今週の週間見通しと予想レンジ
先週もユーロドルは値動きの鈍い日が続きましたが、イタリアから突然、財政赤字がGDP比3%とEUの財政規律を超えるとの発言が副首相から飛び出しました。副首相はトランプ大統領を例えに、ルールを守らないことも必要とまで言ったことから、今週23日から始まる欧州議会選挙を前にEU各国での自国内向けアピールが後を追って出てくる可能性がありそうです。
先週のユーロのレンジは100pips強と値幅は少なかったものの、ほぼ安値引けとなりユーロが下げた最大の要因がイタリアの財政規律問題となりました。
ブレグジット問題は欧州議会選後までは進展が無さそうだとの思惑から、いったん主要な材料からは落ちていますが、英国の欧州議会選の政党支持率では与党も労働党も人気が無く、先月できた新党ブレグジット党が一番人気と、今後の展開を考えるとブレグジットも一段と混迷を深めそうな雰囲気になってきました。これまでの欧州の弱い景気、ブレグジットの不透明感に、さらにイタリアの財政規律問題、欧州議会選挙と今週もユーロにとっては悪材料とされやすいイベントが多いだけに一段安の動きに注意が必要そうです。
また欧州議会選挙に伴って、ベルギーでは総選挙、ドイツとスペインでは地方選挙が行われます。来週週明けまでは欧州の政治をメインテーマに、主要国のPMI速報値とECBの各高官発言と理事会議事録公表あたりが、日々の材料という流れになります。ただ、これらもどちらかというと現状ではユーロ売り材料により反応しやすいと考えられます。
欧州議会選挙について簡単に触れておきます。
欧州議会選は5年ごとに実施され、全議席751の議席数は各国の人口を考慮した比例配分となっていますが、選挙方法自体は各国の裁量に任されています。また、EUとしての政権があるわけではないため与党という考え方も無く、それぞれの国から選ばれた議員が他国の議員と会派を組み、最大派閥というグループを作ることになります。
それでも、各国の議員がポピュリズム政党あるいは英国のようにブレグジット党と、前回の選挙に比べて反EUを掲げる議員が増えることは確実です。それでも、あまり大きな話題とならないのは、自国内の政治が第一ということから注目度は低く、投票率も1999年の選挙以降50%に達することなく年々低下し前回は過去最低。今回もあまり期待はされていないようですが、英国がEU離脱の場合には欧州議会からも外れることとなるため、選挙後の決定権限等については各部分で変更がありそうです。
結果と影響については来週のユーロ週報でもう一度振り返ります。
次にテクニカルな観点から日足チャートをご覧ください。
ユーロドル日足
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
大きくはこれまでと何ら変わらず、年初からの下降チャンネル(ピンクの太線)の中での動きを継続しています。短期的には4月高値からのレジスタンスラインとそれに平行に4月安値から引いたラインとで構成される、小さな下降チャンネル(青の細線)の中での動きと見てよさそうです。ここに来て値幅が狭くなってはいるものの、着実に高値安値ともに切り下げる下降トレンドとなっていますし、年初来安値からもそれほど離れていないことを考えると、今週中にも年始来安値を再トライする可能性が高いのではないかと見ています。
それでも値幅自体は限定的でしょうから、今週は1.1090レベルをサポートに1.1220レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。
今週のコラム
今週はポンドドルのテクニカルです。
ブレグジットについて、英国の与野党での合意はまったく見通しが立たない状況に陥っていますが、ニュースの材料としてはあまり目立ってはいません。しかし、ポンドは主要通貨に対して弱い地合いを続けていて、ポンドドルは先週の下げで4月安値も2月安値も下抜けてきています。
日足チャートをご覧ください。
ボンドドル日足
ユーロドルは先週100pips強の動きでしたが、ポンドドルは月曜高値の1.3041から金曜安値の1.2715まで326pipsの値幅をほぼ寄りが高値、大引けが最安値の動きを見せました。ここに来て急速にポンド売りが強まってきていますが、テクニカルには年初来安値と高値の78.6%(61.8%の平方根)押しとなる1.2651をターゲットに上値の重たい展開が続きそうです。ポンドの同ターゲットをつけるのが先か、ユーロドルの1.1111トライが先か、欧州通貨全般に上値が重たくなってきている様子がわかります。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
5月20日(月)
15:00 ドイツ3月PPI
17:00 ユーロ圏3月経常収支
5月21日(火)
17:30 英中銀総裁講演
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値
5月22日(水)
16:30 ドラギECB総裁講演
17:30 英国4月CPI、PPI
18:30 プラートECB理事講演
5月23日(木)
15:00 ドイツ1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス5月企業景況感
16:15 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値
20:30 ECB理事会(4月10日)議事要旨公表
25:00 オーストリア中銀総裁講演
**:** 欧州議会選挙(〜26日)
5月24日(金)
17:30 英国4月小売売上高
5月26日(日)
**:** ベルギー総選挙
**:** ドイツ地方選
**:** スペイン地方選
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
5月13日(月)
リスクオフ姿勢が強まっての週明けとなりましたが、ユーロドルは、NY市場まではもみあいが続きました。NY市場に入りダウが急落した際にはドル安からユーロ買いとなり1.1264レベルの高値をつけました。しかしすぐに元の水準へと押し、基本的にユーロドルは蚊帳の外状態が続きました。
5月14日(火)
ユーロドルはNY市場までは方向感のはっきりしない展開を続けていましたが、イタリア副首相が財政赤字はGDPの3%を超えると言う発言をしたことをきっかけにユーロ売りが目立ち、1.12台半ばから1.1204レベルまで押して安値圏で引けました。しかし、値幅自体は終日狭いままでした。
5月15日(水)
ユーロドルは、欧州市場でイタリアの財政規律問題が悪材料となってユーロ売りが広がり、NY前場にはユーロドルが1.1179レベル、ユーロ円は122.08レベルまで水準を切り下げました。しかし、NY市場に入ってからはトランプ大統領のEU自動車関税延期の発言をきっかけとしたダウ反発とともに買い戻しが入っての引けとなりました。
5月16日(木)
ユーロドルは、東京市場では米国のファーウェイ禁輸にも動きは見せず、欧州市場に入って直後は買いが先行。しかし、イタリア財政規律問題が改めて悪材料となってユーロ売りへと転じました。NY市場ではドル買いの動きから1.1166レベルと週間安値を更新し、そのまま安値圏での引けとなりました。
5月17日(金)
ユーロドルは目立った材料もない中で若干上値の重たい展開を続けました。NY市場まではユーロ円の売りが、NY市場ではドル高の動きがそれぞれユーロドルの重石となって1.1155レベルまで前日安値を切り下げ、安値引けの週末クローズとなりました。
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オーダー/ポジション状況
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