約3年1ヶ月ぶり安値を更新。米中貿易摩擦と格下げリスクが南アランドの重石に
今週のレビュー(8/12−8/16)
今週の南アフリカランド(対円相場)は、グローバルに広がるリスク回避ムードを背景に、週明け早々に2016年7月、約3年1ヶ月ぶり安値となる6.800円まで下げ幅を広げました。しかし、米政権による対中関税一部延期のサプライズを受けて米中貿易摩擦を巡る懸念が幾分和らぐと、南アフリカランドも急伸し、翌8/13には、高値となる7.089円まで反発しました。もっとも、一目均衡表転換線付近では上値も重く、伸び悩むと、週後半にかけて再び反落。中国商務省が米国への報復措置の可能性を滲ませたことや、アルゼンチンを巡る政局不透明感の高まり、香港での警察とデモ隊との衝突などが重石となる中、結局6.950円まで押し戻されての越週となっております。尚、8/14に発表された南アフリカ・6月小売売上高(結果2.4%、予想2.2%)は市場予想を上回る好結果となりましたが、市場の反応は限られたものに留まりました。
来週の見通し(8/19−8/23)
南アフリカランド・円相場は、今週前半にかけて、約3年1ヶ月ぶり安値となる6.800円まで下げ幅を広げました。ボリンジャー・ミッドバンドを17営業日連続で下回っている他、強い売りシグナルを表す「一目均衡表・三役逆転」も継続するなど、テクニカル的に見て、「下落リスク」が強く意識される状況です。週後半にかけて持ち直すも、一目均衡表転換線付近では戻り売り意欲も根強く、心理的節目「7円」近辺での上値の重さが改めて確認されました。「ランド安・円高」基調は不変と見られ、次の下値目処としては、2016年6月に記録した安値6.407円が視野に入ります。
ファンダメンタルズ的にみても、@南アフリカにおける景気後退リスク(リセッション入り)の高まりや、A国営電力会社エスコムを巡る負債問題、B南アフリカ中銀(SARB)による追加利下げ観測(次回政策決定会合は9/19)、C米中対立激化を通じた南アフリカ最大の貿易相手国「中国」の景気下触れ懸念、D大手格付け機関の中で唯一投資適格級を付与しているムーディーズによる格下げリスクの高まり等、ネガティブ材料は山積みです。
上記Cについては、8/13に米政府が「追加関税の一部延期」を報じたこと米中対立懸念が和らぐ場面が見られましたが、8/15に中国商務省が「米国は新たな10%の追加関税によって米中首脳による合意を破った」「対抗措置を取らざるを得ない」と発言したことで、楽観的な見方は早くも後退しました。米中貿易摩擦が長期化する中、南アフリカ経済への負の連鎖が警戒されます。
また、上記Dについても、国営電力会社エスコムに対する政府支援策の発表を契機に、「南アフリカ財政の悪化懸念→南アフリカ国債の格下げ→グローバル債券指数構成国からの除外→同国債券市場からの資本流出加速→南アフリカランド売り」への連想が強まりつつあります。米中貿易摩擦と格下げリスクといった2つの懸念材料が、当面南アフリカランドの重石となりそうです。
以上の通り、南アフリカランドは、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。米中貿易摩擦が解消に向かわない限り、対中依存度の高い南アフリカランドには下落圧力が加わり続けると考えられます。米中貿易摩擦に絡むヘッドラインや、8/21に予定されている南アフリカ・7月消費者物価指数の結果を睨みながらも、南アフリカランドの続落をメインシナリオとして予想いたします。(来週の予想レンジ ZARJPY 6.600ー7.200)
ZAR円 日足
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