トルコリラ円見通し　ドル高リラ安継続だが、ドル円の反騰による切り返しで7円に迫る(23/5/23)

〇トルコリラ円、5/22午前に5/19深夜安値6.94を割り込み、午後には一時的な下落6.87まで下げる
〇その後ドル円の反騰に合わせて6.99へ切り返し、5/23午前序盤も7円に迫る
〇対ドル、5/22は概ね19.93から19.79の取引レンジ、19.90台へ乗せ取引時間中の史上最安値更新
〇終値も19.83へと続落し、終値ベースの史上最安値更新
〇トルコ中央政府債務残は過去最大に、リラ安進行と貿易収支及び経常収支・財政収支の悪化が背景か
〇6.93以上での推移中は上昇余地ありとし、7.00超えからは7.03前後への上昇を想定する
〇6.93割れからは下げ再開と仮定して、6.90前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円の5月22日は概ね6.99円から6.87円の取引レンジ、23日早朝の終値は6.98円で先週末終値の6.89円からは0.09円の円安リラ高だった。
対ドルでのリラ安は継続しているものの、トルコリラ円は目先の騰落でドル円を追いかける展開を続けている。
ドル円は5月11日夜安値133.74円を起点として5月19日早朝高値138.74円までの連騰で5円の上昇幅となり5月2日及び3月8日高値を超えて年初来高値を更新し、19日深夜にはパウエル米ＦＲＢ議長の利上げ停止への含みを持たせる発言で137.42円へ反落したものの、22日の日中は137.50円割れを買われて確りし、22日夜は米ＦＲＢ高官による追加利上げ支持発言が相次いで米長期債利回りが連騰を継続したことで23日未明には138.68円へ切り返して19日深夜の下げ幅をほぼ解消し、23日午前序盤には137.79円を付けて19日未明高値をわずかに超えた。

トルコリラ円はドル円の上昇に合わせて5月11日夜安値6.83円から19日早朝に7円台に到達し、ドル円の反落とドル高リラ安の進行により19日深夜に6.94円へ下落した。22日午前には19日深夜安値を割り込み、22日午後には一時的な下落6.87円まで下げたもののドル円の反騰に合わせて6.99円へ切り返した。23日午前序盤も7円に迫っているもののまだ届かずにいる。
5月28日のトルコ大統領選挙決選投票でのエルドアン氏有利な情勢によりドル高リラ安が進行しているものの、ドル円の上昇がトルコリラ円への圧迫感を打ち消して上昇しているところだが、ドル買いリラ売りが加速してドル円の上昇が減速するようだとトルコリラ円も戻り一巡から失速しかねないところと注意したい。

【ドル高リラ安は歯止めかからず、1ドル＝20リラ台の安値提示も】

ドル/トルコリラの5月22日は概ね19.93リラから19.79リラの取引レンジ、23日早朝の終値は19.83リラで先週末終値の19.80リラからは0.03リラのドル高リラ安だった。
5月28日のトルコ大統領選決選投票が迫る中、エルドアン大統領優勢との報道からリラ安が勢い付いており、先週は前週比で0.04リラのドル高リラ安となり、取引時間中の史上最安値は5月16日の19.74リラ、17日の19.78リラ、18日の19.81リラ、19日の19.82リラへと更新が続き、週明けは19.90リラ台へ乗せて1ドル＝20リラに迫ってきた。終値ベースでは16日の19.72リラ、17日の19.74リラ、18日の19.78リラ、19日の19.80リラへ最安値を更新してきたが、22日も続落している。
5月23日午前は19.88リラから19.80リラのレンジで推移しつつ最安値更新を伺っている。
ベンダーによって提示レートに開きがあるが、5月22日の取引で20.01リラ、23日午前序盤に20.02リラの提示も見られており、既に実勢としては1ドル＝20リラ台へ最安値を更新している。

【トルコ中央政府債務残は過去最大に】

5月22日に発表された4月のトルコ中央政府債務残高は合計で4兆5881億1200万リラとなり、3月の4兆4888億8100万リラを超えて史上最大となった。国内債務は2兆2929億2700万リラ、対外債務は2兆2951億8500万リラでいずれも過去最大。
トルコはパンデミック後の復興でいったんは高成長を見せたものの昨年後半から大幅に減速しており、リラ安の進行と貿易収支及び経常収支の悪化、財政収支の悪化もあり対外対内債務が膨れ上がっている。
エルドアン政権はすでに20年を経過しているが、パンデミックとウクライナ戦争勃発による世界的なインフレ進行及び主要国の金融引き締めによる景気減速に加えて2月6日に発生したトルコ・シリア大地震の影響もあり、高インフレとリラ安と財政悪化の悪循環に陥っている。
4月14日に金融大手ＪＰモルガンが大統領選挙後のメインシナリオで1ドル＝24〜25リラへ下落して年末には26リラへ続落するとの見通しを示したが、その可能性も徐々に高まってきている印象だ。

60分足の一目均衡表では5月22日夜の反騰で遅行スパンが好転したが、先行スパンを上抜けずにいる。先行スパンを上抜くところからは上昇が勢い付くとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜けないうちは反落注意とし、遅行スパン悪化からは下落再開とみて安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月22日夜の上昇で60ポイントを超えた後も50ポイント台を維持しているのでまだ70ポイント台を目指す上昇余地ありとするが、50ポイント割れを弱気転換注意とし、45ポイント割れからは下落期入りとみて30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
（１）当初、6.93円を下値支持線、7.00円を上値抵抗線とする。
（２）6.93円以上での推移中は上昇余地ありとし、7.00円超えからは7.03円前後への上昇を想定する。7.03円以上は反落注意とするが、6.95円を上回っての推移なら24日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
（３）6.93円割れからは下げ再開と仮定して6.90円前後への下落を想定する。6.90円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、6.93円を割り込んでの推移なら24日も安値試しへ向かいやすいとみる。また下げ足が速まる場合は5月22日安値6.87円試しへ向かう可能性もあると注意する。

【当面の主な予定】

5月24日
　16:00　5月　製造業信頼感指数　（4月　108.0）
　16:00　5月　設備稼働率　（4月　75.4％）
5月25日
　20:00　トルコ中銀金融政策委員会　政策金利　（現行　8.5％）
　20:30　週次　外貨準備高　5/19時点　グロス　（5/12時点　608.2億ドル）
　20:30　週次　外貨準備高　5/19時点　ネット　（5/12時点　23.3億ドル）
5月26日
　17:00　4月　海外観光客数　前年比　（3月　12.32％）
5月28日　大統領選挙第二回投票



注：ポイント要約は編集部