【概況】
米朝首脳会談を中止するとのトランプ大統領発言からリスク回避感が強まって5月23日、24日と急落して24日深夜に108.95円の安値をつけた。その後は米朝首脳会談を予定通り実施する動きへと流れが変わったためにリスク回避感後退として28日午前には109.82円まで戻した。米朝問題は一服、まだ直前でのドタキャンの可能性もあるが今のところは予定通りに6月12日、シンガポールで開催されるために米朝双方高官による協議が進んでいるので、市場のテーマとしてはひとまず後退した。
しかし今度はイタリア情勢不安からのユーロ急落、株安の発生が新たなリスク回避問題となり、29日午前から下落再開、24日深夜安値を割り込み、30日未明には108.11円まで安値を更新した。
イタリア情勢・ユーロ安がテーマ化したため、ドル・ストレートではドル高、さらにリスク回避の受け皿として円が全面的に買われてクロス円は円高、ドル円でも円高ドル安となり、全般的なドル高と円高が混在し、ドルよりも円がさらに強いという構図になっている。
リスク回避から米長期債が買い戻されており、米10年債利回りは2.78%まで低下した。3%超えへ上昇していた段階では日米長期金利差の拡大がドル高円安の推進力となっていたが、これが逆流している。
5月21日高値の後、22日から24日まで日足は3日連続陰線で下落、25日を小陽線としたが28日、29日と2日連続陰線で一段安、二段下げ型へと発展している。既にそれまでの上昇トレンド支持線だった26日移動平均線、一目均衡表の26日基準線等を割り込み続落しているため、3月26日からの2か月に及ぶ上昇が一巡、中勢レベルの下落期に入った印象も強まっている。
【リスク回避感強まる、欧州政治情勢、米中通商摩擦】
ユーロドルは2月16日に1.2555ドルをつけて2017年1月底以降の高値を更新したが、その後は新たな高値更新へ進めずに4月半ばまではレンジ縮小型の三角持合いとなっていた。4月末から持ち合い転落となったが、その後も下げ止まれずに前週まで週足は6週連続陰線、今週もさらに続落している。持ち合い下放れ当初は米長期金利上昇に対してECBの金融引き締め姿勢が鈍化したことが下落要因だったが、ここにきてイタリア政情不安が最大のユーロ売り要因となった。
イタリアは3月の総選挙でユーロ離脱を主張する「五つ星運動」と右派「同盟」が勝利、連立政権樹立で合意したが大統領がEU離脱を主張する財務相任命を拒否したため、解散と総選挙のやり直しとなる可能性が強まった。またポピュリスト勢力である両党が財政ばらまき政策を表明したことで海外投資家が投資マネー引き上げに動き、イタリア国債と同国株が急落し始めた。また再選挙となればEU離脱が政治テーマとしてクローズアップされる可能性も高まってきている。この混乱が続く内はユーロの下落も継続しやすく、ユーロ安ドル高の一方でユーロ安円高、さらに円高ドル安という構図で進みやすくなった。
スペインでもラホイ首相が週内に議会で不信任案に直面する可能性があると報じられているため、イタリアへの不安がスペインにも波及し、EU全体への先行き不安が拡大しかねない状況と思われる。
29日、米政府は中国の個人・団体に対する投資制限と輸出管理強化方針を来月末までに公表するとし、また中国の知財権侵害に関するWTO訴訟手続きを進めるとした。米中貿易戦争問題は、当初は双方が大規模制裁関税を掛けあう姿勢を示し、その後は妥協的な協議合意がなされていたが、トランプ大統領が両国合意に満足していないと述べたことで先週、緊張感が再燃した。その後に中国IT企業のZTEに対して制裁金を科しつつも企業活動再開を認めることとなったため市場は再び安堵していた。しかしトランプ大統領による中国への要求はまだ収まっていないようだ。
中国側は将来を見据えてか、米国の要求にこたえて貿易戦争を回避しようと努力している印象だが、米国側がさらに高圧的な態度を継続する場合は中国側が反撃姿勢に出てくる可能性もあるので注意したい。29日のNYダウが大幅下落したのはイタリア情勢不安とともにこの米中貿易戦争拡大リスクへの警戒感によるものだった。
米朝首脳会談が6月12日に実現する運びとなっているが、両政府高官の協議もあわただしく続いている。今のところは米国側の要求に対して北朝鮮側が譲歩している様だが、米国側による二度目の中止宣言や、北朝鮮側のドタキャンの可能性もギリギリまで残る。この点もしばらくは用心深く見定めてゆく必要があるだろう。
【60分足 一目均衡表 サイクル分析】
60分足の一目均衡表では5月23日の下落で先行スパンから転落、28日の反発ではいったん潜り込んだが夜の下落で転落、さらに29日の一段安で先行スパンからのかい離も大きくなっている。遅行スパンも29日から再び悪化している。安値更新がストップすれば遅行スパンも好転してくるが、安値更新が続くと好転の機会もまた1日先送りされる。当面、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパン好転の場合は先行スパン帯試しとするが、5月21日からの下落に対する応分のリバウンドに入るためには両スパン揃っての好転が必要と思われる。
60分足の相対力指数は23日夜から指数のボトムが3日連続で切り上がっていたが、指数のボトムを結んだ支持線を割り込んで20ポイント台まで突っ込んだ。その後は40ポイントを挟んだ推移だが、50ポイント超えへ進めない内はまだ一段安余地が残るとみる。
概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、5月24日深夜安値からは新たな安値更新を回避していたため29日朝時点では24日深夜安値を直近のサイクルボトムとし、新たな底割れ回避の内は上昇余地ありとしたが、既に28日午前高値でサイクルトップをつけてしまっている可能性があったため28日夜安値109.22円割れからは弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる29日夜から31日深夜にかけての間への下落を想定するとした。29日に一段安し、その後も安値圏に止まっているため30日夜、31日にかけてはまだ安値更新余地ありとし、強気転換は109円超えからさらに続伸するところからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、30日未明安値108.11円を支持線、108.75円を抵抗線とみておく。
(2)108.75円を超えないうちは30日未明値割れからの一段安警戒とし、安値更新の場合は21日から24日への下落幅と同レベルの下げとして107.39円前後試しへ向かうとみる。107.50円以下は突っ込み警戒、反発注意だが、108.50円以下で終了なら31日も安値を試しやすいとみる。
(3)108.75円超えの場合は109.00円前後試しを想定するが、109円超えから続伸へ進めない内は戻り一巡からの反落注意とみる。また109円超えから続伸の場合は109.50円手前への反発を想定するが、イタリア情勢等でのリスク回避感後退等がなければ、30日深夜以降は下げ再開注意とみる。(了)<9時40分執筆>
【当面の主な予定】
5/30(水)
16:55 (独) 5月 失業者数 前月比 (4月 -0.7万人、予想 -0.5万人)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.3%、予想 5.3%)
18:00 (欧) 5月 消費者信頼感 確定値 (速報 0.2、予想 0.2)
21:00 (独) 5月 消費者物価指数 速報値 前月比 (4月 1.6%、予想 1.96%)
21:15 (米) 5月 ADP民間雇用者数 前月比 (4月 20.4万人、予想 18.5万人)
21:30 (米) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前期比年率 (速報 2.3%、予想 2.3%)
23:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利 (現行 1.25%、予想 据え置き)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
5/31(木)
G7財務相・中央銀行総裁会議(カナダ 〜 6/2)
10:00 (中) 5月 国家統計局製造業PMI (4月 51.4、予想 51.4)
10:00 (中) 5月 国家統計局サービス業PMI (4月 54.8、予想 54.8)
10:00 (NZ) 5月 NBNZ企業信頼感 (月 -23.4)
10:30 (豪) 1-3月期 四半期民間設備投資 前期比 (前期 -0.2%、予想 1.5%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 8.5%、予想 8.4%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数(HICP、速報) 前年比 (4月 1.2%、予想 1.6%)
19:00 (米) ブラード米セントルイス連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 個人消費 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前月比 (3月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 4月 PCEコア・デフレーター 前年比 (3月 1.9%、予想 1.8%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 23.0万件)
22:45 (米) 5月 シカゴ購買部協会景況指数 (4月 57.6、予想 58.0)
23:00 (米) 4月 住宅販売保留指数 前月比 (3月 0.4%、予想 1.0%)
25:30 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
オーダー/ポジション状況
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