【概況】
新型コロナウイルスの感染爆発に対するリスク回避感を背景に2月20日高値112.21円から3月9日安値101.23円まで急落し、この間の下げ幅は10.98円の円高ドル安となったが、3月9日からは手元流動性確保のドル買い殺到によるドル全面高によりV字反騰となり、3月24日(25日未明)高値までの上昇幅は10.48円のドル高円安となった。全値戻しに近いところまで上昇したが2月20日高値を超えられず、上値が重くなったところでG7等によるドル資金供給協調や各国の金融緩和及び財政出動等によりドル買いが一服したために3月26日からは円高ドル安のぶり返しとなった。
ドル円は3月30日午前に107.13円まで下落してから31日夜高値108.72円まで戻したが、31日深夜からの下落で4月1日朝には106.91円まで下落して一段安となった。この段階では3月25日未明高値からの下落が3月30日午前までを一段目とし、3月31日夜高値から二段目の下落に入った印象が強まったが、4月2日夜はドル高がぶり返して108円台を回復してきた。
3月25日未明高値までの上昇幅10.48円に対する半値押しが106.47円だったが、4月2日朝安値は半値押し手前のところで踏みとどまって買い戻されている状況だ。半値押しを超える下落となれば下落再開感が強まって手前の上昇相場の起点となる安値へ向かう可能性が高まるのだが、半値押し手前で戻したことでもう一度上昇基調を取り戻す可能性も若干出てきた印象だ。3月31日夜高値108.72円を超えるようだと戻り高値切り上げ型の強気波動を形成し始めるかもしれない。
【リーマンショック時をはるかに超える失業保険申請件数の爆発的増加】
米労働省が発表した3月28日までの週間新規失業保険申請は季節調整済みで664万8000件となり市場予想の350万件を大幅に上回り前週比334万1000件増加した。前週は前々週の28万1000件から330万7000件へ10倍以上の爆発的増加となって過去最多を更新したのだが、今週はその倍を超えた。
株式市場は既に世界的なリセッション入りを覚悟しているためにこの発表に対する反応は薄く、NYダウは前日比469.93ドル高と上昇して終わったが、3月31日の410.32ドル安と4月1日の973.65ドル安を解消するほどではなかった。米10年債利回りは原油相場急騰により前日比0.01%上昇の0.60%で終了したが、NY金先物は前日比46.3ドル高(2.9%高)で安全資産・リスクヘッジ先として買われた。
4月3日夜には3月の米雇用統計の発表がある。非農業部門就業者に対する市場の事前予想は10万人の減少だが、3月半ばからの急激な感染拡大による経済活動停滞とレイオフの急増等は反映しきれていないため、発表が予想を上下してもサプライズ反応は薄いのではないかと思われる。しかし先行きは失業率が15%あるいはそれ以上に悪化するとの見方もされており、先行き不安を一段と深刻化させるきっかけになるかもしれない。
新型コロナウイルス感染者は世界全体で100万人を超え、死者も5万人を超えた。米国では4月3日朝時点で感染者24万4230人死者5883人と急増が続いている。イタリアとスペインも感染者10万人を超えているが、これまで感染者数の割に死者の少なかったドイツでも感染者8万4794人に対して死者1107人と増加が目立ってきている。新興国への拡大も顕著であり、仮に感染爆発のピークが過ぎたとしても経済活動の復興開始となるには相当の時間もかかるのではないかという印象だ。また日本も東京の感染者が100人近くへ増加しており感染爆発や医療崩壊懸念が強まり始めており、中国や欧米が大変な状況というような立ち位置ではなくなってきている。
米国の失業保険申請件数はリーマンショック時のピークでも70万人弱だったが、コロナショックは次元の違う急増ぶりであり、今回のショックの洗礼としてはリーマンショックよりも戦前の大不況時代の方が適切かもしれず、金融市場全体の混乱と動揺も長期化しかねないと懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月20日からのウェッジ型三角持合いからの転落により弱気サイクル入りしてきたが、30日午前安値で107円割れを回避して持ち直したため、31日午前時点では30日午前安値を直近のサイクルボトムとし、3月31日夜の反落で底割れへの余裕が乏しくなったために4月1日朝時点では底割れを条件として31日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。
4月2日朝安値の後は下げ渋り、深夜に108円台まで戻しているので、4月2日朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は4月3日夜から7日夜にかけての間と想定するが、戻りは短命の可能性もあるので107.30円割れを弱気転換注意とし、4月2日朝安値割れからは弱気サイクル入りとして次の底形成期となる7日未明から9日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4月3日早朝への上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いてきた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、両スパン揃って悪化するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月30日安値から4月2日早朝安値への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行型を形成して上昇したため、50ポイント前後までを支持線としてまだ上昇余地ありと考えるが、40ポイント割れからは下げ再開に入る可能性が高まるとみる。
以上を踏まえて当面の見通しを示す。
(1)当初、107.30円、次いで4月2日早朝安値106.91円を下値支持線、3月31日夜高値108.72円を上値抵抗線とする。
(2)107.30円以上での推移中は一段高余地ありとし、108.30円超えからは31日高値108.72円試しを想定する。高値更新へ進めずに108円を割り込む場合は下げ再開とみるが、高値を更新してからも108円台を維持するなら上昇基調を継続しやすいとみて109円台後半への上昇を想定する。
(3)107.30円割れからは下げ再開注意とし、2日早朝安値106.91円割れからは一段安入りとして105円前後への下落を想定する。106円割れではいったん買い戻しも入りやすいかもしれないが、2日早朝安値を割り込んだ後も107円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な発表予定】
10:45 (中) 3月 財新サービス業PMI (2月 26.5、予想 39.0)
16:55 (独) 3月 サービス業PMI改定値 (2月 34.5、予想 34.3)
17:00 (欧) 3月 サービス業PMI改定値 (2月 28.4、予想 28.4)
17:30 (英) 3月 サービス業PMI改定値 (2月 35.7、予想 34.8)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.6%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 1.7%、予想 1.7%)
21:30 (米) 3月 非農業部門就業者数 前月比 (2月 27.3万人、予想 -10.0万人)
21:30 (米) 3月 失業率 (2月 3.5%、予想 3.8%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前月比 (2月 0.2%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前年同月比 (1月 3.0%)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI改定値 (速報 39.1、予想 38.5)
22:45 (米) 3月 総合PMI改定値 (速報 40.5)
23:00 (米) 3月ISM非製造業景況指数 (2月 57.3、予想 44.0)
オーダー/ポジション状況
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