138円手前から反落するも137円台前半へ戻し上昇期待を維持
〇ドル円、本邦1月経常赤字過去最大が押上げ要因となり午後高値で137.91をつけ年初来高値更新
〇利益確定売りに押され8日深夜には136.46まで反落するも9日早朝には137.43まで1円近い反発
〇パウエル議長の下院証言「政策金利の到達点は従来の予想よりも高まる」と述べる
〇8日の米長期債利回りは総じて上昇、2年債利回りは前日比0.07%上昇の5.08%で続伸
〇NYダウは金融引き締めの長期化懸念により7日の前日比574.98ドル安から8日も58.06ドル安と続落
〇137.70超えからは3/8午後高値137.91試し、高値更新からは138円台前半への上昇を想定
〇136.90割れからは3/8深夜安値136.46試し、安値更新からは136円前後への下落を想定
【概況】
ドル円は3月7日深夜のパウエルFRB議長による半期に一度の上院議会証言が予想以上にタカ派姿勢となり利上げペース再拡大の可能性も示唆されたことによるドル全面高を背景に137円台を回復、8日朝の本邦1月経常赤字が季節調整前で2兆円に迫り単月で過去最大となった事も押し上げ要因となり、午後高値で137.91円を付けて年初来高値を更新した。
一段高が落ち着いたことで利益確定売りに押されて8日深夜には136.46円まで反落、この間の下げ幅は1.45円となったが、パウエルFRB議長の下院証言等を手掛かりに9日早朝には137.43円まで1円近い反発となり、深夜への下げ幅に対して凡そ3分の2を戻し、9日午前序盤も137円台を維持している。
【FRB議長の下院証言、大幅利上げの可能性を改めて示唆】
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は前日の上院銀行委員会に続いて下院金融サービス委員会で半期に一度の議会証言を行った。証言では3月21-22日の次回FOMC(連邦公開市場委員会)については「まだ何も決めておらず経済指標次第」とし、今後の重要指標の全体を踏まえて政策を決めるとしたが、「インフレは低下しているが非常に高い」「労働市場が極めてタイトなことがインフレを押し上げている」とし、これまでのインフレ指標を踏まえれば「政策金利の到達点は従来の予想よりも高まる」と述べた。また「物価安定を回復できなければコストは極めて高く付く」とし、就任以来繰り返してきた景気よりもインフレ抑制という姿勢を強調した。
前日の上院銀行委員会においては「最近発表された堅調な経済指標を受けて金利を従来の想定以上に引き上げる必要がある公算が大きく、今後入手される情報全体がインフレ抑制に向け一段の厳しい措置が必要であることを示唆すれば、より大幅な措置を講じる用意がある」と述べ、「大幅な措置=大幅利上げ」に言及したことが予想以上にタカ派としてサプライズ感をもたらし、為替市場はドル全面高となった。
【米雇用関連統計は強い】
3月8日夜に米民間雇用サービス会社ADPが発表した2月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比24万2000人増となり、1月の11万9000人増(当初の10万6000人増から上方修正)の倍以上の増加で市場予想の20万人増を上回った。
米労働省による1月雇用動態調査(JOLTS)における非農業部門求人数は前月比41万件減の1082万4000件となり、3か月振りに減少したが市場予想の1050万件を上回り、昨年12月分は速報の1101万2000件から1123万4000件へ上方修正された。
全米12地区連銀景況報告(ベージュブック)では国内の経済活動が今年初めに「若干拡大した」とされて1月の「ほぼ横ばい」から景況判断が引き上げられた。また「インフレ圧力はなおも拡大したものの多くの地区で価格上昇ペースは鈍化した」とされた。
ADPとJOLTS、ベージュブックのいずれも米FRBによる大幅利上げ再開判断に寄与するものと受け止められ、今週末の米2月雇用統計も良好な数字となる可能性を高めたと思われる。
【米2年債利回り5%超、2007年7月以来の高水準に】
3月8日の米長期債利回りは総じて上昇した。利上げに敏感な2年債利回りはパウエルFRB議長の上院証言をきっかけに7日は前日比0.12%上昇で5.01%を付けて2007年7月以来15年8か月振り高水準に達したが、8日も前日比0.07%上昇の5.08%と続伸した。長期金利指標の10年債利回りは2年債売り・10年債買いの裁定が働いたことで3月7日は0.01%上昇の3.97%にとどまったが、8日はこの日実施された320億ドルの10年債入札が低調だったことで前日比0.03%上昇の4.00%となった。
30年債利回りは3月7日に前日比0.03%低下したが、8日は前日比0.03%上昇の3.90%となった。
2年債利回りと10年債利回りの逆イールドが過去最大規模となる中、10年債と30年債には利回り低下圧力がかかっているもののいずれも高止まりの様相となっている。
一方、NYダウは金融引き締めの長期化懸念により3月7日の前日比574.98ドル安から8日も58.06ドル安と続落した。ナスダック総合指数は7日の145.41ポイント安に対して8日は45.67ポイント高と戻した。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は3月8日午後高値137.91円から8日深夜安値136.46円まで反落してから戻しているが、FRB議長議会証言をきっかけとした急伸が一服している印象だ。3月10日の米雇用統計も控えているため年初来高値を更新した後の調整も入りやすく、3月8日午後高値を超えないうちは13日午後にかけての下落余地ありとし、8日深夜安値割れから136円前後を試す下落を想定するが、137円台を維持するうちはすでに上昇再開に入っている可能性を優先して8日午後高値試しとし、高値更新からは新たな上昇期入りとみて来週前半への上昇継続を想定する。
60分足の一目均衡表では3月8日深夜への反落で遅行スパンは悪化しやすい位置に来ているが、先行スパンを上回る状況は維持されている。先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところから上昇再開とするが、先行スパンへ潜り込む場合は下落再開注意として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は3月8日深夜への下落時に40ポイント台へ低下した後は50ポイント台を回復しているため、60ポイント超えからは上昇再開の可能性を優先して70ポイント台への上昇を想定するが、40ポイント割れからは調整安の継続とみて30ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、136.90円を下値支持線、137.70円を上値抵抗線とする。
(2)137円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇継続とし、137.70円超えからは3月8日午後高値137.91円試しとし、高値更新からは138円台前半への上昇を想定する。138.30円以上は反落注意とするが、137.50円以上を維持しての推移なら10日午前も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)136.90円割れからは3月8日深夜安値136.46円試しとし、安値更新からは136円前後への下落を想定する。136円以下は反騰警戒とするが、136.90円以下での推移か直前安値から0.75円を超える反騰が見られないうちは10日午前も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
3/9(木)
日銀・金融政策決定会合初日
バイデン米大統領、予算教書
10:30 (中) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 2.1%、予想 1.9%)
10:30 (中) 2月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (1月 -0.8%、予想 -1.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.0万件、予想 19.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.5万人、予想 165.9万人)
24:00 (米) バーFRB副議長、暗号通貨関連の講演
27:00 (米) 財務省30年債入札
3/1(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
06:45 (NZ) 10-12月期 製造業売上高 前期比 (7-9月 5.1%)
08:30 (日) 1月 全世帯消費支出 前年同月比 (12月 -1.3%、予想 -0.1%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 0.0%、予想 -0.3%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 9.5%、予想 8.5%)
15:30 (日) 黒田日銀総裁、定例記者会見
16:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 前月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)改定値 前年同月比 (速報 8.7%、予想 8.7%)
16:00 (英) 1月 月次GDP 前月比 (12月 -0.5%、予想 0.1%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.3%、予想 0.0%)
16:00 (英) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.0%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 1月 貿易収支・物品 (12月 -192.71億ポンド、予想 -175.00億ポンド)
16:00 (英) 1月 貿易収支・全体 (12月 -71.50億ポンド、予想 -62.00億ポンド)
22:30 (米) 2月 非農業部門就業者数 前月比 (1月 51.7万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 3.4%、予想 3.4%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.3%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 4.4%、予想 4.7%)
28:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 -388億ドル、予想 -2410億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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