三角もちあいを下抜ける可能性大
〇ユーロドルは先週1.07台後半の買いと1.08台後半の売りのもあい相場を継続
〇3月以降の三角持ち合いの膠着感強まる
〇今週は仏独、あるいは日本のロックダウン解除後の感染状況注視
〇英国のEU離脱移行期間後の交渉難航報道、交渉延期の可能性も
〇テクニカルにはトライアングルの下限を覗う動き
〇今週は5月安値を更新する展開を考え、1.0750レベルをサポートに1.0875レベルをレジスタンスとおく
〇ユーロポンドはブレグジット後の協議難航発言でユーロが大きく戻す展開
〇3月高値と4月安値の38.2%戻しにあたる0.8988を最初のターゲットに半値戻し0.9085も視野に入れる展開
注:ポイント要約は編集部
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、1.07台後半の買いと1.08台後半の売りという5日欧州市場以降のもみあい相場を継続していますが、中期的にも3月下旬からの三角もちあいの中で更に上値を切り下げ、下値も切り上げと着実に膠着感が強まる展開がとなっています。そうした中で先週の欧州のトピックスとして気になったのは、月曜からのフランスにおけるロックダウン解除と金曜のブレグジット難航を示唆する発言です。
フランスではパリなど一部地域では限定付きとはなるものの8週間ぶりにロックダウン解除が行われました。これまで思うように外出できなかった反動もあると思いますが、パリの光景はロックダウン前と何ら変わらないかのような人出と言われます。クラスター発生も起きているようですが、先週の影響が実際に数字に表れてくるのは今週以降でしょうから、果たして感染者数が大きく増加に転じないのか注視したいところです。
いっぽうで、ドイツでは一足先に規制緩和に動いていましたが、数字的に目立ったものでは無いもののわずかに感染速度が増加したというニュースがありました。その後、ドイツでは大きな問題となっていないようですし、ドイツではこれまでもよくコントロールされてきたことを考えると、国民性の違いが大きいのでしょう。果たして今の日本はどうなのか、制限が解除された中でも大都市がある愛知県、福岡県あたりの動向が参考になりそうですね。各国とも手探り状態での規制緩和への動きが始まっていますが、消えることは無いでしょうから、ワクチンが出来るまでどの程度コントロールできるのか次第というところです。
しかし、今回の感染者拡大では明らかに欧州での影響が大きく、今後規制が緩和されていくとしても、以前のようなEU域内における人も物も自由に通行できる状態に戻るのはかなり先のことでしょうから、そうなると欧州経済の回復には時間がかかることになりますし、コロナ以前から景気が低迷していた欧州は色々な意味でもっとも回復に時間がかかる地域となりそうです。そして、最近コロナばかりであまりニュースには出てきませんでしたが、ブレグジット移行期間後の協議は英国とEUの間で続けられています。
15日の双方からの難航発言は、この移行期間後の3回目の通商協議終了後に出てきたものです。この協議における大きな争点は既に前週から言われていましたが、離脱後に英国がEUにあえて不利となるような基準緩和をしないことをEU側が求めているものですが、英国は拒否しています。双方が譲歩を求め何ら進展が無いままに4回目の通商協議(6月1日予定)を迎えるリスクが高く、現時点ではこの進展なしは為替市場ではポンド売りに作用しているようです。
英国側は常に強気で交渉に臨みEUからの妥協を得るというスタンスでこれまで来ているようなものですが、今回の協議に先立ってアイルランド外相も協議に対して懸念を示していて、それに対する論説で英国BBCのニュースサイトが面白い記事をあげていました。英国の思惑としては「交渉期限が迫り、合意なしという状況を危ぐする状況になれば、EU側は当初の意図よりも大きく譲歩したり、諦めたりするだろう」というものです。BBCの記事というのが良いところですが、いまはコロナ対策で手一杯のジョンソン首相はあえて手一杯で長引かせて妥協案を引っ張り出すとするならば、これまでと同じです。しかし、このコロナの影響でそのまま年末期限とは行かない気もするので、交渉期限延期の可能性も含めて、コロナ後の双方の動きも気になるところです。
また今週も経済指標は連日出てくるものの、米国の指標同様の反応で悪くて当然ということから、指標をきっかけに方向性が出てくるということにはならないと見ています。ということで、ここからはテクニカルな観点から見ていきましょう。
日足チャートをご覧ください。
冒頭に書いた通りですが、3月下旬以降はピンクのラインで示したトライアングル(三角もちあい)の中での動きとなっていて、ごく直近ではトライアングルの下側のサポートにかなり近い水準に位置していることがわかります。
ここで反発すればトライアングルの中でのもみあいに戻ることとなりますが、材料面ではロックダウン解除後の欧州の状況とブレグジット移行期間後のEUと英国との協議が難航していることが、ユーロの上値を抑える要因となってくるのではないか、そして、このサポートを抜けてくるとまずは4月安値、そして3月の年初来安値を試しに行く可能性があるのではないか、深い意味は無さそうなもののトランプ大統領のドル高容認発言もユーロを売りやすくするのではないか、といったことを考えています。
今週は4月安値までは行かないものの5月安値を更新する展開を考え、1.0750レベルをサポートに1.0875レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週は本文でも登場したユーロポンドの日足チャートを見てみましょう。
ユーロポンドは4月5月と底堅い値動きが続いていましたが、先週金曜にブレグジット後の協議難航発言にポンドの売りが目立ったことからユーロポンドは4月高値を上抜ける動きとなっています。
テクニカルには3月高値と4月安値の38.2%戻しにあたる0.8988、ほぼ0.90の大台を最初のターゲットに半値戻しとなる0.9085を視野に入れる展開となってきていると考えられます。ユーロとポンドそれぞれの対ドル、対円だけなくユーロポンドの動きもここにきて気になり始めてきました。
今週の予定
5月18日(月)
08:01 英国5月住宅価格
19:00 スペイン中銀総裁講演
**:** ユーロ圏財務相会合
5月19日(火)
15:00 英国3月失業率
18:00 ドイツ5月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏3月建設支出
23:00 レーンECB理事講演
5月20日(水)
15:00 英国4月CPI・PPI
17:00 ユーロ圏3月経常収支
18:00 ユーロ圏4月CPI
22:30 英中銀総裁講演
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値
5月21日(木)
17:30 英国5月製造業・サービス業PMI速報値
5月22日(金)
15:00 英国4月小売売上高
16:15 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値
20:30 ECB理事会議事要旨公表
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月11日(月)
ユーロドルは、ドル円のゴールデンウィーク後のドル買いに引っ張られユーロの上値が重たい動きが続きました。NY前場に一時的に買い戻される場面も見られましたが、すぐに反落し引けにかけては1.0800レベルの安値を付けました。ただ、ユーロ円の買いも強かったため、ユーロドルの値幅はあまり広がらないままで終わりました。
5月12日(火)
ユーロドルは東京前場にはユーロ円の下げとともに一時的な押しが入りましたが、その後はNY市場朝方まで一貫してユーロ買いの動きが目立ちました。米国CPI発表直後には1.0885レベルとユーロ高のピークとなりましたが、NY後場は株安の動きがドル円とユーロ円の下げに繋がり、引けにかけては1.08台半ばへと押して引けました。
5月13日(水)
ユーロドルは欧州市場まではやや上値が重たいものの方向感は出ていませんでしたが、欧州市場に入り下がりきらない動きから反転、前日高値を超えるとNY市場前場にはパウエルFRB議長の先行きに弱気な発言によるドル売りも手伝って1.0897レベルの高値をつけました。しかし、パウエル議長はマイナス金利を否定したことからドル買い戻しも見られ、ユーロ売りオーダーへと繋がって下げに転じるとストップも巻き込みながら1.0812レベルへと日中安値を更新し安値圏での引けとなりました。
5月14日(木)
ユーロドルは、欧州市場まではドル円と同様にもみあい、その後はトランプ大統領によるドル高容認発言をきっかけにしたドル高で1.0775レベルの安値を付けました。その後のNY市場では売買が交錯し、1.08を挟んで神経質な上下を続けていましたが、流れとしてはドル高地合いが抜けきれず、ユーロは上値が重たい印象での引けとなりました。
5月15日(金)
ユーロドルは、NY市場までは前日の調整からドル安ユーロ買いの動きとなっていましたが、週末を前にしたポジション調整程度で静かな動きを続けていました。NY市場に入り、ドルが反転する動きで下押しは入ったものの、久しぶりにブレグジット難航予想の発言が英国、欧州の双方から聞かれたことをきっかけにユーロ買いポンド売りの動きとなりNY前場のユーロは荒っぽい動きを見せました。引けにかけてはドル買いの動きからユーロ売りも見られ、ユーロドルはNYに入る前の水準に押しての週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。