トルコリラ円見通し トルコリラは対ドル及び対円で史上最安値を更新、対ユーロで大幅続落(20/8/7)

トルコリラ円は8月6日夜に14.32円の安値を付けて5月7日に付けた14.61円を割り込んで対円での史上最安値を更新した。

トルコリラ円見通し トルコリラは対ドル及び対円で史上最安値を更新、対ユーロで大幅続落(20/8/7)

トルコリラは対ドル及び対円で史上最安値を更新、対ユーロで大幅続落

〇トルコリラ円、8/6夜に5/7の14.61を割り込み史上最安値を更新
〇トルコリラ対ドル、対ユーロともに史上最安値を更新
〇現金化の動きも加速、イスタンブール100株価指数大幅下落、海外勢の株売りによるリラ確保の動きか
〇政権による強権的な市場介入の可能性を警戒
〇14.65以下での推移中は一段安警戒、14.32割れからは14.00前後への下落を想定
〇14.65超えから反騰入りで14.80前後への上昇を想定、14.80以上は反落警戒とする

【概況】

トルコリラ円は8月6日夜に14.32円の安値を付けて5月7日に付けた14.61円を割り込んで対円での史上最安値を更新した。
トルコリラ円の急落は7月に入ってからの対ユーロでのトルコリラ急落開始をきっかけとし、対ドルでも6.85リラを中心とした小動きにとどまっていたところから膠着状態を脱して急落し始めたことが背景だ。

【対ドル、対ユーロでのトルコリラ大幅下落続く】

トルコリラは8月6日に対ドルで7.30リラを付けて5月7日に付けた7.27リラを割り込み史上最安値を更新した。5月7日への下落はコロナショックによる新興国通貨売りを背景としたものだったが、新興国通貨売りが一服する中で6月3日までは反発していた。6月中旬に6.8リラを割り込むところまで再び下落した後は、トルコ通貨当局の規制や介入等により6.85リラを中心値として上下の動きがわずかに留まるような管理状態に置かれていたが、徐々に規制力が弱まり、7月3日にトルコの消費者物価が予想を上回った時には実質マイナス金利が拡大しているとして6.98リラまでフラッシュクラッシュ的な急落が発生した。その時は早々に元の水準へ持ち直して再び6.85リラ中心の膠着状態が続いていたのだが、7月24日から急落商状が再開して7月30日まで5日間の大幅続落となり、8月4日までの3日間をいったん戻したものの8月5日に前日比2.13%安、6日は2.76%安の大幅下落となった。

対ドルでのトルコリラ急落を助長したのは対ユーロでのトルコリラ急落だった。対ユーロでのトルコリラは対ドル程には規制をかけられず、2019年10月からのユーロ高リラ安基調が継続してきたが、先週の上昇で2018年8月のトルコ通貨危機時につけた安値を割り込んで史上最安値を更新したが、今週もさらに大幅続落している。7月17日から7月30日まで10日間の続落となり、7月31日から8月4日までの3日間は下げ一服となっていたが、8月5日に2.65%安、6日も2.87%安と急落となり史上最安値を更新した。

欧米勢にとってはトルコの外貨準備高がトルコリラの防衛には不足しており、既に対ユーロでは制御できない状況に陥り、対ドルでの介入も限界に来ているとの認識が強まっている。トルコ中銀が昨年から9会合連続で実施してきた政策金利の引き下げはストップしているが、消費者物価が二桁の上昇率を続ける中で実質的なマイナス金利状態が拡大していることも影響している。またコロナショックによる不況の長期化、観光国であるトルコにとっての海外からの観光収入の激減等がトルコ財政を圧迫し続けて早々には回復できないだろうという懸念もトルコリラ売りを加速させている。

トルコリラの供給・流動性が乏しくなる中でトルコ株を売っての現金化の動きも加速しており、イスタンブール100株価指数は8月6日に前日比5.26%安と大幅下落した。7月28日に前日比3.59%安と急落してから4日間続落し、8月5日は下げ一服だったものの一段安に陥っているのは、海外勢の株売りによるリラ確保の動きともいえる。
トルコのエルドアン政権は昨年8月のトルコ通貨危機に際してもかなり乱暴な短期レートの急激な引き上げを行ったり、金融機関の取引規制を強化するなどで市場を抑圧した経緯もあるので、今回も新たな通貨危機情勢として介入、規制等の動きを採る可能性も警戒される。しかしそうした乱暴な金融政策は海外勢のトルコへの投資意欲を大幅に後退させることにもなりかねない。当面は新たなトルコ通貨危機の発生リスクを踏まえて、乱高下に注意すべきところか。

【ドル円も軟調】

トルコリラ円は対ドルでのトルコリラの動きが膠着しているところではドル円と同調する動きがメインとなるが、現状は対ドル及び対ユーロでトルコリラが暴落的な下げに見舞われているために、対ドルでの動きを主とし、ドル円の動きが従となるような図式と思われる。もちろん、ドル円の動向が重要であることには変わらず、7月31日の安値から8月3日深夜高値までいったん戻してからジリ安基調に入っているドル円が、7日夜の米雇用統計を通過しつつドル高円安へ向かうのか、メジャー通貨等におけるドル全面安のなかで先安感が強まるのか注目されるところだ。仮にドル円が7月31日安値を割り込む下落に入る場合は下落基調も長期化することか予想され、トルコリラ円においてはドル円の下落と共に対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ安が重なってくることも警戒したい。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月5日未明高値からの反落により5日午前時点では5日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期を8月5日の日中から7日朝にかけての間と想定した。8月6日夜に一だにゃスした後は14.50円を挟んで下げ渋っているので、8月6日夜安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて6日夜安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は8日未明から12日早朝にかけての間と想定するが、早々に底割れから新たな弱気サイクルに入る可能性を警戒し、6日夜安値を割り込む場合は11日朝から13日朝にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月5日夕刻の下落で先行スパンから転落し、遅行スパンも悪化したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いている。新たな安値更新を回避して進めば遅行スパンは好転してくるが、先行スパンを上抜けないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開に入りやすいと考える。

60分足の相対力指数は6日夜の下落時に20ポイント割れまで急落したがその後は戻している。30ポイントを再び割り込まないうちは上昇余地ありとみるが、まだ強気逆行等は見られないので30ポイント割れからは下げ再開と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月6日夜安値14.32円を下値支持線、14.65円を上値抵抗線とする。
(2)14.65円以下での推移中は一段安警戒とし、14.32円割れからは14.00円前後への下落を想定する。14.10円以下は反騰注意とするが14.50円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)14.65円超えからはいったん反騰入りとみて14.80円前後への上昇を想定する。14.80円以上は反落警戒とし、その後に14.50円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月7日
20.30 外貨準備高、7月31日時点 (前週 509.3億ドル)
8月10日
16:00 5月失業率 (4月 12.8%、予想 16.3%)
8月13日
20:30 外貨準備 8月7日時点
8月14日
16:00 6月経常収支 (5月 −37.60億ドル)
16:00 6月鉱工業生産 前年比 (5月 -19.9%) 
16:00 6月小売売上高 前月比 (5月 3.8%)
16:00 6月小売売上高 前年比 (5月 -16.7%)


注:ポイント要約は編集部

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