4年半ぶりに利下げ実施、パウエル議長は利下げを急がず
【今回のポイント】
〇 政策金利は4年半ぶりに引き下げ、下限4.75%、上限5.00%
〇 パウエルFRB議長は「利下げを急がない」姿勢を強調
〇 中長期的には主要通貨に対してドルが売られる地合いに
【FOMCの結果】
連邦準備制度理事会(FRB)は、9月17日−18日の連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利を下限4.75%、上限5.00%と4年半ぶりに引き下げた。FOMC声明では、景気判断部分で雇用の評価を下方修正した一方、経済見通し部分で「インフレ率が持続的に2%に向かいつつあることに自信を深めている」との表現が追加されたほか、雇用とインフレの目標達成に対するリスクがほぼ均衡しているとの判断が示された。これを受けて、フォワードガイダンス部分では従前のインフレに加え「最大限の雇用を支える」ことに強くコミットすることが追加された。
今回のFOMCでは、ボウマンFRB理事が0.25%の利下げを主張し反対票を投じた。全会一致とならなかったのは22年6月以来で、FRB理事が反対したのは05年9月以来と非常に判断が難しい内容となった。注目されたドットチャート(政策金利見通し(中央値))は、24年が4.4%と前回から0.75%ポイント下方修正され、年内は0.50%の追加利下げ(0.25%を2回)を見込むほか、25年は前回同様4回の利下げ(1.00%)が見込まれている。
パウエルFRB議長が、FOMC後に行った記者会見での発言は下記の通り。
「この決定は、政策スタンスを適切に調整すれば、緩やかな成長とインフレ率が持続的に2%まで低下する中で、労働市場の力強さを維持できるとの確信が強まったことを反映」
「全体として、広範な指標は労働市場の状況が19年のパンデミック直前よりもタイトでなくなっていることを示唆」
「労働市場はインフレ圧力を高める要因にはなっていない」
「現在、インフレ率は目標にかなり近づいており、インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が強まっている」
「インフレ率が低下し、労働市場が冷え込むにつれて、インフレの上振れリスクは軽減し、雇用の下振れリスクは増加した」
「我々は現在、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡しているとみる」
「経済が発展するにつれて、金融政策は最大限の雇用と物価安定の目標を最良に推進するために調整される」
「我々は多くのデータを踏まえて0.5%の利下げが正しいことだと判断」
「今後もデータ次第で利下げ幅は変わり、会合毎に意思決定をしていく」
「中立金利の推定には幅がある」
「我々は今後、経済が見通し通りであれば、引締め的な政策を解除する必要があると考えている」
「今回の利下げ幅が新しいペースだと考えないで欲しい」
「時間をかけて政策金利をより中立的なレベルまで引下げるつもりだ」
「(大統領選挙前の利下げで政治的な動機があるとの批判の声に対しては)金融政策決定で政治的なことについては議論されない。」
【市場の反応】
市場想定通りの大幅利下げとなったが、発表直後は、142円台前半から一気に140円45銭までドルは急落した。ただ、30分後にパウエルFRB議長の記者会見で、インフレに対する勝利宣言を行うわけではなく、利下げを急がない慎重な姿勢を強調したことから、ドルは142円台まで値を戻した。FOMC前に一時3.59%まで低下した10年債利回りは3.7%台まで上昇。株式市場もエヌビディアなどハイテク株がそろって上昇するなど主要3指数は買われ、NYダウは連日で史上最高値を更新する「いいとこ取り」のような反応を見せた。
【今後、ドルはどう動く?】
ドルインデックスはFOMC通過後、100の大台を割り込むなどドルは主要通貨に対してじりじりと売られている。4年半ぶりの利下げに転じ段階的な利下げが見込まれている以上、緩やかなドル安の流れは避けられないだろう。一足先に利下げに転じたユーロと比べても想定利下げ幅が大きいドルは売られやすく、現在のユーロ・ドルは1.115水準と2022年3月以来のドル売りユーロ買いの地合いとなっている。
一方、対円ではドル買い円売りにやや傾いている。これは、20日の日銀金融政策決定会合後の植田和男日銀総裁記者会見において、市場との対話を重視するなど追加の利上げに慎重な姿勢が確認できたことで、年内利上げ期待が後退したことが影響した。ただ、日銀は年明けにも、各種のデータを確認して利上げを実施する公算は大きいことから、日米金利差が縮小する流れは変わらない。ドルは一時的に145円台を付けることはあっても、150円台、160円台といったドル買い円売りが強まることは考えにくい。
今後は11月5日の大統領選挙に関心が向かい、情勢を見極めたいとするムードが強まり、為替市場はこう着感を強めるだろう。テレビ討論会後、民主党候補のハリス氏が優勢になったとの声が聞かれるも、世論調査は拮抗しており、激戦7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシン)は相変わらず接戦の様子。クリントン氏とトランプ氏が争った2016年大統領選挙のように、テレビ討論会の優劣と大統領選挙の結果が真逆となるケースもあることから、ドルが主要通貨に対して方向感に乏しい地合いは11月頃までは続くとみる。
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安に
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表、植田総裁のタカ派姿勢で円全面高に
9月19日−20日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁の利上げ慎重姿勢で円全面安に
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日・・・4年半ぶりの利下げを実施、パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢強調
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金利据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利を0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日
12月12日
オーダー/ポジション状況
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