【概況】
トルコリラ円は年明けの米・イラン双方の軍事攻撃による有事緊張で1月6日朝及び1月8日朝には18円を割り込むところまで急落したが、その後は両国が全面戦争化を回避したことでリスクオン心理が回復したために両安値をダブル底として反騰に転じ、1月14日午前には18.77円の高値をつけた。トルコリラ円の年初の急落とその後の反騰はドル円の動きとほぼ同調したもので金融市場全般の動きに併せたものだった。
1月14日午前高値の後はドル円もやや緩み、トルコリラ円もジリ安の推移で1月15日夜には18.61円まで下げたが、16日の日中は下げ渋りからやや戻し気味の展開となり、16日20時に発表されたトルコ中銀による5会合連続の利下げも想定の範囲としてリラ売りの動きが見られなかったことで逆に買われて22時台には18.80円まで上昇して1月14日午前高値を上抜いた。
1月17日早朝にはドル円が1月14日午前高値を超えて一段高入りとなり、トルコリラ円も16日夜高値をわずかに更新している。
ドル/トルコリラはイラン情勢が最も緊張した1月8日には1ドル=5.9871リラまで上昇(ドル高リラ安)したが、イラン情勢の緊張緩和により下落に転じた。1月13日からはドル安リラ高が時やや一服していたが、16日は5.8300リラまで一段安(ドル安リラ高)が進んだ。
トルコリラ円にとってはドル円等における円安とともに対ドルでのリラ高継続が押し上げ要因となっている。
【トルコ中銀、5会合連続の利下げ】
トルコ中央銀行は1月16日の金融政策決定会合で政策金利の1週間物レポレートを現行の12.00%から0.75%引き下げて11.25%とした。利下げは5会合連続となった。市場は11.50%程度への利下げを予想していたが、予想を若干上回る利下げ幅となった。
エルドアン大統領は政策金利とインフレ率を1桁台にすると宣言し、トルコ中銀の現体制はエルドアン大統領の意向に沿って利下げを継続している。
2018年の通貨危機的なリラ暴落により2018年9月には政策金利=週間レポレートは24%まで引き上げられたが、通貨暴落が一巡して景気も持ち直しに入ったとして2019年7月26日に19.75%へ、9月13日に16.50%へ、10月24日には14.00%へ、12月12日には12.00%へ4会合連続で大幅な利下げを断行してきた。いずれも市場の利下げ幅予想を超えるものだった。
今回の利下げ幅は過去4会合と比較すれば小幅なものに止まった。米連銀が利下げを中断したことで新興国等の利下げ圧力が緩和しており、トルコの利下げが目立つ状況となっているため、やや慎重な利下げ幅となった可能性もある。
トルコの消費者物価上昇率は12月時点の年率が11.94%であり、政策金利が11.25%へ引き下げられたことにより、実質的な金利水準はほぼゼロからマイナスという状況となっている。経済や政治外交情勢が相当程度に安定しているならば実質ゼロ金利状態でも為替市場には大きな影響を与えないが、中東の真っただ中にあり、ロシアとの関係や米国との関係も協力と対立の入り混じる状況にあり、またイラン情勢も一服しているとは言え火種も残っている。リビアの内戦への干渉ではロシアと対立し、今春にロシア製ミサイルを導入する際には米国との軋轢も増すと予想されるため、金融市場全般がリスク回避的な動きを見せる場合やトルコ自身にリスクが出てくる場合は、実質ゼロ金利という状況がリラ売りの口実となる可能性も抱えていると思われる。
政策金利とCPIの推移
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしてきたが、14日午前高値まで大幅上昇してから失速気味となったために15日午前時点では1月14日午前高値を直近のサイクルトップとした。
15日夜へジリ安となってから15日深夜へ反発気配となったため、16日午前時点では1月14日午前高値を上抜く場合は15日夜安値ないしは直前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとしたが、16日夜の上昇で14日午前高値を上抜いたため、15日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は17日午前から21日午前にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、18.70円以上での推移中は高値試し優先とする。18.70円割れからは弱気転換注意とし、15日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして20日夜から22日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月16日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。戻り高値更新が続かなくなると17日夜からは遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは下げ再開注意として安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は16日夜の上昇で70ポイントへ到達し、その後も60ポイント以上で推移しているのでまだ上昇余地ありとみるが、60ポイント割れからは下げ再開を警戒し、50ポイント割れからは下げ再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.70円を下値支持線、18.90円を上値抵抗線とする。
(2)18.70円以上での推移か一時的に割り込んでも切り返す内は上昇余地ありとし、18.85円超えからは18.90円前後への上昇を想定する。18.90円以上は反落注意とするが、18.70円以上での推移なら週明けも高値を試しやすいとみる。
(3)18.70円割れから続落の場合は弱気転換注意として15日夜安値18.61円試しとする。18.61円割れからは弱気サイクル入りとなるため当初の下値目処を18.50円前後試しとし、週明けへの続落により18.40円台前半への下落へ進みやすくなるとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月20日
23:30 12月トルコ中央政府債務
1月23日
16:00 1月消費者信頼感指数(12月 58.8)
20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨
1月27日
16:00 1月製造業景況感 (12月 103.6)
16:00 1月設備稼働率 (12月 77.0%)
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