犠牲祭前の底堅さから一変、上値の重さが目立つ展開。中期上昇トレンドの終焉も示唆
今週のレビュー(8/12−8/16)
今週のトルコリラ・円(TRYJPY)相場は、犠牲祭(祝日)で流動性を欠く中、週初に高値となる19.252円まで上昇しました。しかし、グローバルに広がるリスク回避ムードに上値を抑えられると、米中貿易摩擦の再燃や、アルゼンチンを巡る政局不透明感の高まりが重石となり、翌8/13には、6/28以来、約1ヶ月半ぶり安値となる18.668円まで下げ幅を広げました。もっとも、一目均衡表雲上限や90日移動平均線付近で下げ渋ると、米政権による「対中関税の一部延期」のサプライズや、ドル円が106円台を回復したことなどを材料にトルコリラ・円も底堅く推移。結局、19.068円近辺まで持ち直しての越週となりました。尚、今週後半に発表されたトルコ・5月失業率(結果12.8%、予想12.7%)や、トルコ・6月鉱工業生産(結果▲3.7%、前回1.3%)は共に冴えない結果となりましたが、トルコリラ相場への反応は限定的となっております。
来週の見通し(8/19−8/23)
トルコリラ・円相場は、直近安値(7/25の安値18.677円)を下回ったことで、5/7に付けた17.539円をボトムに始まった中期上昇トレンドの終焉が示唆されます(ダウ理論)。今週は辛うじて一目均衡表雲上限(18.848円)や90日移動平均線(18.776円)に続落を阻まれましたが、油断は禁物でしょう。7月後半以降、異常な底堅さを見せていたトルコリラ・円相場であるだけに、売り遅れた投資家による「やれやれ売り」が上値を阻むと見られるからです。テクニカル的に見て、「上昇→中立」へのトレンド転換が意識されます。
また、ファンダメンルズ的に見ても、@ロシア製ミサイルS400を巡る対米及びNATO同盟国との関係悪化懸念や、A外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、Bトルコ経済を巡る先行き不透明感の高まり、Cエルドアン大統領による中銀への介入懸念(※)、Dトルコ中銀による大幅利下げ観測(次回政策決定会合は9/12)、Eキプロスを巡るEUとの関係悪化懸念、Fエルドアン大統領の求心力低下など、不安材料は山積みです。
※エルドアン大統領は、7/6に利下げ要求に応じなかったチェティンカヤ・トルコ中銀総裁(当時)を解任した他、8/8には、チーフエコノミストのカラ氏をはじめ、調査・金融政策部門の責任者など10名以上を解任しました。エルドアン大統領による圧力が強まる中で、トルコ中銀の独立性を巡る懸念が再燃しつつあります。
以上の通り、トルコリラ・円相場は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。翌日物金利の高止まりを背景に、本邦勢を中心にスワップポイント目的の「トルコリラ買い」が続いてきましたが、今週の急落を経て、そうした勢いは幾分衰えると考えられます。米中貿易摩擦を背景に世界的にリスク回避ムードが高まる中で、高金利通貨ロングのアンワインドが加速する恐れも出てきました。市場のリスクセンチメントを注視しつつも、来週はトルコリラ・円相場の軟調推移をメインシナリオとして予想いたします。(来週の予想レンジ TRYJPY 18.60ー19.40)
トルコリラ円日足
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