による内外投資家によるリラからユーロやドル及びゴールドへの換金が進む中で抑制が効かなくなり7月末から急落商状に入った。8月26日に当時の史上最安値を更新した後に3日間の反騰も入ったが、8月31日からの下落再開により8月中のやや乱高下気味の安値圏波乱レンジから下抜けて下げが再び加速し始めている。
対ユーロでのトルコリラは9月1日に8.84リラまで史上最安値を更新した後は新たな高値更新へ進めずにいるが、終値ベースでは9月3日に8.808リラをつけて9月1日の8.77リラを割り込んで史上最安値を更新した。9月7日も新たな取引中最安値更新には至らなかったものの終値は8.809リラとして終値ベースの最安値を更新している。
トルコリラの下落は2019年8月の通貨危機的な暴落時を超えるスケールで進行している。エルドアン大統領による「インフレ率と政策金利の一桁」が進められる中で政策金利(週間レポレート)は8.25%まで低下して一桁に入ったが、インフレ率は消費者物価が前年比10%を上回る実質マイナス金利に陥った状況が続いているにも関わらずトルコ中銀が利上げに踏み切らないことがトルコリラ売りを加速させてきた。これに対してトルコ中銀や通貨当局は介入や規制強化によりリラ防衛に動いてきたが、外貨準備高の減少により通貨防衛力が弱まっているとして欧米投資家によるリラ売りがさらに加速している。コロナ不況の長期化がトルコの重要産業である観光業に深刻な打撃を与えていることも影響している。
また、ここにきて東地中海でのガス田開発を巡るギリシャ及びEUとの対立が地政学的リスク増大としてリラ売り材料になってきている。
トルコは海軍を随行させて海底探査を強行し、権益を主張するギリシャも海軍艦艇を派遣して緊張が高まってきた。トルコは9月6日に東地中海のキプロス島北部(北キプロスとしてトルコのみが独立を承認している)で毎年恒例の軍事演習を実施した。エルドアン大統領は9月5日に「政治と外交の言葉を理解するか戦場で苦い経験をして理解するか、二つに一つだ」とギリシャに警告的な発言を行い緊張感が高まった。
EUはトルコに対し、東地中海のエネルギー資源を巡り対立するギリシャやキプロスと合意を結ぶならEUとしてのインセンティブを与えるとしつつ、合意に至らなかった場合は制裁をする姿勢を示している。9月24−25日に開催されるEU首脳会議で方針が示されるとの報道もある。EUのミシェル大統領とトルコのエルドアン大統領は9月6日に電話会談をおこなっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月3日朝に14.30円台から転落し、その後も安値更新が続いているが、先週末の9月5日未明にいったん14.30円台へ上昇してから安値を更新し、その後も安値圏にとどまっているため、9月5日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は9月4日夕刻安値を基準として9日夕から11日夕にかけての間とし、強気転換は9月5日未明高値超えからとする。
60分足の一目均衡表では9月7日のジリ安により遅行スパンが悪化している。また9月5日未明の反騰時に一時的に先行スパンを上抜いたものの再び転落しており、8日朝時点では両スパンそろっての悪化となっている。ただし、14.20円台での揉み合いという様相もあるので遅行スパンは好転しやすい位置にある。このため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜けないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開とする。強気転換はスパン突破からとしその際は遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は50ポイントを挟んでの推移で、8日早朝に40ポイントを割り込んだところからは戻しているが60ポイントには届かずにいる。60ポイントを超えれば上昇に勢いも付きやすいとみるが、届かないうちは一段安余地ありとし、45ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月5日早朝安値14.19円を下値支持線、14.30円を上値抵抗線とする。
(2)14.30円以下での推移中は一段安警戒とし、14.19円割れからは14.10円前後への下落を想定する。14.10円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、14.19円を割り込んだ後も14.20円以下での推移なら9日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)14.30円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、14.30円超えから続伸の場合は9月5日未明高値14.36円試しへ向かうとみる。ただし、14.35円以上は反落警戒とし、その後に14.30円を割り込むところからは下げ再開と考える。当面は安値試しを続けやすい状況が続くとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
9月10日
16:00 6月失業率 (5月 12.9%、予想 13.4%)
20:30 週次外貨準備高 9/4時点 (8/28時点 415.9億ドル)
9月11日
16:00 7月経常収支 (6月 −29.3億ドル、予想 20.00億ドル)
9月14日
16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%、予想 1.8%)
16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%、予想 5.6%)
16:00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%、予想 1.0%)
9月17日
20:30 週次外貨準備高 9/11時点
9月21日
23:30 8月中央政府債務残高 (7月 1721億ドル)
9月22日
16:00 9月消費者信頼感指数 (8月 59.6)
9月23日
19:30 8月自動車生産台数 前年比 (7月 -11.8%)
9月24日
16:00 9月製造業景況感 (8月 106.2)
16:00 9月設備稼働率 (8月 73.3)
20:00 トルコ中銀 政策金利発表 (現行 8.25%)
20:30 週次外貨準備高 9/18時点
9月25日
17:00 8月観光客数 前年比 (7月 -85.9%)
注:ポイント要約は編集部
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