シリア停戦も上値は重い。世界的なリスク回避ムードがリラの重石に
今週のレビュー(3/2−3/6)
今週のトルコリラ円相場は、週初17.32円で寄り付いた後、@新型コロナウィルスの感染拡大に端を発したグローバルなリスク回避ムードや、A上記@を受けた株安→新興国通貨売り→円買いの波及経路、Bシリアを巡る地政学的リスクの高まり(シリア北西部イドリブ県を巡る警戒感)を材料に、週明け早々に安値17.13円(2018年9月以来、約1年6ヶ月ぶり安値)まで下落しました。
しかし、Cトルコ・2月消費者物価指数(結果+12.37%、予想+12.70% ※前年比)の伸び率鈍化(実質金利の上昇)や、Dトルコ・2月製造業PMI(結果52.4、予想51.5)の良好な結果、EG7緊急電話会談を前にした楽観ムード、F世界各国(政府・中銀)による相次ぐ景気対策発表(金融緩和や財政出動期待)が支援材料となると、翌3/3には高値17.82円まで上昇しました。もっとも、その後は、ドル円相場の急落を受けて対主要通貨で円高が加速する中、トルコリラ円も再び下落。Gエルドアン・トルコ大統領とロシア・プーチン大統領による「シリア・イドリブ県の停戦合意」発表(地政学的リスクの後退)に下支えされつつも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間6時40分現在)では、17.31円近辺で推移しております。
来週の見通し(3/9−3/13)
トルコリラの対円相場は、2/20に記録した約1ヶ月ぶり高値18.44円をトップに反落に転じると、今週初には、約1年6ヶ月ぶり安値17.13円まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線を下抜けした他、強い売りシグナルを表す三役逆転や、強い下落トレンド入りを示唆するバンドウォークも発生するなど、テクニカル的に見て、「地合いの弱さ」を強く印象づけるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@トルコ経済を巡る先行き不透明感や、A外貨準備急減を受けたリラ安防衛能力への不信感、Bトルコ中銀による連続利下げを受けた実質金利のマイナス化(※政策金利の引き下げとインフレ率の上昇を受けてトルコの実質金利はマイナス転)、C経済的な結び付きの強いドイツ経済の先行き不透明感、D中東(シリア北西部イドリブ県)を巡る地政学的リスク(ひとまず停戦に至るも事態は依然流動的)、Eロシアからの武器購入やリビア派兵を巡る米国及びNATO同盟国との関係悪化懸念、F新型コロナウィルスに端を発したグローバルなリスク回避ムード(株安・新興国通貨売り)など、不安材料は山積みです。
以上の通り、トルコリラ円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、続落リスクが警戒されます。トルコ中銀による6会合連続利下げ(※直近6会合で計13.25%もの利下げ幅)を受けて、実質金利(名目金利-インフレ率)はマイナスに転じており、機関投資家による投資妙味の減退を通じた「トルコ離れ(トルコSell)」が続いております。来週は、トルコ経済指標(失業率や経常収支、鉱工業生産など)や、新型コロナウィルスに絡む続報、シリア北西部イドリブを巡るヘッドラインを睨みながらも、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします(心理的節目17円割れを試すシナリオ)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):16.85ー17.55
トルコリラ円日足
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