【概況】
1月2日夜の米軍によるイラン革命防衛隊司令官殺害空爆から金融市場全般がリスクオフへと急旋回する中、10月後半からの持ち合い相場から転落して下げ足を速めていたトルコリラ円は一段安となり、1月6日朝には17.94円の安値をつけた。イランが喪に服している中で新たな軍事行動が見られなかったことで1月7日午後には18.20円までいったん戻していたが、1月8日朝にイランが報復攻撃を加えたことで8日午前には安値で17.88円まで再び反落した。しかし米軍が即座の反撃をせず、イラン側も自衛的で釣り合いの取れた反撃にとどめるとしたことで全面戦争突入懸念が後退したために金融市場全般のリスクオン心理が回復、トルコリラ円も1月6日安値割れを回避し、ダブル底型を形成しながら反騰に転じた。
1月8日夜には7日午後高値を超えてダブル底が完成、8日深夜にはトランプ大統領が米国民向け演説で「イランに強力な経済制裁を科す」としたものの「軍事力は行使したくない」と述べたことで全面戦争回避が濃厚となり、トルコリラ円もダブル底からの上昇感が増して1月10日未明には18.66円、1月10日深夜には18.68円まで高値を伸ばして先週を終えた。
週明けもこの流れは継続し、1月13日夜には18.75円、14日午前にはドル円が110円の壁を突破する中で18.77円まで戻り高値をさらに切り上げてきている。
金融市場全般が米・イラン問題に集中して8日午前まではリスクオフとなり、全面戦争化回避で一挙にリスクオンへ好転するという大きな流れとなっており、ドル円が12月以降突破できなかった110円の壁を超え、NYダウが29000ドル台に初めて到達する等、喫緊の中東戦争不安解消により却って楽観が増すという市場心理となっている。
【対ドル、対円でリラ高、イスタンブールの株高】
ドル/トルコリラは1月8日午前に1ドル5.9881リラまで上昇して2019年5月以来の高値をつけるドル高リラ安だったが、米・イラン全面戦争化回避から急落=ドル安リラ高に転じて1月13日安値では5.8500リラまで下げている。
ドル円は1月6日朝安値107.75円と8日午前安値107.65円をダブル底として反騰入りし、1月14日午前には12月以降の壁となっていた110円を突破した。ドル円での円安と対ドルでのトルコリラ高が相乗効果となっているため、トルコリラ円の上昇にも勢いがついた。
NYダウやナスダックが史上最高値を更新する中で、イスタンブール100株価指数も大上昇している。1月13日には120891.38ポイントをつけて2018年4月天井の121531.50ポイントに迫っている。日足では1月7日から13日まで5連騰となっている。トルコ株高によるリスクオン心理も対ドル、対円でのリラ高を助長している。
【4か月サイクルの戻りを試す】
トルコリラ円は12月2日高値からの下落で10月末以降の18.80ドル前後を支持線とした持ち合いから転落してきた。これは概ね4か月周期の底打ちサイクルにおけるボトム形成の動きであり、米・イラン緊張情勢がボトム形成への下落感を加速させていたのだが、緊張緩和により1月6日と1月8日のダブルボトムから反騰に転じた。この動きも4か月サイクルにおいては前回ボトムの8月26日安値から4か月を経過した状況のなかで発生したため、サイクルボトムをつけてのリバウンド入りと合致した事で反騰に勢いがついたと言える。
前回号でも指摘したが、4か月サイクルのボトムを付けての反騰としては、2019年1月3日安値18.26円から1月28日高値21.39円へ反騰したところが最近の反騰期としては短いもので、8月26日底からの反騰も10月1日まで1か月強にとどまっている。今回もまずは1か月弱ないしは1か月強の反騰まで発展する可能性があると仮定して1月後半にかけてはまだ高値試しが続く可能性があると考える。
昨年5月以降の相場展開を見れば、18円を割り込んだところからは反騰しつつも、7月31日高値19.65円、10月1日高19.15円、10月30日及び12月2日高値19.08円と高値ラインは徐々に切り下がってきている。今回の反騰でも19円を試す可能性があるが、12月2日高値に届かずに失速する場合は、高値切り下がりの抵抗ラインにぶつかって上値が重くなった可能性を警戒する必要があるかもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円60分足
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、1月6日朝安値と8日午前安値をダブルボトムとして強気サイクル入りした。今回の高値形成期は1月7日午後高値を基準として1月10日午後から14日午後にかけての間と想定してきた。既に反落警戒期と思われるが、1月10日夕刻安値や1月13日朝安値を直近のサイクルボトムとして連続的な強気サイクル入りしている可能性も考えられる。このため、1月13日朝安値18.59円を上回る内は連続的な強気サイクル入りの可能性も踏まえて上昇余地ありとするが、13日朝安値を割り込む場合はいったん弱気サイクル入りとして14日の日中から15日午前にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では1月8日夜の急騰で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いたが、その後の続伸で両スパンそろっての好転が続いている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、戻り高値更新が続かずに18.65円を割り込む場合は遅行スパンが悪化してくるので反動安入り警戒とし、13日朝安値を割り込む場合は弱気サイクル入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は13日夜高値から14日午前への高値更新に対して指数のピークが切り下がっているため弱気逆行気配となっている。50ポイント割れから続落に入る場合はいったん調整安入りとして30ポイント台後半への下降を想定するが、70ポイントを再び超える反騰からは上昇再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.65円を下値支持線、18.80円を上値抵抗線とする。
(2)18.65円以上での推移中は一段高余地ありとし、18.80円超えからは19円試しを想定する。18.90円以上は反落警戒とするが、18.65円以上での推移なら15日以降も高値を試す余地ありと考える。
(3)18.65円割れからは下げ再開を警戒して1月13日朝安値18.59円試しを想定する。18.59円割れ回避で18.75円を上抜き返すところからは上昇再開とするが、18.59円割れから続落に入る場合は8日からの急騰に対する反動安入りとみて18.40円前後への下落を想定する。また1月13日朝安値を割り込んだ状況での推移が続く内は15日以降へ安値試しを続けやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月14日
16:00 11月鉱工業生産 前年比(10月 3.8%)
1月15日
16:00 10月失業率 (9月 13.8%)
16:00 11月小売売上高 前月比 (10月 -0.2%)
16:00 11月小売売上高 前年比 (10月 5.9%)
1月16日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 12.0%)
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