日銀の政策修正続くとの報道で12日朝に下落
〇ドル円、12日朝の読売新聞報道きっかけに132円を割り込み131.50台へ下落
〇来週開催される日銀金融政策決定会合でこれまでの異次元金融緩和政策に伴う副作用を点検すると報じる
〇ボストン連銀のコリンズ総裁「次回のFOMCで利上げ幅を0.25%へ縮小の可能性」と発言
〇11日の米長期債利回りは総じて低下、10年債利回りは前日比0.08%低下の3.54%に
〇NYダウは前日比268.91ドル高と続伸、ナスダック総合指数は189.04ポイント高で4連騰
〇1/9昼安値131.29を割り込む場合は130円台後半への下落を想定
〇米CPI発表から下げ足が速まる場合は130円割れを試す可能性も
〇132から132.30にかけての水準は戻り売り有利、132.30超えからは1/11夜高値132.87試し
【概況】
ドル円は先週末の米雇用統計での平均時給伸び率鈍化及びISM非製造業景況指数の悪化によるドル全面安で直前高値134.77円から1月9日昼安値131.29円まで下落したが、9日夜に132.65円まで戻してからの反落で10日午前に131.37円まで下げたものの安値更新を回避したことで買い戻し優勢となり、11日夜には132.87円を付けて9日夜高値を超えた。1月12日午前序盤は133円には届かずに失速気味で推移していたところ、読売新聞朝刊で日銀が来週の金融政策決定会合で金融緩和の副作用を点検すると報じたことをきっかけに132円を割り込み131.50円台へ下落している。
1月11日夜はユーロドルが7か月振り高値を更新する一方で、ポンドドルが下落、豪ドル米ドルが横ばい推移などドルの強弱感はまちまちとなったが、米長期債利回りは前日の反発を解消する低下となり、12日夜の米CPI発表を控えてFRBによる利上げペースダウンと利上げ期間長期化に対する過度の懸念が後退してドル安へと進みやすい環境にある。
【日銀の政策修正続くとの読売報道】
読売新聞は1月12日の朝刊で、1月17-18日に開催される日銀金融政策決定会合においてこれまでの異次元金融緩和政策に伴う副作用を点検すると報じた。昨年12月会合では長期金利のゼロ%誘導のための許容変動上限を従来の0.25%から0.50%へと引き上げたことで市場は事実上の利上げとし、アベノミクスと呼応した日銀の異次元金融緩和政策が出口へ向かい始めたと受け止めた。新発10年債利回りはそれまでの0.25%近辺から0.50%の許容上限に張り付くところまで上昇しており、大手銀行による住宅ローン固定金利引き上げ等も発生している。
黒田総裁は前回会合での政策修正については金融緩和政策の範囲で利上げではないとしたが、東京区部12月の消費者物価上昇率は生鮮食品を除くコア指数の前年比が4.0%となり、11月の3.6%及び市場予想の3.8%を上回り1982年4月以来で最大の伸び率となっており、日銀の物価見通しも修正を余儀なくされるのではないかと思われる。
また政府のアベノミクスからの脱却姿勢も見られ始めており、1月11日早朝には財務省の斎藤理財局長がテレビ番組で「海外の状況を見ても分かるように今の(低金利)状況がいつまでも続くわけではない」と述べており、政府・日銀が一体となって進めてきた異次元金融緩和政策が出口へ向かい始めていることの地ならしが始まっていると市場は受け止めている。
【米FRBの次回利上げは0.25%にとどまる見通し】
ボストン連銀のコリンズ総裁は1月11日のNYタイムズ紙インタビューで「次回のFOMCでは利上げ幅を0.25%へ縮小する可能性がある」とした。同総裁は「FRBは急激な金融引き締めの影響を見極めている」とし、次回会合での利上げ幅については「0.25%か0.50%が妥当だが現時点では0.25%へ傾いている」と述べた。さらに「利上げをとどめる所に近づいている」「より小幅な(政策金利の)変更とすることでより柔軟になれる」とし、「政策金利のピークは5%を上回るが、次回からの3会合で合計0.75%の利上げを行いその後は2023年末まで据え置くことが望ましい」と述べた。
12月のFOMCでは4会合連続の0.75%利上げから0.50%利上げへペースダウンしたが、今後は0.25%利上げを数回行って利上げサイクルもピークを迎えるとの見方が濃厚となってきており、12日夜の米CPI上昇率が市場予想通りに鈍化すれば利上げ期間が短縮されてピーク水準も5%を切る可能性も出てくるのではないかと市場は見ている。
【米長期債利回りは再び低下】
1月11日の米長期債利回りは総じて低下、指標の10年債利回りは前日比0.08%低下の3.54%、30年債利回りは0.09%低下の3.67%、2年債利回りは0.03%低下の4.22%となった。
10年債利回りは12月7日の3.40%から12月30日の3.91%まで上昇したところで戻り一巡となり1月6日の米雇用統計等をきっかけとして大幅低下に入り1月9日には3.51%まで下げた。1月10日は大幅低下一服で0.08%上昇していたが11日は戻りを解消する反落となっている。12日夜の米CPI内容次第では一段の低下が見込まれる。
30年債利回りは1月3日から9日まで5営業日連続低下の後を下げ渋って1月10日は0.10%上昇したが11日は戻り幅の大半を解消している。2年債利回りも前日に0.04%上昇したものの失速しており12月13日に付けた11月4日高値4.88%以降の最安値4.14%に対する余裕が乏しくなっている。
一方でNYダウは前日比268.91ドル高と続伸、ナスダック総合指数は189.04ポイント高で4連騰となった。インフレが低下する中でも景気減速が深刻化せずにソフトランディング可能との見方が株式市場を楽観的な買い優勢の展開へ向かわせている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は1月6日夜高値からの急落が1月9日昼安値で一服して持ち直してきたが、11日夜高値でピークを付けて下落再開に入っている印象だ。1月9日昼安値を基準として目先の安値形成期を16日昼にかけてと想定し、12日夜の米CPI発表をきっかけに反騰入りする可能性があるもののCPI発表から続落の場合は13日、16日へとさらに安値試しを続けやすくなると思われる。強気転換には11日夜高値132.87円を超えるか直前安値から1.50円を超える規模の反騰が欲しいところだ。
60分足の一目均衡表では1月12日午前序盤の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパンが揃って好転するところからとする。
60分足の相対力指数は50ポイント台を中心とした揉み合いで推移していたが、1月12日午前序盤の急落で30ポイント台へ急低下している。50ポイント台を回復できないうちは一段安注意とするが、相場が一時的な反発を見せた後に一段安する過程で指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られる場合は反騰入りを警戒する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)1月9日昼安値131.29円を下値支持線、132.30円を上値抵抗線とする。
(2)132.30円以下での推移中は一段安警戒とし、1月9日安値を割り込む場合は130円台後半への下落を想定する。米CPI発表から下げ足が速まる場合は130円割れを試す可能性もあると注意する。
(3)132円から132.30円にかけての水準は戻り売り有利とみる。132.30円超えからは1月11日夜高値132.87円試しとする。
【当面の主な予定】
1/12(木)
日銀支店長会議
10:30 (中) 12月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (11月 1.6%、予想 1.8%)
10:30 (中) 12月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (11月 -1.3%、予想 -0.1%)
14:00 (日) 日銀地域経済報告(さくらリポート)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー現状判断DI (11月 48.1、予想 47.7)
14:00 (日) 12月 景気ウオッチャー先行判断DI (11月 45.1、予想 45.0)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (11月 0.1%、予想 0.0%)
22:30 (米) 12月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (11月 7.1%、予想 6.5%)
22:30 (米) 12月 CPIコア指数 前月比 (11月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 12月 CPIコア指数 前年同月比 (11月 6.0%、予想 5.7%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 20.4万件、予想 21.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.4万人、予想 170.5万人)
25:30 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、イベント参加
26:40 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省30年債入札
28:00 (米) 12月 財政収支 (11月 -2485億ドル、予想 -700億ドル)
1/13(金)
日米首脳会談
未 定 (中) 12月 貿易収支・米ドル建て (11月 698.4億ドル、予想 779.7億ドル)
未 定 (中) 12月 貿易収支・人民元建て (11月 4943.3億元)
08:50 (日) 12月 マネーストックM2 前年同月比 (11月 3.1%)
16:00 (英) 11月 月次GDP 前月比 (10月 0.5%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 0.0%、予想 -0.3%)
16:00 (英) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 -2.4%、予想 -3.0%)
16:00 (英) 11月 貿易収支・物品 (10月 -144.76億ポンド、予想 -149.00億ポンド)
16:00 (英) 11月 貿易収支・全体 (10月 -17.85億ポンド、予想 -23.00億ポンド)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前月比 (10月 -2.0%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 11月 鉱工業生産 前年同月比 (10月 3.4%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調済 (10月 -283億ユーロ、予想 -200億ユーロ)
19:00 (欧) 11月 貿易収支・季調前 (10月 -265億ユーロ)
22:30 (米) 12月 輸入物価指数 前月比 (11月 -0.6%、予想 -0.8%)
22:30 (米) 12月 輸出物価指数 前月比 (11月 -0.3%、予想 -0.8%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (12月 59.7、予想 60.5)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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