S400納入を巡る対トルコ制裁のヘッドラインに注目。
今週のレビュー(7/8−7/12)
今週のトルコリラ・円(TRYJPY)相場は、エルドアン大統領がムラート・チェティンカヤ中銀総裁を突如解任したことを背景に、中銀の独立性への疑念や、金融政策への信認低下が嫌気される形となり、週明け早々に約1週間ぶり安値となる18.697円まで急落しました。その後は、世界的な株高を受けたリスク選好の動きや、ハト派な米議会証言を受けて対ドルでトルコリラが上昇したことなどを材料に、週後半にかけて19.171円まで持ち直す動きとなりましたが、トルコリラと逆相関性の強い原油価格の上昇、5月経常収支(結果+1.5億ドル、予想+2.8億ドル)が半年ぶりに黒字転しつつも市場予想を下回ったこと、ロシア製ミサイルS400の導入開始(首都アンカラの空軍基地に到着)を受けて米国との関係悪化懸念が再燃したこと等が嫌気されると、引けにかけて急反落。結局18.864円まで押し下げられての越週となっております。
来週の見通し(7/15−7/19)
トルコリラを巡っては、@ロシア製ミサイルS400を巡る対米及びNATO同盟国との関係悪化懸念、A外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、Bトルコ経済を巡る先行き不透明感、Cエルドアン大統領による中銀への介入懸念(=利下げ圧力)、Dキプロスを巡るEUとの関係悪化懸念、Eやり直し市長選の敗北で明らかとなったエルドアン大統領の求心力低下など、潜在的なトルコリラ売り圧力を、政府・当局による為替介入や資本規制で下支えする構図が続いております。事実、先週も「個人の外貨購入にかかる銀行・保険取引税の引き上げ(0.1%→0.2%)」の方向性が示されるなど、昨夏に発生したトルコショック再来を防ぐべく、政府主導で最大限のリラ安防衛策を講じている様子が伺えます。もっとも、こうした政府・当局によるリラ安防衛策は短期的な効果はあれど、長期的な抑止力には繋がりづらく、一巡後は却って「リラ安圧力」を高める副作用がある点には留意が必要でしょう。
エルドアン大統領は先月末の米土首脳会談を経て、「S400に対する制裁は無い」と楽観的な見方を示しましたが、油断は禁物です。事実、米政府高官はその後も「トルコへ制裁を科す」方向性を示しました。7/12の「S400納入開始」報道を受けて制裁発動リスクが現実味を帯び始めれば、トルコリラには強烈な下押し圧力が加わると予想されます。この他、チェティンカヤ中銀総裁の後任に指名されたウイサル副総裁を巡っても、一部学者より論文盗用の疑惑が燻るなど、出足からつまずく懸念も浮上しつつあります。以上のことから、トルコリラはファンダメンタルズ的に見て「売られ易い」地合いが続くと予想されます。
テクニカル的に見ると、今週は一目均衡表雲上限に続伸を阻まれる形で下落に転じ、一目均衡表転換線や90日移動平均線の下抜けにも成功しました。ボリンジャー・ミッドバンド付近で下げ止まるも、「上値はかなり重たい」印象です。これまでは金利差に着目する形で高金利通貨トルコリラへの資金流入が続いてきましたが、エルドアン大統領による中銀総裁更迭を受け、今後はトルコ中銀に一段の利下げ圧力が加わることが予想されます。事実、市場では、7/25のトルコ中銀金融政策決定会合での大幅利下げ観測(24%→22%)が高まりつつあり、金利差に着目したトルコへの資金流入の動きは日に日に細ってく可能性が警戒されます。来週は、S400を巡る対トルコ制裁に絡むヘッドラインが重石になると見られ、メインシナリオとしてトルコリラ・円相場の軟調推移を予想いたします。(来週の予想レンジ TRYJPY 18.40ー19.30)
トルコ円日足
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