ユーロはドイツの政局流動化による下げに注意
〇先週のユーロドル、トランプ・トレード再開によるドル買いで1.0687レベルまで下押し
〇買い戻し入り1.08台に乗せるも、独政局流動化の動きからユーロ売り目立ち週間安値に近づきクローズ
〇ドイツ連立政権崩壊、ユーロにとっては悪材料
〇6月安値と5月安値の重なる1.06台半ばや、年初来安値1.0600レベルを試す流れになっていきやすい
〇今週は1.0625レベルをサポート、1.0800レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通しと予想レンジ
先週前半はハリス副大統領がリード差を縮め大統領選は大接戦になるのではないかとの見方による利食いのドル売りが広がり、ユーロドルもじり高の流れを辿りました。しかし開票速報が始まった直後からトランプ前大統領が優勢となり、トランプ・トレード再開によるドル買いの動きで1.0687レベルまで下押ししたものの、その後は買い戻しが入り1.08台乗せ。しかし週末を控えてドイツの政局流動化の動きからユーロ売りが目立ち、週間安値に近づいての週末クローズとなりました。
大統領選、また議会の途中結果とそれに対するコメントはドル円週報に書きましたので、こちらでは詳しくは触れず、ドイツ国内の政局について書いておきたいと思います。
ドイツの連立政権はSPD(社会民主党)、緑の党、FDP(自由民主党)の3党によるものでしたが、政策面では対立も多く、これまでも度々ニュースに取り上げられてきました。そして、ここ数カ月で対立が強まり、先週6日にSPDのショルツ首相がFDPのリントナー財務相を解任、連立崩壊が現実となりました。そもそもの原因はSPDが財政拡大の予算案を望んでいることに対してリントナー財務相が難色を示していたことがきっかけですが、解任したことでSPDが少数与党となりました。
ちなみにドイツの主要政党の議席(全議席734、現過半数367)は以下のようになっています。
SPD 207 \
みどりの党 117 旧連立与党 415
FDP 91 /
CDU/CSU 196
AfD 77
その他 45
欠員 1
FDPが抜けたことで現在は少数与党(324議席)となっていますが、ドイツでは首相は議会を解散できず、解散権を持っているのは連邦大統領です。ただ、議会では信任投票を行うことは出来るため、信任投票が現実的には解散に向けての手続きとも言えます。SPDはこの信任投票を遅らせようとし、FDPと現在最大支持率を持つCDU/CSUは早期の信任投票を望んでいる状況です。
解散総選挙となると、おそらく第1党はCDU/CSU、第2党は極右のAfD、第3党がSPDです。フランスの総選挙のような状況にも見えますが、総選挙となるとCDU/CSUが政権に復帰する流れが見えてきます。ただ、期間も含めてそれまでのドイツ国内での政局流動化を考えると、ユーロにとっては悪材料と考えざるを得ないというのが現在の状況と言えるでしょう。
テクニカルはいつもの日足チャートをご覧ください。
大統領選後のドル買いの動きもありますが、ドイツの政局流動化も重なったことでユーロドルは年初来安値と年初来高値の78.6%押しを割り込んできました。こうなると6月安値と5月安値の重なる1.06台半ば、そして年初来安値の1.0600レベルを試す流れになっていきやすいと考えられます。
当面は戻り売りを考える回転になって行くでしょうから、今週は1.0625レベルをサポートに、1.0800レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
今週のコラム
今週もユーロ円日足を見ておきましょう。
先週はなかなか抜けられなかった7月高値と8月安値の半値戻し164.90(赤の太線)を上抜けたことで上値のターゲットとして61.8%戻しの167.37を示しましたが、トライしきれずに反落してきたことで逆に売れていない動きが出て来ているように思います。上昇チャンネルも下抜けてきたことで、9月安値と10月高値の38.2%押し162.27(青のターゲット)を視野に入れ始めた可能性が出ています。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
11月11日(月)
**:** NY市場休場
11月12日(火)
16:00 ドイツ10月CPI
16:00 英国10月失業率
17:00 フィンランド中銀総裁講演
19:00 ドイツ11月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏11月ZEW景況感
23:00 チポローネECB理事講演 ☆
11月13日(水)
22:30 米国10月CPI ☆
11月14日(木)
09:01 英国10月住宅価格
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏9月鉱工業生産
21:30 10月ECB理事会議事要旨公表 ☆
27:30 シュナーベルECB理事講演 ☆
30:00 英中銀総裁講演 ☆
11月15日(金)
16:00 英国7〜9月期GDP速報値 ☆
16:00 英国9月鉱工業生産、貿易収支
16:45 フランス10月CPI
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
11月4日(月)
週明けのユーロドルはトランプ・トレードの巻き返しでユーロが買われてのスタート、欧州市場昼頃に1.0914レベルの高値をつけましたが、引けは始値水準へと押しました。
11月5日(火)
ユーロドルは終日じり高、ポジション調整によるドル売りの動きから1.0936レベルまで上昇しましたが、値幅は64pipsとドル円に比べると静かな展開でした。
11月6日(水)
東京前場からトランプ当確を背景としたトランプ・トレードが加速したことで、ユーロドルも1.06台後半へと押した後、1.07台に戻して引けました。全ての市場が大統領選のご祝儀相場的な動きを見せているものの、短期的には行き過ぎ感も出ていました。
11月7日(木)
ユーロドルでも前日下げた動きに対して買い戻しが入り1.0824レベルまで買われたあとにやや押して引けましたが、前夜のドイツ国内での連立政権崩壊のニュースは不思議とあまり材料視されていませんでした。
11月8日(金)
金曜のユーロドルはNY市場までは若干上値が重たい程度の動きが続きましたが、NY市場では米経済指標に反応したドル買いから1.0687レベルまで水準を下げました。また11月6日にショルツ首相がリントナー財務相を解任し、連立政権が崩壊していましたが、大統領選のニュースも一巡し、改めてユーロ売りに注目が集まる流れとなっての週末クローズとなりました。
ディスクレーマー
アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.14
東京市場のドルは156円台まで上昇、介入警戒感が低いことからドルのじり高継続か(24/11/14)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、ドル独歩高の展開が継続し、7月23日以来となる156円台乗せとなった。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.14
ドル円 基本はドル高継続、ただ米指標発表に要注意(11/14夕)
東京市場はドルがさらに続伸。7月23日以来となる156円台を一時示現する局面も観測されていた。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:川合 美智子
2024.11.12
ユーロ円 短期トレンドが変化。上値余地が限られる可能性(24/11/12)
ユーロ/円は164円台半ばから163円台後半に押し戻されて引けています。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:川合 美智子
2024.11.11
ユーロ円 テクニカル週報(2024年11月第2週)
直近の週足を見ると、高値圏から陰線が出ており、単体では下値リスクのやや高いものです。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。