トルコリラ週報 『S400納入に絡むヘッドラインに注目。制裁の方向性が示されれば、リラ売り再開の恐れも』

エルドアン大統領は「S400に対する制裁は無い」と楽観的な見方を示しましたが、まだまだ油断は禁物です。

トルコリラ週報 『S400納入に絡むヘッドラインに注目。制裁の方向性が示されれば、リラ売り再開の恐れも』

S400納入に絡むヘッドラインに注目。制裁の方向性が示されれば、リラ売り再開の恐れも

今週のレビュー(7/1−7/5)

週初18.674円で寄り付いた今週のトルコリラ・円(TRYJPY)相場は、@エルドアン大統領による「トランプ米大統領から個人的にS400に対する制裁は無いと聞いた」との楽観的な発言や、A消費者物価指数(結果15.72%、予想16.10%)の伸び率鈍化、B世界的なリスク選好ムードの高まり、Cトルコリラと逆相関性の強い原油価格の下落、D政府・当局者による「個人の外貨購入にかかる銀行・保険取引税の引き上げ(0.1%→0.2%)」を計画しているとのコメント、Eチャウショール・トルコ外務相による「米国とトルコの緊張は緩和されつつある」との発言を支援材料に、週末にかけて、約2カ月半ぶり高値となる19.349円まで上値を伸ばしました。もっとも、カリン・トルコ大統領報道官より「ロシア製地対空ミサイル(S400)は間もなく到着し、稼動させる」との発言が尾をひく中、高値圏では伸び悩む動きも。結局19.269円まで小反落しての越週となっております。尚、トルコリラは対ドルでも急伸し、7/4には、約3ヵ月ぶり高値となる5.5725(USDTRYの安値)を記録。心理的節目となる200日移動平均線(5.5830)を一時割り込む場面も見られました。

来週の見通し(7/8−7/12)

トルコリラ(TRY)相場を巡っては、@ロシアからの武器購入(S400)を巡る対米及びNATO同盟国との関係悪化懸念、A外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、Bトルコ経済を巡る先行き不透明感、Cエルドアン大統領によるトルコ中銀への利下げ圧力、Dキプロスを巡るEUとの関係悪化懸念、E経常収支赤字の継続など、潜在的なトルコリラ売り圧力を、F政府・当局による為替介入や資本規制で下支えする構図が続いております。事実、今週も「個人の外貨購入にかかる銀行・保険取引税の引き上げ(0.1%→0.2%)」の方向性が示されました。もっとも、こうした政府・当局によるリラ安防衛策は短期的な効果はあれど、長期的な抑止力には繋がりづらく、一巡後は却ってリラ安圧力を高める副作用がある点には留意が必要でしょう。また、エルドアン大統領は「S400に対する制裁は無い」と楽観的な見方を示しましたが、まだまだ油断は禁物です。実際、米政府高官は今週も「トルコへ制裁を科す」方向性を示しました。S400は7/10にトルコに納入される予定であり、その前後で米土の安全保障を巡る不透明感が強まるリスクが警戒されます。上昇一服後の反落リスクに注意が必要です。

一方、テクニカル的に見ると、ボリンジャーミッドバンド(18.738)や、一目均衡表転換線(18.837)、90日移動平均線(19.119)の上抜けに成功するなど、「下落」から「横ばい」へのトレンド転換が意識されます。最後の関門として注目されている一目均衡表雲上限(19.239)を明確に突破することができれば、3ヵ月ぶり高値圏(19円台半ば)への突入も視野に入ります。但し、ファンダメンタルズ的な不安要素を考慮すれば、ここからどんどん買い進む動きも想定し辛く、一目均衡表雲上限付近では戻り売りが強まる展開も想定されます。エルドアン大統領による利下げ圧力も根強く、金利差に着目したトルコへの資金流入の動きは一時的なものに留まりそうです。来週は、S400を巡るヘッドラインや、7/11の5月経常収支(予想▲13.3億ドル)、7/12の5月鉱工業生産(前回▲1.0%)の結果を睨みつつ、トルコリラ・円相場の反落をメインシナリオとして予想いたします。(来週の予想レンジ TRYJPY 18.70ー19.50)

S400納入に絡むヘッドラインに注目。制裁の方向性が示されれば、リラ売り再開の恐れも

トルコ円日足

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