財政緊縮策を評価する展開、トルコ中銀の覚悟確認で保合い上放れか
【先週のトルコリラ】
先週のトルコリラは、トルコ政府による財政緊縮策を材料に一時4.88円台まで上昇する場面が見られたものの、トルコ中央銀行(トルコ中銀)による政策金利発表を控え、積極的な上値追いは手控えられた。
13日、トルコ政府の経済チームを率いるユルマズ副大統領とシムシェキ財務相は、包括的な財政緊縮策を発表した。歳出削減を進めるとともに、予算配分を効率化して公共投資を重要なプロジェクトに絞り込む考えを示した。シムシェキ財務相は「我々は財政規律の確保によって、国家の経済的な土台を強化したい。今回の政策パッケージにおいては効果的な分野に投資を振り向けることが重要な要素になる。構造改革を加速させ、財政の領域でも多くの改革を行う」と説明。
また、「本日の措置でディスインフレに貢献していく。我々は公共部門の効率性を高めることでお金の節約を図る」「物価安定を持続させ、昨年の地震被災地の復興費用を賄い、環境対策やデジタル化を推進する上でも、財政規律が必要不可欠だ」との見方を示した。
財政緊縮策では、政府機関の財・サービス購入予算は10%削減され、全体の投資規模も15%縮小し、公務員の新規採用は退職者と同人数に限定された。市場では、「財政緊縮策を発表した後の23日の金融会合でサプライズ利上げを行うのではないか?」との思惑も浮上。
トルコリラは一時、5月1日以来となる4.88円台まで買われたが、買い一巡後は、13日の3月小売売上高が前月を下回ったほか、17日の5月予想インフレ(翌12カ月)も前月を下回ったことなどから利上げ観測がやや後退。4.83円水準でのもみ合い推移となった。
トルコリラ・円(東京時間:5月13日―5月17日)※Investing.comの日足を参照
始値:4.8300円
高値:4.8585円
安値:4.7575円
終値:4.8300円
【先週と今週の重要指標】※時間は東京時間
5月13日
16時00分、3月経常収支、前回:−36.4億ドル、市場予想:−38.0億ドル、結果:−45.4億ドル
16時00分、3月小売売上高、前回:25.2%、結果:19.4%
5月17日
16時00分、5月予想インフレ(翌12カ月)、前回:35.17%、結果:33.21%
5月23日
20時00分、政策金利、前回:50.00%、市場予想: 50.00%
5月24日
17時00分、4月外国人観光客(前年比)、前回:15.7%
※予定は変更することがございます。
【今週の見通し】
今週のトルコリラは、23日のトルコ中銀の政策金利発表に関心が集まろう。
2024年末のCPI上昇率の中間値の予想を36%から38%に引き上げた一方、17日に発表された5月予想インフレ(翌12カ月)は33.21%と前月の35.17%から低下。「高いインフレを抑えるためには利上げも辞さない」とトルコ中銀がタカ派な姿勢を示しているが、「先週の財政緊縮策に続き、サプライズ利上げによってインフレを叩く」といったタカ派シナリオは微妙なところだ。
3月小売売上高の低迷などトルコの足元の経済指標は弱いことから、必要以上の利上げは回避したいのが本音だろう。財政緊縮策でトルコの本気度を世界に示したことから、ここで利上げを実施することで、「全力でインフレを抑制する」という姿勢を誇示し、世界から投資マネーを集めたいとするシナリオがトルコ政府にはあるのかもしれない。
足元、目立った選挙が予定されていないことから、今しばらくはトルコ国民に少々泣いてもらって、インフレ抑制を優先する(トルコ景気よりもインフレ抑制を優先)という考えも理解できる。どちらにしてもトルコ経済が疲弊していることから、「サプライズ利上げを行ったからトルコリラは買い」というシンプルな流れは通じない可能性がある。
一方、テクニカル面は良好だ。日足ベースでは、3月13日の史上最安値4.5227円から下値をじりじりと切り上げており、下値不安は乏しい。日足の一目均衡表の雲上限で安定しており、50日移動平均線もようやく右肩上がりに転じた。4月29日高値と5月3日安値をそれぞれ起点としたミニ三角保合いを形成していることで、23日の政策金利発表のタイミングで上下どちらかに放れると想定する。サプライズ利上げをしなくても、インフレ抑制や財政緊縮に対するトルコ中銀の前向きな考え及び覚悟が確認できれば、トルコリラは買い優勢になるのではないかと考える。
トルコリラ円日足
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
オーストラリアドル(AUD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
豪ドルWeekly 100円を挟んだもみ合い、CPIで早期の利下げ観測が強まる可能性も(24/11/22)
今週の豪ドルは、豪準備銀行(RBA)が公表した理事会要旨でタカ派姿勢が確認されたものの、買いは続かず、100円水準を挟んだ小動きの相場展開が続いた。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:川合 美智子
2024.11.22
ユーロ円 下値リスクが点灯中。162円台を回復出来ずに越週した場合は一段の下落へ(24/11/22)
ユーロ/円は163円台前半から161円台後半まで断続的に売られ、結局安値圏で引けています。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.05.21
トルコリラ円見通し ドル円の反騰継続で5月16日安値からの戻り続く(24/5/21)
トルコリラ円の5月20日は概ね4.85円から4.80円の取引レンジ、21日早朝の終値は4.84円で先週末終値の4.83円からは0.01円の円安リラ高だった。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2024.05.20
トルコリラ円見通し ドル円の反騰を追いかけて16日午前安値からV字反発(24/5/20)
トルコリラ円の5月17日は概ね4.84円から4.79円の取引レンジ、18日早朝の終値は4.83円で前日終値の4.81円からは0.02円の円安リラ高だった。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。