ドル円の下落とドル高リラ安で史上最安値更新
〇トルコ円、12/4午前はドル円続落と対ドルでのトルコリラ史上最安値更新により一時5.03つける
〇ドル高リラ安基調により右肩下がりの展開続く、越年して安値試しを続ける可能性も警戒
〇対ドル、本日午前に史上最安値を更新、初めて1ドル29リラ台に到達
〇12/1発表のイスタンブール11月製造業景況指数は47.2、7月から5か月連続で強弱分岐点の50を割る
〇トルコ中銀、保護預金制度(KKM口座)縮小へ新たな規制緩和策を導入
〇本日はトルコ11月消費者物価指数と生産者物価指数の発表、インフレの高進がまだ続くか
〇5.10以下での推移中は一段安警戒とし、5.02割れからは5.00前後への下落を想定
〇5.08から5.10にかけての水準は戻り売り有利とする
【概況】
トルコリラ円の12月1日は概ね5.14円から5.07円の取引レンジ、12月2日早朝の終値は5.08円で前日終値の5.13円から0.05円の円高リラ安だった。週間では11月24日終値5.18円から0.10円の円高リラ安だった。
ドル/トルコリラにおけるドル高リラ安はややペースが鈍っている印象もあるが継続しており、対ドルでトルコリラは14週連続の下落、11週連続で史上最安値を更新している。そこにドル円の下落が重なったことでトルコリラ円はリラ安と円高の両面から圧されて11月30日に5.06円を付けて取引時間中の史上最安値を更新した。
11月30日深夜はドル円が反発したことで5.14円までいったん戻したものの、12月1日深夜にドル円が一段安したために終値を5.08円として終値ベースでの史上最安値を更新した。
12月4日午前にはドル円の続落と対ドルでトルコリラが取引時間中の史上最安値を更新したことにより一時5.03円まで取引時間中の最安値を更新している。
【ドル円の下落収まらず、トルコリラ円の下落に拍車かかる】
ドル円は11月13日に151.90円を付けて昨年10月21日高値151.94円に迫ったものの届かず、両高値がダブルトップとなり下落に転じた。政府日銀による市場介入への警戒感から売られ152円へのトライをいったんあきらめたところ、11月14日の米CPIが予想以上に鈍化したことで米国のインフレ低下が顕著となり米FRBの利上げ終了と来年前半の利下げ開始への期待感が強まって米長期債利回りが低下したためにドル円の下落が勢い付いた。目先の売られ過ぎに対する買い戻しで反発しても戻り売りにつかまって一段安を繰り返しており、下落規模は3月8日から3月24日への下落時や6月30日から7月14日への下落時に近い勢いを見せているため、今回も11月13日高値から8円前後規模の下落幅となる可能性もある。
トルコリラ円としてはドル高リラ安基調により8月24日に反騰した後は右肩下がりの展開を続けてきたが、ドル円が戻す場面で若干買われてもドル円の反落に合わせて一段安する下落パターンに陥っている印象だ。当面は史上最安値の落ち着きどころを探る展開と思われるが、昨年8月2日安値から6か月目の今年1月16日に安値を付けて戻し、さらに6か月目の7月18日に安値を付けて戻してきた半年周期を考えると、越年して安値試しを続ける可能性もあると警戒したい。
【対ドルでは取引時間中の史上最安値更新が続く】
ドル/トルコリラの12月1日は概ね28.96リラから28.65リラの取引レンジ、12月2日早朝の終値は28.89リラで前日終値の28.85リラからは0.04リラのドル高リラ安だった。
日足の終値ベースでは11月28日終値28.89リラで史上最安値とした後は安値更新を回避しているものの12月1日終値は最安値と同水準となった。11月29日安値28.95リラを超えて12月1日は28.96リラへ取引時間中の史上最安値を更新した。
週間では11月24日終値28.86リラから0.03リラのドル高リラ安だったが、週間ベースでは8月最終週から14週連続のドル高リラ安、9月第4週からは11週連続で史上最安値更新を続けている。
12月4日午前には29.05リラを付けて史上最安値を更新、初めて1ドル29リラ台に到達した。
12月1日発表のイスタンブール11月製造業景況指数は47.2となり10月の48.4から悪化、7月から5か月連続で強弱分岐点の50を割り込んでいる。
【リラ建て保護預金はさらに縮小へ】
トルコ中銀は2021年のリラ暴落に際して導入されたリラ建て預金に対して為替差損を補填する保護預金制度=KKM口座の縮小へ新たな規制緩和策を導入した。
トルコ中銀は12月1日、KKM口座に適用する預金金利は政策金利を下回らないとする規制を取りやめて政策金利の85%未満にしてはならないと緩めた。政策金利を下回る預金金利とすることでリラ建て預金の魅力を低下させて預金者に保護政策無しの通常リラ建て預金へのシフトを促すものだが、預金者にとってはリラ安とインフレが収まらない中で外貨預金へシフトする動きも強まると思われる。
エルドアン大統領が三選した後にウォール街の元銀行家であるエルカン氏がトルコ中銀総裁に就任し、エルドアン大統領は高インフレが進行しても利下げを強行してきた非伝統的な金融政策姿勢を封印して中銀新総裁の政策に干渉せず、中銀はインフレ対策とリラの信用拡大のために大幅利上げを繰り返して外貨準備高を増加させて大手格付け会社や外資による評価を上げてきた。しかしインフレ率はまだ60%超えており11月23日の5%追加利上げにより政策金利が40%に引き上げられてもまだ大幅な実質マイナス金利状態にある。
今回のKKM口座縮小への誘導政策も短期的にはリラ売り要因とされるが、市場は年末に1ドル30リラへ向かうとの予想が中心となっており、12月4日に1ドル29リラに到達したことでその可能性も高まってきた印象だ。
本日はトルコの11月消費者物価指数と生産者物価指数の発表がある。市場の事前予想はCPI上昇率は全体で前月比3.9%上昇(10月は3.43%)、前年同月比が63.0%上昇(10月は61.36%)となっており、インフレの高進がまだ続きそうだ。
【60分足 一目均衡表・サイクル分析】
トルコリラ円の概ね3日から5日周期の底打ちサイクルでは、11月30日午前に29日午前安値を割り込んでから29日深夜高値を超える反騰となったため、30日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして30日深夜から12月4日にかけての間への上昇を想定し、12月1日午前時点では反落警戒期として5.10円割れを弱気転換注意とし、5.08円割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
12月2日未明に5.10円を割り込み4日午前には一時5.03円まで下げているため、30日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5日午前から7日午前にかけての間への下落を想定する。強気転換には5.10円を超えてさらに続伸する上昇が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では12月1日深夜の反落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落し、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところから下げ再開とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は11月30日深夜の上昇時に70ポイントを超えたがその後の反落で12月4日午前には30ポイントを割り込んでいるので50ポイント以下での推移中は一段安警戒とする。50ポイント超えからは強気転換注意とするが、強気転換には55ポイントを超えてその後も50ポイント以上を維持する必要があるとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5.02円を下値支持線、5.10円を上値抵抗線とする。
(2)5.10円以下での推移中は一段安警戒とし、5.02円割れからは5.00円前後への下落を想定する。5.00円以下は反騰注意とするが、5.08円以下での推移なら5日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)5.08円から5.10円にかけての水準は戻り売り有利とする。5.10円超えからは5.12円試しとするがその後の反落警戒とする。
【当面の主な予定】
12月4日
16:00 11月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (10月 3.43%、予想 3.9%)
16:00 11月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (10月 61.36%、予想 63.00%)
16:00 11月 PPI(生産者物価指数) 前月比 (10月 1.94%)
16:00 11月 PPI(生産者物価指数) 前年同月比 (10月 39.39%)
12月7日
20:30 週次 外貨準備高 12月1日時点 グロス (11月25日時点 910億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 12月1日時点 ネット (11月25日時点 358.1億ドル)
23:30 11月 財務省現金残 (-822.47億リラ)
12月11日
16:00 10月 鉱工業生産 前年比 (9月 -0.1%)
16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 4.0%)
16:00 10月 失業率 (9月 9.1%)
16:00 10月 経常収支 (9月 18.76億ドル)
注:ポイント要約は編集部
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