ECB理事会(12/14開催)のポイント:ラガルド総裁が金利引き下げに言及するか注目(12/13)

今回のECB理事会での政策金利据え置きは当然の結果となるだろう。

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ECB理事会(12/14開催)のポイント:ラガルド総裁が金利引き下げに言及するか注目(12/13)

ラガルド総裁が金利引き下げに言及するか注目

【今回のポイント】

〇 4.5%の政策金利は現状維持で利上げ余地は無い

〇 利下げに関する話は検討及び時期も含め「時期尚早」

〇 2024年、2025年のインフレ見通しを大幅に下方修正

【市場コンセンサスは何?】

2023年最後となる12月の日米欧中央銀行の政策発表は、12−13日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を皮切りに、14日に欧州中央銀行(ECB)理事会、18日−19日に日本銀行の金融政策決定会合が開催される。今回のECB理事会での市場予想は、下記の二点である。

・政策金利4.50%の据え置き
・利下げに関する話は検討及び時期も含め言及しない

ECBは10月の理事会にて、11会合ぶりに利上げを見送った。4.5%という金利水準はユーロ誕生以降、過去最高である。

足元の重要な経済指標である11月の消費者物価指数は、前年同月比2.4%上昇と、伸び率は7カ月連続で鈍化しており、2021年7月以来の低水準となった。コアも同3.6%上昇と10月までの4%台から大きく鈍化している。こうしたインフレデータを考慮すると、今回のECB理事会での政策金利据え置きは当然の結果となるだろう。

市場は既に「ECBはいつ利下げを開始するか」に関心が向かっており、早ければ2024年第一四半期に行う可能性を指摘する声が多くなっている。LSEG(ロンドン証券取引所グループ)の金利先物市場のデータでは、市場が織り込んでいる利下げのタイミングは、3月もしくは4月とのことだ。そして、2024年に0.25%幅で6回程度の利下げもすでに織り込まれており、だいぶ先走っている感じがする。

ラガルドECB総裁やカジミール・スロバキア中銀総裁のコメントを見ると、利下げのタイミングはもちろん検討の有無ですら「時期尚早」といったニュアンスだ。ある意味、植田和男日銀総裁が言う「粘り強く金融緩和を行う」と同じ意味で「インフレを叩くために粘り強く高い金利水準を維持する」といったところだ。

【何がサプライズになる?】

今回のECB理事会のポイントは、利下げに対するラガルドECB総裁の発言に尽きると考える。ラガルドECB総裁のスタンスは下記の発言にもある通り「観察」だ。今の政策金利を維持しつつ、今後の消費者物価指数やエネルギー価格の動向、そして、賃金動向もじっくり確認してから利下げを検討すると考える。どれだけの期間「観察」するのか記者会見で発言すれば、それがベンチマークとなってしまうため、観察期間の質問に対する明確な回答は行わないだろう。

さすがに追加の利上げの可能性はまだ排除しないと思うが、追加の利上げ実施は現実的ではないので、今回のサプライズは「ラガルドECB総裁が利下げの検討及び時期に対して言及」に絞られる。

【では、ユーロはどう動く?】

〇コンセンサス通りだった場合

ユーロは無風、もしくは少し買戻しが入るだろう。仮に2026年のインフレ見通しを1%台前半に設定するのであれば、瞬間的なユーロ売りの材料となりそうだが、利下げを織り込む市場の雰囲気は、米国と同じくらい欧州も先走っているため、2026年のインフレ見通しを大幅に下に設定するぐらいでは、大きくユーロを売る動きは回避されるだろう。むしろ「アク抜け」的な雰囲気が強まり、買戻しが入るぐらいは想定しておきたい。さすがに日銀金融政策決定会合を来週控えていることから、160円台回復という地合いは考えにくいが、先週の乱高下前の水準である7日の158円台は十分狙えるだろう。

〇サプライズだった場合

今回のサプライズは「ラガルドECB総裁が利下げの検討及び時期に対して言及」を定義しているわけなので、ストレートにユーロ売りが強まると考える。「第一四半期後の4月に利下げを検討」といった具体的な話があれば、ユーロ売りはより強まろう。来週の日銀会合に対する関心も高まっていることから、7日の安値153円24銭を下回るような展開はいったん回避されそうだが、「ユーロ全面安」という地合いとなれば、じりじりとしたユーロ売りが進む可能性は意識しておきたい。中長期的な調整局面となれば、4月から5月にかけてもみ合った150円水準がメドとして意識されよう。

【最近のECB関係者の発言は?】

ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾ってみた結果をまとめると下記の通りである。

・追加利上げの可能性は残っているが、インフレデータを見る限り、実施の可能性は低い
・利下げの話および実施時期の議論は時期尚早である

カジミール・スロバキア中銀総裁(12月6日)
「来年第一四半期に利下げに踏み切るという市場の見方は非現実的である」

シュナーベルECB理事(12月5日)
「最新のインフレデータを受けて、追加利上げの公算はかなり低い」
「景気後退が長期化するとは見ていない」

デギントスECB副総裁(12月4日)
「最近のインフレデータはいいニュースでポジティブサプライズだ」

ナーゲル独連銀総裁(12月1日)
「追加利上げの可能性は排除しない」
「同時に利下げの可能性について考えるのは時期尚早」

ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁(11月29日)
「ECBの利下げ開始は来年半ばになる見通し」
「来年4月の利下げ予想は、やや楽観的と思われる」

ナーゲル独連銀総裁(11月28日)
「インフレ見通しが悪化すれば、再利上げが必要になる」

ラガルドECB総裁(11月27日)
「景気は年内の残り期間、弱い状態が続く公算が大きい」
「雇用の伸びが勢いを失いつつある兆しが一部にある」

デコス・スペイン中銀総裁(11月25日)
「ユーロ圏のリセッションはあり得る」

ラガルドECB総裁(11月24日)
「金利については既に多くのことを実施してきた、現在は観察することが可能」

ホルツマン・オーストリア中銀総裁(11月24日)
「追加利上げの可能性は、利下げよりも小さくない」
「何がまだ起こりうるか、という点についてECB内では予想が分かれている」

【2023年スケジュール】

※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)

9月21日(木)−22日(金)・・・現状の金融緩和方針を維持したことで、市場はやや円安
10月30日(月)−31日(火)・・・想定通りのYCC再修正に留まったことで、市場は円安の反応
12月18日(月)−19日(火)・・・金融政策正常化の下準備が確認できる内容となる可能性

米連邦公開市場委員会(FOMC)

9月19日(火)−20日(水)・・・利上げ見送り、ややタカ派な姿勢が確認できたことで、市場はドル買いで反応
10月31日(火)−11月1日(水)・・・利上げ見送り、パウエル発言をややネガティブ視しドルはやや軟調
12月12日(火)−13日(水)・・・利上げ見送り、ドットチャートでは2024年末にかけて4回程度の利下げを織り込む予定

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)

9月14日(木)・・・0.25%引き上げで政策金利は4.5%、市場はユーロ売りで反応
10月26日(木)・・・想定通りの現状維持でユーロは凪相場
12月14日(木)・・・?

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