<概況>
8月8日のワシントンポスト紙報道からから米朝間の軍事緊張が高まって11日には108.727円まで下落したが、週末に新たな動きなく、北朝鮮の金委員長による「米国の行動を見守る」発言、トランプ大統領の「金委員長は良い決断をした」との発言から緊張緩和感が拡大、16日には111円に迫るところまで戻し、8日深夜急落前水準を回復していた。
しかし、17日未明のFOMC議事録公開からは米連銀のハト派的な姿勢=追加利上げに対する慎重姿勢が再確認され、よりハト派度合いが増したとして110円割れまで急落した。17日午前安値からはいったん戻したものの、トランプ政権内の混乱、スペインのISテロ、ダラス連銀総裁利上げ慎重論等から米国株安が発生、リスク回避感が強まってドル円も17日午前安値を割り込んで一段安している。
【FOMC議事録】
17日未明に公表されたFOMC議事録では、金融政策目標として掲げているインフレターゲットに到達していないことへの不満足が示され、利上げへの慎重姿勢が強まっている印象となった。そのこと自体は7月27日未明の当該会合声明文で示されたものであり、ドル円の一段安を引き起こしたきっかけであったが、今回の議事録では、より具体的な議論内容が示され、追加利上げへの慎重さが増していると市場は受け止めたため、ドル安再開感が強まった。
米ダラス地区連銀のカプラン総裁は17日深夜、金融市場で利回りが低下していることは米経済に対する警鐘だとし、次回の利上げを検討するにあたっては「非常に忍耐強くかつ思慮深く」ある必要があると述べた。今後の米経済指標、特に消費と物価動向次第ではあるが、インフレ進行が進まないようなら年内あと1回とされる利上げ確率も現在より低下してゆく可能性がある。
米連銀はイエレン議長がワイオミング州ジャクソンホールで開かれる金融シンポジウムに参加し、日本時間25日午後11時に講演すると発表した。同会合は米カンザスシティー連銀が主催し、各国の中央銀行当局者が参加する。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁もジャクソンホール会合へ参加する予定だが、同総裁が金融政策姿勢については述べない見込みとの報道もあった。
17日夜にはECBの定例理事会議事要旨が公表されたが、ユーロ高に対する懸念が指摘されたため、17日夜はユーロが売られる場面もあった。ユーロ安ドル高よりも、ユーロ円での円高がドル円での円高も助長した印象がある。
17日夜の米経済指標は概ね良好だったが、市場の反応は限定的だった。週間失業保険申請件数は23.2万件となり、市場予想の24.0万件、前週の24.4万件を下回る良好な数字だった。フィラデルフィア連銀の8月製造業景況指数は18.9で、予想の18.0を上回ったが前月の19.5を若干下回った。
【トランプ政権への懸念】
米国で発生した白人至上主義者とその反対勢力による衝突で死者が発生したが、これに対するトランプ大統領の発言をめぐり批判が強まっている。ホワイトハウスはトランプ米大統領が設置を計画していたインフラ投資に関する諮問会議の設立計画を撤回したとロイター通信社が報じた。「戦略政策フォーラム」と「製造業評議会」の参加企業トップが事件と発言をめぐって辞任していることが原因と思われる。
トランプ大統領は選挙公約で10年間に1兆ドルのインフラ投資計画を掲げたが進展していない。この諮問会議が中心となって推進する予定だったのだろうが、今回の件で計画の実効性が大幅に後退したと市場は受け止めた。
またコーン米国家経済会議(NEC)委員長が辞任するとのうわさが出たが、ホワイトハウスはこれを否定している。
17日のNYダウは274ドル安、ナスダック総合指数は123ポイント安と大幅下落した。米国株安は日経平均安を招き、ドル円にとっても大きな売り圧力となってくる。
【有事リスク、テロ不安】
スペイン東部バルセロナ中心部の路上で日本時間18日午前0時、車両が群衆に突入して13人が死亡、50人超が負傷する事件が発生した。ISが系列メディアのアマク通信を通じて犯行声明を出している。頻発するテロは市場心理も冷やす。
米朝間の緊張は緩和傾向にあるが、21日に米韓軍事演習、25日には北朝鮮の先軍記念日が控えている。米韓軍事演習の規模が当初予定よりも縮小されるか、北朝鮮への威圧性を低下させる内容の変化があれば、緊張緩和観測が拡大するが、予定通りに威圧的に実施される場合、北朝鮮が反撃的な発言、行動に出る可能性もあるのでまだ油断できないと思う。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では17日未明の急落により遅行スパンが悪化(実線を割り込む)、17日午前への続落で先行スパンから転落した。その後の反発でも遅行スパンは好転できず、先行スパン下限が抵抗となり、深夜の一段安により、両スパン悪化状態が継続している。遅行スパン悪化中は一段安警戒を優先し、戻しに入っても先行スパンが大きな壁となる印象だ。
60分足の14本相対力指数は15日夜の上昇で80ポイントを超え、16日夕刻に相場が高値を更新したのに対して指数が高値の山を切り下げる弱気逆行を見せ、17日未明からの急落で30ポイント割れとなった。その後の反発でも50ポイント台を維持できずに再び30ポイント前後まで下げている。17日午前安値と18日朝安値との間では強気逆行の気配も見られるが、50ポイント台回復、維持へ進めないうちは逆行破れからさらに一段安する可能性、ないしは連続的な逆行状態が続きながら相場が安値を更新する可能性も懸念される。
概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月16日夕高値でサイクルトップを付けて下落期に入っている。11日安値を基準とすれば、すでに4日を経過しているのでボトムを付けての反騰注意期にあるが、17日午前安値からいったん戻してから底割れしているので、17日午前安値を直近のサイクルボトムとし、底割れにより既に新たな下落期に入っている可能性も懸念される。このため、17日夜高値110.367円を上回れないうちは戻してもその後の下落で安値更新へ向かいやすいと注意する。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)110円以下での推移中は一段安警戒を優先し、11日安値試しを想定する。
(2)109円割れから戻しに入る場合は110.00円前後試しへの反発とその後の反落警戒とみる。また11日安値を割り込んだ後に109.50円超えへ戻せない場合はその後の下落で108円割れを試す可能性を警戒する。
(3)強気転換は17日夜高値110.367円超えからとし、上抜けないうちは戻り一巡からの反落、下落継続の可能性を警戒する。(了)<9:50執筆>
【当面の主な予定】
8月18日
23:00 (米) 米8月ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (7月 93.4、予想 94.0)
23:15 (米) カプラン米ダラス連銀総裁講演
オーダー/ポジション状況
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