ドル円見通し FRB高官のタカ派発言と米長期債利回りの連騰で年初来高値更新(23/5/23)

5月23日午前序盤には138.79円を付けて19日早朝高値を上抜き、年初来高値を更新している。

ドル円見通し FRB高官のタカ派発言と米長期債利回りの連騰で年初来高値更新(23/5/23)

FRB高官のタカ派発言と米長期債利回りの連騰で年初来高値更新

ドル円、5月23日午前序盤には138.79円を付けて19日早朝高値を上抜き、年初来高値を更新している。

〇ドル円、5/23午前序盤には138.79を付けて5/19早朝高値を上抜き、年初来高値を更新
〇米連邦債務問題、徐々に合意へ近づいていると受け止められリスク回避感は薄まっている印象
〇FRB高官らのタカ派発言相次ぎ、市場は追加利上げに慎重な姿勢よりタカ派発言への反応を優先
〇5/22の米長期債利回りは総じて上昇、米10年債利回りは7連騰
〇138円台を維持するうちは139円超えから139円台前半(139.10から139.40台)への上昇を想定
〇138円割れからは22日午前安値137.48試しとし、安値更新からは137円前後への下落を想定

【概況】

ドル円は5月19日早朝高値で138.74円を付けたところから連騰一服となり、19日深夜にはパウエル米FRB議長が利上げ停止の可能性に言及したことをきっかけとして137.42円まで反落したが、その後は新たな安値更新を回避して底堅さを見せ、22日夜はFRB高官によるタカ派姿勢が相次ぐ中で米長期債利回りが連騰を続けたため、23日未明には138.68円へ上昇して19日深夜への下落幅をほぼ解消した。
5月23日午前序盤には138.79円を付けて19日早朝高値を上抜き、年初来高値を更新している。米連邦債務上限の引き上げ問題については日本時間23日早朝からのバイデン大統領とマッカーシー下院議長(野党共和党)による会談は物別れに終わったものの、繰り返されてきた会談により徐々に合意へ近づいていると市場は受け止めており、ドル円に関してはこの問題に対するリスク回避感は薄まっている印象だ。

【FRB高官らのタカ派発言相次ぐ】

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は22日のメディアインタビューで6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での政策決定については「利上げ継続か見送りか紙一重」としたが、「6月に利上げを見送った場合でも利上げサイクルの終わりではない」とし、その場合でも7月のFOMCにおける利上げ再開の可能性を残すことが最も重要だ」と述べた。
セントルイス連銀のブラード総裁も22日に「米経済は予想よりも強くインフレの減速は緩やかにとどまっている」とし、「FRBは政策金利を今年あと2回引き上げる必要がある」と述べた。利上げ時期については「遅くよりも早く行う方を支持してきた」と述べた。 

一方、やや追加利上げに慎重な姿勢を示す者もあったが、為替市場は上記のタカ派発言への反応を優先した。
サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は22日に6月FOMCの利上げ云々については「経済指標次第」とし、「与信条件の厳格化が起き、銀行部門におけるストレスで加速している」との懸念を示し、「与信厳格化が0.25%利上げの1、2回分に相当する」との見方を示して利上げについてやや慎重姿勢を示した。また米アトランタ連銀のボスティック総裁は「追加利上げを決定する前に少し待つことに抵抗感はない」とした。
米FRBのパウエル議長は5月19日に、米銀破綻による金融機関の融資条件厳格化が成長や雇用を下押しする可能性を踏まえれば「政策金利をさほど引き上げる必要はないかもしれない」と述べて6月FOMCでは利上げ停止となる可能性を示唆しているが、5月4日未明のFOMC会見では「追加の金融引き締めが適切」との文言を削除したことについて「利上げ停止を決定したわけではない」と再利上げに含みを持たせている。

【米10年債利回りは7連騰】

5月22日の米長期債利回りは総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは先週末比0.04%上昇の3.72%となり、5月12日から7営業日連騰した。米債務上限問題への懸念や先週のパウエルFRB議長による利上げ停止の可能性を示唆する反応は鈍く、22日はFRB高官らのタカ派発言への反応を優先させた。
利上げに敏感な2年債利回りは先週末比0.06%上昇の4.33%となり、10年債と同じく5月12日から7連騰で一時は4.35%を付けて3月8日の5.08%から3月24日の3.56%まで大幅低下した後の高値を更新した。
NYダウは先週末比140.05ドル安と下落して19日の109.28ドル安からの続落となったが、ナスダック総合指数は62.88ポイント高で19日の30.94ポイント安からの反騰となり、昨年10月13日安値10088.83ポイント以降の高値を12756.23ポイントまで伸ばした。ダウは債務上限問題や信用不安への懸念が上値を重くしているものの、ナスダックは米長期債利回り上昇が圧迫しているものの先行きへの楽観を優先している印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月23日午前序盤に19日早朝高値を上抜いて年初来高値を更新した。5月4日未明のFOMCと10日夜の米CPI及び11日夜の米PPIを通過して当面のドル売り材料を消化し、その後はミシガン大5年先期待インフレ率の上昇、米小売売上高や鉱工業生産、新規失業保険申請件数の改善等を手掛かりに連騰に入り、5月11日夜安値から19日早朝高値まで5円の上昇となり、いったん仕切り直しの下落に入っていたが、23日午前序盤に19日早朝高値を超えたことで新たな上昇期に入った。
5月19日早朝高値を基準として次の高値形成期を26日未明にかけてと想定して高値追及が続きやすい局面と考えるが、ダブルトップ型に終わる可能性も警戒して138円割れを弱気転換注意とし、22日午前安値137.48円割れからは下落期入りとして29日午前にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月23日未明への上昇で遅行スパンが好転して先行スパンを上抜いた。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は26本基準線を下値支持線として高値試し優先とする。遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみるが、先行スパンからの転落を回避するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とし、先行スパン転落からは下げが厳しくなるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月22日午前の40ポイント割れから切り返しているので50ポイント以上での推移中は80ポイントを目指す上昇の可能性があるとみるが、50ポイント割れから続落する場合は下落期入りとみて40ポイント割れを試す流れと考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、138.00を下値支持線、139.00を上値抵抗線とする。
(2)138円台を維持するうちは139円超えから139円台前半(139.10円から139.40円台)への上昇を想定する。139.45円以上は反落警戒とするが、138円台を維持するか、直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは24日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)138円割れからは弱気転換注意として22日午前安値137.48円試しとし、安値更新からは137円前後への下落を想定する。

【当面の主な予定】

5/23(火)
16:30 (独) 5月 製造業PMI速報値 (4月 44.5、予想 45.0)
16:30 (独) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 56.0、予想 55.3)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI速報値 (4月 45.8、予想 46.0)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 56.2、予想 55.6)
17:00 (欧) 3月 経常収支・季調済 (2月 243億ユーロ)
17:30 (英) 5月 製造業PMI速報値 (4月 47.8、予想 48.0)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 55.9、予想 55.5)
22:00 (米) ローガン・ダラス連銀総裁、講演
22:45 (米) 5月 製造業PMI速報値 (4月 50.2、予想 50.0)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI速報値 (4月 53.6、予想 52.6)

23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数・年率換算 (3月 68.3万件、予想 66.5万件)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数 前月比 (3月 9.6%、予想 -2.6%)
23:00 (米) 5月 リッチモンド連銀製造業指数 (4月 -10、予想 -8)
23:45 (英) ハスケル英中銀委員、講演
26:00 (米) 財務省2年債入札
26:50 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演

5/24(水)
07:45 (NZ) 1-3月期 小売売上高 前期比 (10-12月 -0.6%)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 5.25%、予想 5.50%)

15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前月比 (3月 0.8%、予想 0.7%)
15:00 (英) 4月 CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (3月 10.1%、予想 8.2%)
15:00 (英) 4月 CPIコア指数 前年同月比 (3月 6.2%、予想 6.7%)
15:00 (英) 4月 RPI(小売物価指数) 前月比 (3月 0.7%、予想 1.2%)
15:00 (英) 4月 RPI(小売物価指数) 前年同月比 (3月 13.5%、予想 11.1%)
17:00 (独) 5月 IFO企業景況感指数 (4月 93.6、予想 93.0)
22:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:30 (米) 財務省2年変動利付債入札
26:00 (米) 財務省5年債
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

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