今週は横ばいで方向感は出ないまま(週報6月第5週)

テクニカルには上下とも見ての横ばいとなる可能性が強く、ややドル買いが強まったため、今週も106.50レベルをサポートに107.50レベルをレジスタンスとする。

今週は横ばいで方向感は出ないまま(週報6月第5週)

今週の週間見通し

先週のドル円は火曜には米中貿易合意の打ち切り思惑と否定で荒っぽい動きをしたのですが、その後のNY市場から翌日にかけて更なる乱高下が待ち受けていました。ソフトバンクによるTモバイル株売却の話は火曜のNY市場前に出ていた話なのですが、その話が蒸し返された上に、株式売却による円転で大口の円買いに繋がるのではないかという思惑が大きかった様子です。

先週火曜の段階では通貨先物のポジションを見ても少しずつ円買いポジションが増えてきていたことと、おそらくは東京とNYと2回も激しい動きに見舞われたことで、ポジションを軽くする動きが翌水曜に出たと思われますが、水曜の引けは火曜のNY市場で下げ始める前の水準へと戻しました。木曜以降はほぼおまけの値動きのようなものですが、上は107円台半ばの売りが相変わらずいることを確認しての週末となりました。

ドル円の動きだけを見ていると、どうもドル売りに対する動きが大きくなり、買い戻しはゆっくりという展開ですが、多分に米国における新型コロナウイルスの感染者増の動きに対する懸念と、その懸念を背景に米国株式市場の上値が重くなってきていることによる影響が大きいと考えています。各国とも経済活動再開後の感染者増の動きは出ていますが、その中でも米国と一部の新興国の感染者増はかなりの増加です。米国の感染者が多い州ではバーの営業再停止といった動きも出ていて、夏だからといって感染者が増えないということは幻想に過ぎなかったこと、人の動きが出てくれば結局は以前の状況に戻ってしまうことを再確認したという印象です。

米国では感染者が1日あたり4万人超の状況が続き、経済活動再開後にあっさりと過去最悪の数字を更新してしまいました。(なお、先週のグラフにおける最終日の数値は誤りだったようで、先週執筆時点では4万人には乗せていませんでした。)。今週末は米国が独立記念日で祝日となりますが、祝日の人の移動が現状では最も懸念されそうですし、状況が落ち着いてきている欧州では米国からの入国はまだ認めていないという状況で、今後の経済回復の足かせになることは間違いないでしょう。

今週は1日早く木曜に米国の雇用統計が発表されますが、6月上旬の数字ですから前回より改善することはほぼ間違いないところで、コンセンサスは失業率が12.3%(前回13.3%)、NFPが+307.4万(前回+250.9万)となっています。しかし、そこからここに至り、7月上旬の統計が8月第1金曜に発表されるときに、果たして米国の感染者が再び減り雇用に好影響を与えるとは現状考えることは困難です。ひょっとすると、各種経済指標も6月分の数字が戻り高値というか、一時的な改善で再び悪化に転じるリスクは少なくないと言えそうです。

今週は連日様々な経済指標や地区連銀総裁の講演がありますが、1日少ないので重要イベントとしては木曜の雇用統計、そして火曜のパウエルFRB議長とムニューシン財務長官による下院での議会証言ですが、メインテーマはコロナの支援・救済・経済保障法によるFRBの融資プログラムの進捗状況報告です。しかし、最近の感染者急増についてFRBと財務相が新たな策を考えているか等を確認することにもなりそうです。

いずれにしても、ここ半月ほどの米国内の感染者急増の動きが株価にどのようなインパクトを与えるのか、今週の最大の注目材料は経済指標や議会証言以上に、実体経済の再悪化懸念に対する株式市場参加者の反応となるように思います。

テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

過去2か月の部分に106.50水準と107.50水準にラインマーカーを引きましたが、6月初めの乱高下を除けば、ほぼ両水準を基準に上では売り、下では買いという流れが続いています。特に6月中旬以降は同レンジ内にほぼ収まっていて、抜けたところは逆張りがワークしそうなチャートですが、実際に本邦個人投資家を中心として、逆張りでのリピート取引が結構出ている印象です。ただ、シカゴの通貨先物のように円買いポジションに傾いているという印象は無く、どちらかというと日本の個人は下がったところでドル円、クロス円での買いで入り、上がったところで売るという流れが強いように思えます。

テクニカルには引き続き上下とも見ての横ばいとなる可能性が強いこと、直近ではややドル買いが強まったことから、今週も106.50レベルをサポートに107.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきたいと思います。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

6月29日(月)
08:00 豪中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏6月消費者信頼感
18:30 英中銀総裁講演
21:00 ドイツ6月CPI速報値
23:00 米国5月中古住宅販売件数
23:30 米国6月ダラス連銀製造業景況指数
24:00 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
28:00 NY連銀総裁講演

6月30日(火)
08:30 本邦5月失業率・有効求人倍率
10:00 中国6月製造業PMI
15:00 英国1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス6月CPI速報値、5月PPI
16:00 トルコ5月貿易収支
18:00 ユーロ圏6月CPI速報値
18:30 南ア1〜3月期GDP
20:00 シュナーベルECB理事講演
21:00 南ア5月貿易収支
22:00 米国4月ケースシラー住宅価格指数
22:45 米国6月シカゴ個賠部協会景況指数
23:00 米国6月消費者信頼感
23:00 カンリフ英中銀副総裁講演
24:00 NY連銀総裁講演
25:30 パウエルFRB議長・ムニューシン財務長官議会証言(下院)

7月1日(水)
**:** 香港市場休場
07:45 NZ5月住宅建設許可件数
08:50 日銀短観(6月分)
10:30 豪州5月住宅建設許可件数
10:45 中国6月MarkIt製造業PMI
16:00 トルコ6月製造業PMI
16:50 フランス6月製造業PMI
16:55 ドイツ6月製造業PMI、失業率
17:00 ユーロ圏6月製造業PMI
17:30 英国6月製造業PMI
20:30 米国6月チャレンジャー人員削減予定数
21:15 米国6月ADP全国雇用者数
22:45 米国6月製造業PMI
23:00 米国6月ISM製造業PMI
23:00 米国5月建設支出
23:30 週間原油在庫統計

7月2日(木)
10:30 豪州5月貿易収支
18:00 ユーロ圏5月PPI、失業率
18:00 南ア1〜3月期経常収支
21:30 米国6月雇用統計
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国5月貿易収支
23:00 米国5月製造業新規受注
**:** 米国取引所一部短縮取引

7月3日(金)
**:** 米国市場休場
08:01 英国6月GFK消費者信頼感
10:30 豪州5月小売売上高
10:45 中国6月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ6月CPI・PPI
16:50 フランス6月サービス業PMI
16:55 ドイツ6月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏6月サービス業PMI
17:30 英国6月サービス業PMI
21:00 オランダ中銀総裁講演

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月15日(月)
 週明けのドル円は値動きが乏しく、基本的に前週金曜と変わらないレンジの中でのもみあいに終始しました。一日の値幅も27銭に留まり為替市場の中でも蚊帳の外状態だったといえます。

6月16日(火)
 ドル円は朝から荒っぽい値動きの一日となりました。東京前場には米中貿易合意を打ち切るとのニュースに106.74までドル売りが出た後、同記事が否定されたことからストップも加わって107.20まで反発しました。その後も高値は107.22までで107円を割り込んでのNY市場入り。NY市場では改めてソフトバンクのTモバイル株売却による円転思惑とストップオーダーにより一時106.07レベルの安値をつけ、引けにかけては106円台半ばに戻しました。

6月17日(水)
 ドル円は前日が荒れ模様だったこともありNY市場が始まるまでは106円台半ばの狭いレンジ内での取引が続きました。NY市場に入り既に欧州市場で下げていたユーロドルを中心に前日のドル売りの動きに対する巻き返しによるドル買いが見られ107円台を回復しての高値引けとなりました。

6月18日(木)
 ドル円は前日からのドル買い戻しの流れを継続し、週間高値を上抜けるとストップオーダーも巻き込みながら、NY市場の朝方には一時107.45レベルの高値をつけました。ただ、目立った材料があって買われたわけでもなく、引けにかけては107.11レベルまで押して引けました。

6月19日(金)
 ドル円は東京前場には動きが見られませんでしたが、後場以降徐々に上値が重くなりNY市場前には106.80レベルの安値をつけました。特に材料は見当たらず、前日の107円台半ばでの上値の重さから、ドル売りオーダーを下げてきていると思われる動きでした。NY市場では逆に実需のドル買いが日計り売りを踏み上げさせましたが、戻り高値は107.36レベルまでと上値の重さは変わらず、引けにかけてはやや押す動きとなりました。

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