ECB理事会(10月26日開催)のポイント:サプライズ無しでユーロは凪相場のままか?

10月下旬から11月上旬の中央銀行による政策発表は、24日のハンガリー中銀が市場予想を0.25%下回る0.75%の利下げ(13.0%→12.25%)を発表する波乱のスタートとなった。

ECB理事会(10月26日開催)のポイント:サプライズ無しでユーロは凪相場のままか?

ECB理事会(10月26日開催)のポイント:サプライズ無しでユーロは凪相場のままか?

【今回のポイント】

〇 4.5%の政策金利は現状維持で今後も利上げの考えは無し

〇 PEPP再投資終了時期の前倒し議論は先送り

〇 サプライズは想定しにくいのでユーロは凪相場

【市場コンセンサスは何?】

10月下旬から11月上旬の中央銀行による政策発表は、24日のハンガリー中銀が市場予想を0.25%下回る0.75%の利下げ(13.0%→12.25%)を発表する波乱のスタートとなった。今回の欧州中央銀行(ECB)理事会での市場予想は、下記の二点である。

・政策金利4.50%の据え置き
・PEPP再投資終了時期の前倒しの議論は早くて12月

ECBは前回9月の理事会にて、10会合連続の利上げ(4.5%)を行った。上げ幅は5月、6月、7月と同様の0.25ポイントで、4.5%という金利水準はユーロ誕生以降、過去最高である。ECBの声明では「現在の評価を踏まえて、主要政策金利はインフレ率の適時目標回帰に多大な寄与をするとみられる水準に到達し、十分長い期間維持されたと理事会は考える」とし、理事会後の記者会見で、ラガルドECB総裁は、「一部メンバーが金利据え置きを支持した」「欧州経済の低迷が今後数か月感続く可能性がある」と発言。「利上げサイクルの終了」と「ユーロ域内経済の成長見通しに対する懸念」が強く市場で意識されて、ユーロは売り優勢となった。

【何がサプライズになる?】

足元のECB関係者のコメントから推測すると、今時点の政策金利は適切な水準との見方が多く、今回は政策金利据え置きがコンセンサスである。そして、足元のユーロ圏の経済情勢として、エネルギー価格の動向を見極める必要があるのは周知の事実だ。つまり、10月上旬に勃発したイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突の影響をどのように織り込むのかは注目だ。中東情勢を起因とした原油価格上昇は、物価高を抑え込みたいECBとしては、新たな逆風である。今回は、欧州域内だけではなく国際的なバランス感覚も問われる重要な理事会となる。

なお、2024年12月に設定されている「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の再投資終了時期が前倒しとなるのでは?といった声は聞かれるが、イタリア国債利回りとドイツ国債利回りのスプレッドが2.0%ほど広がるなどイタリア財政への懸念から前倒しの議論は今理事会では見送られると考える。財政面が弱い南欧の国債利回り上昇を招く可能性があるから、前倒しの議論は時期尚早だろう。中東情勢というセンシティブな判断が求められるなか、今理事会で強い対応を取る必要は全くない。

そのため、今回はサプライズといえる項目はほとんど無いと考える。

【では、ユーロはどう動く?】

コンセンサス通りしか想定していないが、下記のイメージを持っている。

10月下旬、ユーロは160円手前まで買われる場面が見られたものの、なかなか大台到達は遠い。これは「欧州域内のスタグフレーション懸念」よりも、政府・日銀による為替介入を警戒しているのだろう。市場が想定している為替介入は、基本的にはドル売り・円買いのオペレーションだが、円が買われることから、結果的にユーロもドルにつられる可能性はある。こうした懸念が為替市場のトップピックとなっている以上、積極的には動きにくい。このような地合いのなか、今理事会はそもそもサプライズに乏しい見通しのため、ユーロは基本的に凪相場を想定する。

【最近のECB関係者の発言は?】

ここ2週間以内でECB関係者の発言を拾ってみた結果をまとめると下記の通りである。

・現在のECB政策金利は適切な水準である
・イスラエルとハマスの軍事衝突は気になる

ラガルドECB総裁 10月24日
「インフレとの闘いは良くやっている」とEU当局者に説明

ラガルドECB総裁 10月13日
「必要に応じて追加措置をとる用意がある」
「まだ政策発信の終わりを見ていない」
「インフレは2%に戻るだろう」

ナーゲル独連銀総裁 10月13日
「2024年末までにインフレ率が3%を若干上回る水準に低下することを望む」
「IMF・世界銀行会合では中東情勢が議論の中心になっている」
「ドイツのインフレはピークに達した」

ホルツマン・オーストリア連銀総裁 10月12日
「インフレ目標2%に戻すことは容易ではない」
「労働市場と気候変動は将来にわたるECBの要因に」

バスレ・スロベニア中銀総裁 10月12日
「我々の政策の主な課題は、財政政策を伴わないことだ」

ビルロワデガロー・フランス中銀総裁 10月12日
「現状の金利水準は適切」
「現時点では積極性よりも忍耐が重要だ」

ウンシュ・ベルギー中銀総裁 10月12日
「金融政策手段の指標については慎重にならざるをえない」
「インフレ率が想定通りであれば、これ以上の利上げは必要ない」
「原油価格はインフレ上振れリスクの一つ」

センテノ・ポルトガル中銀総裁 10月12日
「イスラエル紛争がデータに影響を与えるとはまだ考えていない」

ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁 10月12日
「イスラエルとパレスチナの情勢から、新たな不確実性が生じている今、PEPP終了を前倒しする価値は無い」

クノット・オランダ中銀総裁 10月11日
「企業の余剰収益で、賃上げを吸収する余地ある」
「引き締めの多くの効果は、まだ顕在化していない」

【2023年スケジュール】

※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)

9月21日(木)ー22日(金)・・・現状の金融緩和方針を維持したことで、市場はやや円安
10月30日(月)ー31日(火)・・・?
12月18日(月)ー19日(火)・・・?

米連邦公開市場委員会(FOMC)

9月19日(火)ー 20日(水)・・・利上げ見送り、ややタカ派な姿勢が確認できたことで、市場はドル買いで反応
10月31日(火)ー11月1日(水)・・・?
12月12日(火)ー 13日(水)・・・?

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)

9月14日(木)・・・0.25%引き上げで政策金利は4.5%、市場はユーロ売りで反応
10月26日(木)・・・現状維持?
12月14日(木)・・・?

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