トルコリラ円見通し 円高に圧迫されて15.60円台のレンジ相場からいったん転落
〇トルコリラ円ドル円の動きにつれ、一時15.55まで下落
〇トルコの外貨準備の減少と物価上昇による実質マイナス金利化には注意が必要
〇15.55以上での推移中は上昇余地あり、15.65円超えから続伸の場合一段高へ
〇15.55割れからは15.50前後への下落を想定
【概況】
トルコリラ円は7月3日夜に一時的な急落に見舞われてベンダーによっては15.56円前後や15.40円前後、さらに15.14円前後を提示する水準まで急落したが、早々に急落前水準まで切り返したためにフラッシュクラッシュ的な下げに収まり、7月3日深夜の下落では15.58円までの下げにとどまった。
週明けは手掛かり難の中でドル円が持ち合い推移にとどまったためにトルコリラ円も15.60円台での持ち合いが7月8日夜まで続いたが、7月9日未明にかけてドル円での円高が進んだためにトルコリラ円も7月9日朝には15.55円まで下落して7月3日深夜安値を割り込んだ。
【外貨準備高の減少傾向と実質マイナス金利】
6月後半からは対ドルでのトルコリラの動きは極めて限定的なものにとどまり、6.85リラを中心とした小動きが続いてきた。7月3日には6.98リラまで一時的に急落したが早々に元の水準に戻っている。7月8日は6.86リラから6.85リラの範囲での推移であり、今週の3日間は6.86リラから6.84リラの範囲となっている。トルコ当局による取引規制の影響と思われるが、フラッシュクラッシュを引き起こすということは、きっかけ次第ではトルコリラへの売り圧力が一挙に高まる可能性があることを示唆したものと思われる。
トルコの外貨準備は7月3日時点で51億4200ドルだが、2019年は80億ドルを若干下回る程度で安定していたところ、コロナショックにより3月以降は急減している。外貨準備の脆弱性と、政策金利を一桁台に引き下げてきたものの物価上昇率が10%を超える状況に陥って実質マイナス金利状態に入っていることで高金利通貨としてのトルコリラへの投資意欲を後退させつつある点には注意しておきたい。
【ドル円、レンジ拡張型持ち合いから下抜けるか?】
対ドルでのトルコリラの動きが極めて限定的な状況が続いているため、トルコリラ円はドル円の動向とほぼ同調して推移している。ドル円は6月23日深夜安値106.06円から7月1日高値108.16円まで上昇したが、その後は107.50円を中心値とした持ち合いとなっている。持ち合い中の高値は7月2日夜から6日、7日と若干切り上がってきたが、この間の安値は7月2日から7日、9日未明へと切り下がっており、レンジ拡張型の持ち合いとして往来が続いている。107円台序盤の現状で持ち直しに入り、持ち合い中心値の107.50円を超えてくれば持ち合いにおける高値切り上げラインの到来する108円を目指す可能性もあるが、107円を割り込む場合は持ち合い下放れに入るためにトルコリラ円にとっても大きな売り圧力となる。
欧米株高が続けばリスク選好でドルストレートでのドル安が進み、ドル円は株高と同調しきれずにドル安に押されて下落している。また株安が深刻化する場合はリスク回避での円高圧力が加わるようだ。
【トルコの感染増加数は日々千人を超えるがほぼ横ばい】
トルコの新型コロナウイルス感染者数は7月8日時点で20万8938人で前日から1041人増、死者5282人で前日から22人増えた。6月1日からの経済活動再開により6月12日以降は千人を超える状況が続いているものの、6月15日の1562人増をピークとしてその後は1000人強の水準でほぼ横ばいとなっている。
トルコは6月1日から経済活動規制を徐々に解除し、7月1日からは出入国規制を緩和している。今のところは感染増加数を抑制した状況にあり、夏場のバカンスシーズンへ向けて感染を抑制している観光地として観光客誘致が活発化してゆくと思われるが、観光再開が新たな感染増を引き起こすリスクがあること、世界全体での感染増加に歯止めがかかっていないことによるトルコの輸出産業への打撃等が懸念されるところだ。
欧米の株式市場は今のところ復興期待を優先して上昇基調を継続している、トルコのイスタンブール100株価指数も7月8日は前日比0.52%安と下げたものの、週明けの7月6日に2.36%高、7日も0.72%高と続伸した後であり、コロナショックによる3月暴落をほぼ解消するところまで上昇してきた流れは継続している印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月3日夜のフラッシュクラッシュを一時的なものとして7月3日深夜安値を直近のサイクルボトムとし、7月6日昼高値でサイクルトップを付けた可能性があるとしてきたが、7月9日朝にかけての下落で7月3日深夜安値を割り込んだもののその後の反発で15.60円台を回復しているため、すでに9日朝安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われる。このため新たな底割れ回避のうちは9日の日中から13日昼にかけての間への上昇余地ありとするが、9日朝安値を割り込むところからは底割れによる新たな弱気サイクル入りとして14日朝から16日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では7月7日午前安値からの上昇により遅行スパンが好転していたが、8日夜からの下落で再び悪化している。また先行スパンからも転落した。9日朝安値からは戻しているものの、先行スパンを上抜き返せないうちは一段安余地ありとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。ただし、先行スパン突破からは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は7月9日朝安値で30ポイント割れへ低下したがその後は40ポイント台を回復している。40ポイント以上での推移中は上昇余地ありとみるが、50ポイント台では抵抗感が出やすいと注意し、40ポイント以下での推移が続き始める場合は下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月9日朝安値15.55円を下値支持線、15.65円を上値抵抗線とする。
(2)15.55円以上での推移中は上昇余地ありとみる。15.65円前後では戻り売りも出やすいとみるが、15.65円超えから続伸の場合は15.68円前後へ上値目途を引き上げる。15.67円以上は反落警戒とするが、15.60円以上での推移が続くうちは10日午前も高値試しへ進む可能性があるとみる。
(3)15.60円以下での推移が続く場合は弱気転換注意とし、15.55円割れからは新たな弱気サイクル入りとみて15.50円前後への下落を想定する。円高が加速する場合は15.45円前後へ下値目途を引き下げる。また9日朝安値を割り込んだ後も15.60円以下での推移なら10日午前も安値試しへ進みやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
7月10日
16:00 4月失業率 (3月 13.2%、予想 14.6%)
7月13日
16:00 5月経常収支 (4月 −50.6億ドル、予想 −27.0億ドル)
16:00 5月鉱工業生産 前年比 (4月 -31.4%、予想 -16.4%)
16;00 5月小売売上高 前年比 (4月 -19.3%、予想 -28.6%)
16:00 5月小売売上高 前月比 (4月 -21.0%、予想 0.0%)
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