ユーロドルは横方向のもみあい(週報6月第5週)

今週以降もドル売り材料、ユーロ売り材料と、買い材料が特に無い中で消去法的な為替相場が続きそうですが、テクニカルにもはっきりしない展開が続いています。

ユーロドルは横方向のもみあい(週報6月第5週)

ユーロドルは横方向のもみあい

〇ユーロドル週初1.13台半ばへ上昇するも米欧貿易摩擦懸念、ECBの域外ファシリティ設定で反落
〇株式市場以外はほぼ米国売りポジション形成、株式市場が調整売りとなった場合為替は改めてドル売りか
〇今週はECB関係者の発言、サービス業PMI、ブレグジット関連情報に注意
〇米欧間の貿易摩擦は7月を通しての大きなテーマ
〇今週ユーロドルは横方向への動き、1.1180レベルをサポート、1.1320レベルがレジスタンス

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、週初は欧州経済に対する楽観的見方に続き火曜にはドル円を中心としたドル売りの動きから1.13台半ばへと上昇し週間高値をつけました。そして、水曜には米国による欧州への追加関税、木曜にはECBによるユーロ圏以外の中銀へのファシリティ新規導入とユーロ売りの動きとなり、週初東京市場の水準へと押したものの下値も限定的という週末となりました。

材料的にはユーロ買いの材料、ユーロ売りの材料とミックスしていましたが、火曜に週間高値をつけた日にはポジション的にはかなりのユーロ買いとなっていたことが週末に発表されたシカゴ通貨先物のレポートでわかりました。前週時点で12万枚近くとそれまでの平均的なユーロ買いポジションよりも5割近く増えていましたが、先週も更に増え、近年にしてはかなりのユーロ買いポジションとなっています。

円も円ロングになっていて、要は恒常的なドル売りポジションとなっているわけですが、少なくとも通貨先物のポジションを見ている限りにおいて最近はドル売りに傾いています。それでもポジションを調整する動きが見られないどころか、ユーロにおいては更にドルを売っている動きというのは、為替市場においては米国売りの動きになっていると考えられますし、金価格も先週末にはいったん押しは入っていましたが、再び1800ドルを視野に入れた動きとなってきていることから、株式市場以外の参加者は基本的に米国売りのスタンスを取っていると言えます。

ドル円の週報でも書きましたので、軽く触れるに留めますが、現在の米国内の新型コロナウイルス感染者急増の動きが今後の人の動きを中心とした経済活動に制限を加える要因となるリスクを考えると今の株式市場は2月同様楽観に覆われていると思います。今後他市場に遅れて株式市場にも調整の売りが見られることも十分に考えられますが、その時の為替市場は改めてドル売りで反応する気がしてなりません。

さて今週ですが、大きなイベントは米国関連が多いとは言うものの、欧州からも連日経済指標の発表があります。欧州の中銀関係者の講演と製造業・サービス業のPMI改定値には注目しておきましょう。また、既に英国は移行期間の延長はしないと明言しているため、影響は無いと思うものの、いよいよ6月末でもって延長しないことが確定します。まだ先のこととは言え、少なくとも9月末を目途に欧州との協議をまとめないと年明けには間に合わないとの見方もあり、ブレグジット関連の話にはこれまで以上に注意が必要でしょう。

そして先週のニュースの中で、7月の大きなテーマとなりそうなのが米国と欧州(ドイツ、フランス、スペイン、英国)との間の関税問題です。米国は欧州からの農産物、アルコール、自動車、航空機など広範囲の輸入品目に新たな関税を導入することを検討していて、7月26日まで意見を公募することとなっていますが、当初案がそのまま実施されると31億ドル相当の追加関税となり欧州にとっても影響大ですが、米欧間の摩擦激化につながる可能性が高まります。こちらも、7月は定期的に話題に出てくるでしょうから注意しておきたいところです。

今週以降もドル売り材料、ユーロ売り材料と、買い材料が特に無い中で消去法的な為替相場が続きそうですが、テクニカルにもはっきりしない展開が続いています。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

6月下旬はヘッド&ショルダー型のリバーサルパターンを形成し損ねたような動きとなっていますが、ユーロの悪材料やポジション調整の可能性に目を向けるとピンクの平行線で示した下降チャンネル内での動きを考えますし、ドルの悪材料に目をつけるならば、青のサポートラインに沿って上がっていくイメージを描くことになるでしょう。

しかし、どちらも明確な方向感は出ていないため、最近の1.12割れは買い、1.13超えは売りという流れを今週も続けやすいと見る方が先入観無しによさそうです。今週は横方向への動きを想定し、1.1180レベルをサポートに1.1320レベルをレジスタンスとする週を見ておくことにします。

今週のコラム

今週はユーロ/スウェーデンクローネの日足チャートを見てみましょう。

スウェーデンと言えば、新型コロナウイルスの対応で他の欧州諸国と異なり集団免疫を得る方向でこれまで動いていましたが、その後の経過は感染率、死亡率とも世界最悪水準(人口比で米国とほぼ同じ)にあり、スウェーデンの免疫学者も直近では改善の余地があったという発言をしています。

こうしたことから欧州内でも、スウェーデンに対しては距離を置く外交政策を取らざるを得ないといった状況となっていますが、一時期の最悪期を脱した欧州との比較という意味で、今週はユーロ/スウェーデンクローネのチャートを見てみます。

今週のコラム

実は3月以降6月上旬までは、中期的にユーロ売りスウェーデンクローネ買いとユーロ売りの動きのほうが目立っていました。もちろん新型コロナウイルスだけが材料ではありませんが、6月初めには年初来のユーロ安となっていたことはやや驚きでもあります。

経済活動を制限していなかったという点がスウェーデンクローネ買いの材料となっていたと見てもよいでしょう。ただ、それ以降はユーロの買い戻しの動きとなったあとに再び押しが入っています。為替市場だけで二国を比較するのもどうかということもわかりますが、元々為替は二国間の強弱を考慮して動いているものです。

マイナーなクロスの組み合わせにチャートだけでも見ておくのは色々と考える材料になってよさそうですが、いかがでしょうか。

ユーロ円はユーロドル、ドル円ともに上値が重たい動きとなっていることから6月高値124.43から既に5円を超える調整となりましたが、5月安値から10円上げたことを考えるとちょうど半値押しの水準です。

材料的には依然としてユーロドルもドル円も下げ方向にバイアスがかかりやすい地合いですし、120円の大台もあっさりと割り込んだことを考えると、次のターゲットとして61.8%押しの118.24も今週から来週あたりに試す可能性が高いのではないかと見ています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

6月29日(月)
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感
18:30 英中銀総裁講演
21:00 ドイツ6月CPI速報値

6月30日(火)
15:00 英国1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス6月CPI速報値、5月PPI
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値
20:00 シュナーベルECB理事講演
23:00 カンリフ英中銀副総裁講演

7月1日(水)
16:50 フランス6月製造業PMI
16:55 ドイツ6月製造業PMI、失業率
17:00 ユーロ圏6月製造業PMI
17:30 英国6月製造業PMI

7月2日(木)
18:00 ユーロ圏5月PPI、失業率

7月3日(金)
**:** 米国市場休場
08:01 英国6月GFK消費者信頼感
16:50 フランス6月サービス業PMI
16:55 ドイツ6月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏6月サービス業PMI
17:30 英国6月サービス業PMI
21:00 オランダ中銀総裁講演

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月22日(月)
ユーロドルは、東京市場ではユーロ円とともに底堅い動きとなっていましたが、欧州市場に入り強めの経済指標やドイツ連銀総裁のドイツ経済は底を打ったとの発言もあり一段高。NY市場では金曜高値を超えると仕掛けっぽいユーロ買いも加わりさらに上昇、全般的なドル売りの動きもユーロ下支えの要因となっていました。

6月23日(火)
ユーロドルもドルの動きとしてはドル円をフォローして荒っぽい流れでしたが、ユーロ円での円の動きもあって変動幅はドル円に比べ少ない動きでした。ただ、欧州市場序盤にフランスのPMIが予想よりも強かったことに反応してユーロ買いの動きが加わった分、ドル売りの動きがNY市場まで続きました。NY市場ではドル円とともにユーロ一段高の動きから1.1349レベルの高値をつけた後、1.13近くに押して引けました。

6月24日(水)
ユーロドルは、欧州市場までは小動きでしたが、米国がEUと英国に対して追加関税を課すことを検討しているとのニュースを受け、ユーロとポンドが下落。NY市場前に一度は買い戻される場面も見られたものの、ユーロドルは前日上げた調整からユーロ売りの動きが強まり1.12台半ばまで下げての安値引けとなりました。

6月25日(木)
ユーロドルはドル円同様のドル買い(ユーロ売り)の動きが続きました。ECBが決めたユーロ圏以外の中銀へ流動性を供給するファシリティ新規導入は、為替市場ではユーロの需給緩和がユーロ売りという捉えられ方をしましたが、その後のドル売り直し(ユーロ買い)の動きを見ている限り、対象が中銀となっていることもあり影響は限定的と見えました。

6月26日(金)
ユーロドルは終日方向感がはっきりしない展開が続き、1.1220レベルをもみあいの中心に1.12台前半で週末前の小動きが続きました。値幅は伴わなかったもののユーロ円がドル円同様の動きとなったことも、ユーロの対ドルでの動きを狭くする要因になったと考えられました。

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