ドル安がややぶり返し105円台中盤へ下げる、次の方向性は週末の米雇用統計反応からか
〇ドル円、5日夜の米ADP民間雇用統計発表により105.30まで下がる
〇レバノン大規模爆発で中東情勢に動揺、地政学的リスクの高まりに警戒
〇ファーウェイ等の規制問題で米中対立が深刻化、米中通商合意で今後の展開注目
〇105円割れから104.50前後への下落を想定、104.50以下は反騰注意
〇105.75超えから106円試しを想定、106円以上推移なら7日日中も高値試しへ
【概況】
ドル円は7月31日午前安値104.17円から反騰に転じて8月3日深夜には106.46円の高値を付けて安値からは2円を超える上昇幅となったのだが、3日深夜以降は伸びず、4日は106円を挟んだ横ばいにとどまり、4日深夜からはレバノンの大爆発事故等によるリスク回避での円高感が強まったことや米10年債利回りの低下を背景としてドルが弱含む中で5日未明には105.61円まで失速した。
8月5日の日中は105円台後半での小動きだったが、5日夜の米ADP民間雇用統計での7月就業者数の伸びが予想を大幅に下回る中で105.30円まで安値を切り下げた。その後は米ISM非製造業景況指数の改善で105.50円強へ戻したが、3日深夜以降の右肩下がりの展開が続いている。
7月31日にかけてドル円が下落してきた背景はユーロ高ドル安を中心としたドル全面安の流れであり、ドル安が一服する中でドル円も買い戻しの動きとなって8月3日深夜まで戻したのだが、ユーロドルは8月3日深夜安値からは持ち直しの動きに入り、5日深夜には31日高値に迫るところまで回復している。
英ポンドも8月4日深夜安値からの反騰で31日高値に迫り、豪ドルは8月3日夜安値からの反騰を続けて5日深夜には31日高値を上抜いている。メジャー通貨、資源通貨等で総じてドル安感が再燃し、ドル円も戻り一巡でいったん仕切り直しの下落に入っている印象だ。週末の米労働省雇用統計へ向けて重要指標の発表も相次ぐ。レバノンの大爆発事故による地政学的リスクの高まり、米中対立、感染拡大動向等も見定めながらドル安基調が再開してゆくのか、ドル高へいったん切り返しに入るのか、週末にかけて見定める展開となりそうだ。
【レバノン情勢】
8月4日に発生した中東レバノンの首都ベイルートの港湾地区での大規模な爆発事件では、死者135人で負傷者は凡そ5000人、住宅を失った人は30万人とも報じられている。レバノンは財政悪化によりデフォルト(債務不履行)に陥っており政情不安が続いている。イスラエルとの対立も歴史的に続いてきたが、今回の爆発事件に関してはイスラエルは関与を否定している。港湾倉庫で保管されていた爆発物に引火したとされるが、意図的な引火なのか事故的なものなのかははっきりしない。米トランプ大統領はテロとの関係を示唆するような発言をしているが、レバノン政府は非常事態を宣言したものの今のところはテロと断定していない。また犯行声明等も出ていない。仮にテロと無関係としてもレバノンの政情不安が中東情勢全般に動揺を与えることで地政学的なバランスが崩れる懸念もあるところだ。
【株式市場は楽観的復興期待相場が続く】
8月5日のNYダウは前日比373.05ドル高と上昇、ナスダック総合株価指数は同57.23ポイント高と上昇し、取引時間中及び終値ベースの史上最高値を更新した。ADP民間雇用が予想より悪かったもののISM非製造業景況指数が予想を上回り、輸出入も改善したことが株高へ寄与した。ワクチン開発関連報道や米政権による追加の景気対策への期待、米連銀の金融緩和拡大やゼロ金利政策の長期化等への期待が背景となっている。感染爆発は止まないものの経済活動再開との並走という全般の動向により経済指標の持ち直しが続いていることで、実体経済においてはデフレ不況が続いてもリーマンショック後の金融緩和と株高のように今回も資産インフレは進行するだろうとの思惑が株高を支えている。株高はリスク選好感を強めるため、7月以降は投機通貨買いを助長してドル安要因となっているため、ドル円においても株高とセットでの円安というよりも、ドル全面安による下落反応を起こしやすいと思われる。
米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した7月の全米雇用報告では、非農業部門民間就業者数は前月比16万7000人増となり市場予想の120万人増を大幅に下回った。しかし6月分は速報の236.9万人増から431.4万人増へ大幅に上方修正されている。
米サプライ管理協会(ISM)が発表した7月の米非製造業景況指数(NMI)は58.1となり前月の57.1から上昇して市場予想の55.0も上回った。
米商務省が発表した6月の貿易統計では、輸出は前月比9.4%増となり増加率は統計開始以来で最大となった。輸入も4.7%増となった。しかしその一方で中国に対する1-6月期の輸出は4.6%減、輸入は17.1%減にとどまり、米中貿易協議「第1段階」合意による目標通りには対中輸出が増えていない事が露呈した。香港やウイグル、ファーウェイ等のハイテク企業への規制問題等で米中対立が深刻化しているため、米中通商合意が今後どう展開してゆくのか注目される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月27日深夜安値から3日半となる7月31日午前安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰に転じたが、8月5日未明への下落により8月5日朝時点では8月3日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして8月5日午前から7日昼にかけての間への下落を想定した。5日深夜へ続落してからも反騰しきれずにいるためまだ一段安余地ありとするが、前回サイクルボトムから4日目に入っているので106円超えからは強気サイクル入りとして6日夜から10日深夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では8月5日深夜への下落で先行スパンから転落し、遅行スパンの悪化も続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、106円超えからは先行スパンを上抜き返すために上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8月5日深夜の下落で30ポイント台序盤へ下げた。相場の安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行はまだ見られないためもう一段安へ進む可能性が残るところだ。強気転換は60ポイントまで戻してその後も50ポイント以上で推移する必要があると思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.00円を下値支持線、106円を上値抵抗線とする。
(2)106円以下での推移中は一段安余地ありとし、105.50円以下での推移中は下向きとし、105円割れからは104.50円前後への下落を想定する。104.50円以下は反騰注意とするが、105.50円以下での推移なら7日午前も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)105.75円超えからは106円試しを想定する。106円手前では戻り売りにつかまりやすいとみるが、106円超えからは8月3日深夜高値106.46円超えを目指す上昇を想定する。また106円以上での推移なら7日の日中も高値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
8/6(木)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 10.4%、予想 10.1%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -29.3%、予想 -18.5%)
15:00 (英) イングランド銀行(英中銀)金利発表 (現行 0.10%、予想 0.10%)
15:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 7450億ポンド、予想 7450億ポンド)
15:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
15:00 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 143.4万件、予想 140.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1701.8万人、予想 160.0万人)
23:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、バーチャル講演
8/7(金)
未 定 (中) 7月 貿易収支・米ドル建て (6月 464.2億ドル、予想 425.0億ドル)
未 定 (中) 7月 貿易収支・人民元建て (6月 3289.4億元)
08:30 (日) 6月 全世帯消費支出 前年同月比 (5月 -16.2%、予想 -7.8%)
10:30 (豪) 豪準備銀行、四半期金融政策報告
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI・速報値 (5月 78.4、予想 84.8)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI・速報値 (5月 73.4、予想 77.1)
15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 71億ユーロ、予想 125億ユーロ)
15:00 (独) 6月 経常収支 (5月 65億ユーロ、予想 150億ユーロ)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 7.8%、予想 8.1%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -19.3%、予想 -11.0%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比 (6月 +480.0万人、予想 +167.5万人)
21:30 (米) 7月 雇用統計 失業率 (6月 11.1%、予想 10.5%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前月比 (6月 -1.2%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (6月 5.0%、予想 4.2%)
23:00 (米) 6月 卸売在庫 前月比 (5月 -1.2%、予想 -2.0%)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 5.4%)
オーダー/ポジション状況
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