6月以来の利下げ実施へ、今後の見通しはデータ次第で明言せずか
【今回のポイント】
〇 政策金利は0.25%引き下げて4.00%に
〇 今後の利下げ見通しは「データ次第」として明言せず
〇 じりじりとした中長期的なユーロ安円高推移か
【市場コンセンサスは何?】
9月12日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。市場コンセンサスは下記の2点と考える。
・政策金利は0.25%引き下げて4.00%に
・今後の利下げ見通しは「データ次第」とし年内利下げスケジュールなどは明言せず
【前回会合の議事要旨】
・「(次回9月会合は)金融政策の引き締め度合いを再評価するのに良い時期だ」
・「チーフエコノミストのレーン専務理事の提案で、決定は全会一致」
・「インフレ鈍化が実際に軌道に乗っているかを確認するため、より多くのデータを忍耐強く待つ余裕がある」
・「政策金利をより緩やかに引き下げる対応も可能になる」
・「特定の道筋を事前に確約すべきでない」
・「賃上げに敏感なサービス価格の上振れに警戒」
・「実体経済の注視が重要」
・「(9月会合には)オープンマインドで臨むべきだ」
【何がサプライズになる?】
ECBは今年6月以来の利下げを実施する予定だ。欧州連合(EU)が8月30日に発表した8月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は、前年比2.2%上昇と3年ぶりの低水準まで鈍化した。7月の2.6%まで6カ月連続で2%台半ばが続いていたが、8月は2%台前半まで落着くなどインフレの沈静化が確認できたことで利下げ実施を妨げる材料はないといったところだ。
今回のECB理事会では、今後どのような利下げスケジュールをECB理事会が想定しているかに注目が集まっている。再びインフレが強まる可能性はゼロではないうえ、フランスなど欧州の政治状況も懸念材料として意識されよう。年内あと2回の会合での利下げ実施の可能性に言及するか注目だが、慎重なラガルドECB総裁は、明確なスケジュールは言及せず「データ次第」というコメントに終始すると見られる。つまりサプライズが発生する可能性はほぼないと考える。
【では、ユーロはどう動く?】
今回はサプライズには乏しいことから、ユーロは小動き終始を想定する。現状、ECB、イングランド中央銀行(BOE)、カナダ中央銀行、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)など主だった中央銀行は利下げに転じた。そして、今月17−18日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)にて米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げに転じる公算が大きいことから、先進国の中央銀行で利下げを実施していないのは、オーストラリア準備銀行(RBA)ぐらいで、おまけで南アフリカ準備銀行、トルコ中央銀行といった状況となりそうだ。
一方、日本銀行は段階的な利上げを実施する公算が大きい。足元、利上げを行っている国は、米国の制裁を受けているロシアを除くと日本くらいだ。年内はさすがに無いかもしれないが、データ次第では年明けに追加利上げを実施する可能性がある。つまり円と主要通貨の金利差は縮小する流れにあり、ユーロも同様だ。
ユーロ・円は、短期的には多少上下するだろうが、2020年5月から続いていたユーロ高円安の流れは終了し、中長期的にはユーロ安円高の流れに転換したと考える。ECBの段階的な利下げスケジュールは見えていないほか、11月の米国大統領選挙という不透明要因も控えているが、日欧金利差の縮小傾向は2025年も続くだろう。じりじりとした中長期的なユーロ安円高の流れを想定する。
【最近のECB関係者の発言は?】
ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾った。
9月4日、シムカス・リトアニア中銀総裁
「9月利下げを支持する説得力のある根拠は多い」
「10月の利下げはほぼないだろう」
9月4日、チポローネECB専務理事
「ECBの政策は、ユーロ圏のインフレ率が引き続き鈍化していることからは追加利下げが可能になる」
「ECBの政策は、過度に制約的になるリスクがある」
8月30日、ビルロワドガロー・フランス中銀総裁
「9月利下げは公平かつ賢明となる可能性」
「市場は2025年の金利が2.00−2.50%あたりを妥当とみている」
「ECBは成長不足のリスクを警戒しなければならない」
8月30日、ミュラー・エストニア中銀総裁
「9月ECB理事会での利下げの可能性は高い」
8月30日、レーン・フィンランド中銀総裁
「成長見通しは予想を下回っており、9月ECB理事会での利下げ観測を支持」
8月30日、シュナーベルECB専務理事
「政策は徐々に、慎重に進められるべき」
「25年末のインフレ2%達成に向けて条件が整った」
「金融政策はインフレ目標2%に焦点を当てるべき」
「政策緩和ペースは機械的であってはならず、データ次第となるべき」
「ユーロ圏では景気後退より、軟着陸の可能性が高い」
「ユーロ圏のインフレ率は依然として高い」
8月30日、ナーゲル独連銀総裁
「2%のインフレ目標は視野に入っているが、まだ達成はできていない」
「景気回復がやや強まれば、インフレ目標への回帰が遅れるリスクがある」
「物価安定への適時回帰は当然のことと考えるべきではない」
8月27日、クノット・オランダ中銀総裁
「9月ECB理事会での利下げ判断の前に、もう少しデータを確認したい」
8月24日、レーン・フィンランド中銀総裁
「我々は為替レートをターゲットにしていない」
「金利決定について事前にコミットしない」
「ディスインフレと弱い経済が9月利下げを示唆」
「インフレ率の低下傾向は軌道に乗っている」
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安の展開
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・想定通り政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」か
10月17日
12月12日
オーダー/ポジション状況
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