【概況】
トルコリラ円は1月17日高値18.82円からの下落が続いて2月3日朝には18.07円まで安値を切り下げた。その後は下げ渋っているものの1月31日午前高値には届かずにいるため、現状は下げ一服での横這い程度という印象だ。
金融市場全般は新型コロナウイルスの感染拡大問題へ集中しており、トルコリラ円も金融市場全般のリスク回避感が強まるところで売られ、リスク回避感がやや緩まるとこでは若干戻している。しかし1月17日以降は戻り高値が切り下がり、その後に安値を更新する弱気パターンが続いている。
2月3日は上海市場が春節の大型連休明けとなったが、上海総合株価指数が8%安を超える大幅下落で開始した。取引開始当初の急落後は安値圏に止まったまま横ばい推移となったことで先週末に大幅下落していたダウ先物が買い戻されたことでドル円がやや戻す等、為替市場も落ち着いたためにトルコリラ円も朝の安値からはやや戻したものの勢いは見られなかった。
2月3日のドル/トルコリラは小動きで1月30日高値の後は新たな高値更新へ進めずにいるが高値圏を維持している。イスタンブール100株価指数はダウの反発もあって下げ渋り、前日比0.09%高と小幅上昇した。
【トルコの実質ゼロ金利状態】
トルコのインフレ率は2カ月連続で予想以上に加速した。
2月3日に発表されたトルコの1月消費者物価の伸びは前年比12.15%で12月の11.84%から上昇した。昨年9月の8.55%をボトムとして3か月連続の上昇となった。前月比も1.35%で12月の0.74%から加速した。
1月の生産者物価上昇率は前年比8.8%で12月の7.4%から加速、前月比も1.84%で12月の0.69%からら加速した。
トルコ中銀はエルドアン大統領による「インフレ率と政策金利を一桁にする」との号令により5会合連続で利下げを行い、12月12日の会合ではそれまでの14.00%から12.00%へ、1月16日の会合では11.25%まで利下げしてきた。直近のピークは2019年6月までの24%だった。
政策金利を消費者物価の前年比が上回る状況は実質金利としてはゼロないしマイナス金利状態となる。世界景気が拡大してトルコ経済が好調ならゼロ金利でも為替市場への影響は限定的なものとなりえるが、イラン情勢、シリア情勢、さらに新型コロナウイルスの感染拡大問題等でリスク回避的な動きが強まる中ではトルコのマイナス金利は目立つ。次回のトルコ中銀会合は2月19日に予定されているが、果たして利下げ継続を断行するのかどうか注目される。
【シリア情勢】
トルコ政府は2月3日にシリア北西部のイドリブ県でトルコ軍がシリアのアサド政権側から砲撃を受けて兵士ら6人が死亡したと発表した。トルコ軍は反撃を行い、空爆によりアサド政権軍の30人以上を殺害したとした。イドリブ県は国際的な停戦状態にあり、トルコは停戦監視として軍を駐留している。トルコはシリアの反政府勢力を支援してきたが、これまではアサド政権の正規軍との直接的な戦闘はさほど発生していなかったため、今回の衝突が両軍の軍事行動の拡大へ進むのかどうか注目される。
トルコのエルドアン大統領はこの件に対して、「停戦義務を果たせ」とアサド政権を支援しているロシアを批判している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月30日朝に1月27日朝安値を割り込んだために1月27日夕高値と29日朝安値をダブルトップとし弱気サイクル入りとして1月30日朝から2月3日朝にかけての間への下落を想定していたが、1月31日未明へ一段安してから0.10円以上を戻したために、31日午前時点では31日未明安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて31日未明安値を直近のサイクルボトムとした。
1月31日深夜の下落で31日未明安値を割り込んだため、2月3日午前時点では底割れによる新たな弱気サイクル入りとして2月5日未明から7日未明にかけての間への下落を想定した。また新たな強気サイクル入りは31日午前高値超えからとし、超えられない内は一段安警戒とした。
2月3日朝安値の後は下げ渋っているが、31日午前高値を超えずにいるため引き続きボトム形成中として一段安を警戒する。
60分足の一目均衡表では2月3日朝安値からの下げ渋りで遅行スパンが好転したが再び悪化しやすい状況にある。また先行スパンが戻り抵抗となっている。2月3日朝安値を割り込まない内は戻りを試す可能性もあるので、先行スパンを上抜く上昇の場合は高値試し優先とするが、遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開と仮定し、2月3日朝安値割れからは安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は2月3日朝からの下げ渋りにより50ポイント台まで戻したが勢い付かずにいる。60ポイント超えへ戻せば上昇に弾みも付くが、40ポイント割れからは下げ渋りの終了と下げ再開を疑い、30ポイント割れへの下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月3日朝安値18.07円を下値支持線、18.20円を上値抵抗線とする。
(2)18.20円以下での推移中は安値更新からの一段安警戒とし、3日朝安値割れからは17.90円前後への下落を想定する。17.95円以下は反発注意とするが、2月3日朝安値を割り込んだ後も18.20円以下での推移が続く内は2月5日、6日へさらに安値を試しやすいとみる。
(3)18.20円超えから続伸の場合は1月31日午前高値18.24円手前を試す可能性が出てくるが、18.20円以上は反落警戒とし、その後の18.15円割れからは下げ再開とみる。1月31日午前高値を上抜く反騰へ進むには感染拡大報道に対する状況好転となるような報道や株高が必要と思われる。
【当面の主な経済指標等の予定】
2月10日
16:00 11月失業率 (10月 13.4%)
2月13日
16:00 12月鉱工業生産 前年比 (11月 5.1%)
16:00 12月小売売上高 前月比 (11月 1.7%)
16:00 12月小売売上高 前年比 (11月 8.5%)
2月14日
16:00 12月経常収支 (11月 -5億1800万ドル)
2月19日
20:00 トルコ中銀政策金利 (現行 11.25%。予想 11.00%)
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