ユーロはもみあいの週(週報3月第二週)

先週のユーロドルは、ECB理事会に向けタカ派スタンスが示されるのではとの思惑にユーロが強含みで推移しました。

ユーロはもみあいの週(週報3月第二週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ECB理事会に向けタカ派スタンスが示されるのではとの思惑にユーロが強含みで推移しました。ユーロ円の買いも下支えの要因となりましたが、ECB理事会後のドラギ総裁会見はさすがハト派中のハト派という印象で週初の水準へと下押し、雇用統計では一時的な振れはあったものの方向感がはっきりしないままで一週間を終えています。

まず政治の話題から。ドイツは大連立政権が発足し、14日水曜にメルケル首相が4期目のスタートを切りますので、これでドイツにおける政治不安は払しょくされたと言えます。欧州最強の首相との声も高いので当面は政治面でのドイツの不安は無くなります。

いっぽうで、どこも過半数を取れなかったイタリア総選挙ですが、当初は最大得票数の5つ星運動を外した中道右派と中道左派による大連立との見立てがありましたが、どうもその線は消えている様子です。イタリアの場合ドイツ以上に、小さな政党が多く、右派グループ、左派グループの中に色々な政党が含まれています。5つ星と一部の政党が組む可能性もあるでしょうし、現時点ではまったく予想できない組み合わせとなるかもしれません。

イタリアの時間的な期限としては3月23日までに議会が招集され大統領が組閣を要請しますが、ドイツのように難航した場合、イタリアでは全党による内閣という選択肢もありますので、しばらくはどう進展していくのかを見守るしか無い状況です。そういう点では、ユーロ売りにも買いにも動きにくいというところでしょうか。

また今週はECB理事会も終わり、水曜にはドラギ総裁を含めECB関係者の講演が相次ぎます。理事会では債券購入金額を拡大する可能性についての文言が無くなったことから、前回理事会よりは緩和縮小に近づいているとは言えるものの、9月まで継続後も延長の可能性は残していて慎重なスタンスは継続しています。水曜の講演で理事会よりもタカ派的な発言が聞かれるかどうか、今週では最大の注目材料となります。

それ以外では、細かな経済指標等はあるもののイベントの狭間といった感が強く、あまりユーロにとって大きな材料は見当たりません。米国との貿易戦争懸念も米国側がトーンを落としていることから、今週は先週ほどの影響は出て来ないと考えています。

テクニカルにはどうでしょうか。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

これもまたハッキリとしないチャートですが、3月初めのダブルトップ下抜けが大いなるダマシとなった後の上昇は2月高値と3月安値の61.8〜78.6%戻しで止まり、先週は1.2446高値となったので現在は3月安値と先週高値との押しとして61.8〜78.6%押しとなる1.22台前半に向かっている形です。

しかし、全体として見ると先週の下げは改めて下方向へのトライをしている動きにも見え、そうなると変形トリプルトップと考えられるようなチャートパターンが形成中の可能性も出てきます。現状ではまだ確定は出来ないものの可能性のみ指摘しておきます。もっとも妥当なチャートの読みとしては、1月安値と3月安値を結んだサポートラインと、2月高値と3月高値を結んだレジスタンスラインによるもちあい(ピンクのライン)です。

もちあいの場合、通常は上抜けを考えたいところですが、ここまでの動きを考えると今週の段階ではどちらにも抜けないと見る方が自然です。今週はそれぞれのラインが位置する水準をベースに、1.2225レベルをサポートに、1.2400レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週のコラム

為替に限らず相場の世界ではチャートを利用する人が多い反面、チャートを読むのが難しいと考える初級が多いことも事実です。そうした人向けにテクニカル指標の状況から自動的に売買シグナルを出すテクニカル分析支援ツールも世の中には数多くあります。

最近の傾向としてはAIが進んできていることもあると思いますが、チャートのパターンを自動的に認識し、そのパターン分析から通貨ペアの売買シグナルを表示するような支援ツールも登場し、そうしたツールの精度もかなり上がってきています。

私自身は必要性を感じないのですが、多くの通貨ペアを同時にスクリーニングにかけるといったことは、さすがにこうしたツールには敵いません。私も最近使っていますが、面白いなと思うのは、普段はあまり見ないであろうEUR/NOKとかGBP/CHFといった欧州通貨どうしのクロスで様々な分析を一覧することが出来る点です。

先週は前週のノルウェー中銀のインフレターゲット引き下げ(先週のコラム参照)からNOK買いが出ていましたし、GBP/CHFあたりも下降ウェッジの上抜けによる4時間足での買いシグナル(下のチャート参照)を出していました。

            ポンドスイス四時間足

            ポンドスイス四時間足

シグナル点灯と同時に、ターゲットも1.3193と出していましたが、1.3192まであげなかなか精度が高いと感じました。今までは名人芸と言われたようなチャート分析もそろそろAIと競い合う時代が来ているんだなということを改めて感じさせられました。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

3月12日(月)
**:** ユーロ圏財務相会議

3月13日(火)
**:** EU財務相会議

3月14日(水)
**:** メルケル首相4期目就任
16:00 ドイツ2月CPI確報値
17:00 ドラギECB総裁講演
17:45 プラートECB理事講演
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
19:45 コンスタンシオECB副総裁講演
22:30 フランス中銀総裁講演
25:45 クーレECB理事講演

3月15日(木)
17:30 スイス中銀政策金利発表
24:05 ラウテンシュレーガーECB理事講演

3月16日(金)
19:00 ユーロ圏2月CPI確報値

前週のユーロレンジ

      始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.2318 1.2446 1.2269 1.2305
ユーロ円  130.02 132.01 129.35 131.44

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

3月5日(月)
 週明け早朝のユーロドルはドイツSPDの党員投票で大連立賛成多数の結果を受けたユーロ買いからスタートしたものの、その後のイタリア総選挙で単独で政権を取れる党が無いことから反落。その後は欧州の経済指標や株式市場が強まったことからNY市場では朝方の高値圏に近づいての引けとなりました。

3月6日(火)
 欧州市場前場まではもみあいとなっていましたが、北朝鮮が米国との首脳会談を望んでいるとのニュースにユーロ円が急騰したことを受けユーロドルも上伸、NY市場では1.2420レベルまで水準を切り上げ、高値圏での引けとなりました。

3月7日(水)
 東京市場ではコーン国家経済会議委員長辞任のニュースに反応したユーロ円の売りもあって高値圏でのもみあいとなっていましたが、欧州市場に入りEUと米国との貿易摩擦に懸念する動きから一時ユーロ買いが強まり、1.2444レベルまで上昇しました。NY市場では一進一退のもみあいへと戻しやや押しての引けとなりました。

3月8日(木)
ユーロドルはECB理事会を控えて様子見が続いていましたが、総裁会見でタカ派寄りのコメントが出ることを期待した動きから一時1.2446レベルと週間高値を更新。しかし、ドラギ総裁からはタカ派的なコメントどころか相変わらず慎重なハト派スタンスが示され急反落。1.2298レベルまで水準を下げそのまま安値圏での引けとなりました。

3月9日(金)
ユーロドルは、NY市場までほとんど動意薄の展開が続き、雇用統計後に予想より強い数字に反応して1.2273レベルへと下押ししたものの、引けにかけては東京前場の水準に戻しての引けとなりました。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る